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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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ボランティア

正式に入隊となり、初めての出勤日になったが、仕事がないということで、調査に向かうことになった神癒奈、その調査の内容だが…。


「あの……」

「なんだ……?」

「これの……どこが調査なんでしょうか?」


調査という名目でやってきたのは荒れ果てたスラム街、しかも、やっている事は難民たちへの炊き出し、要はよくあるボランティアである。危険な任務だと覚悟を決めていた神癒奈にとって、拍子抜けな内容だった。


「何言ってんだ、これも調査の一環だ」

「調査って、もっとこう、街の住民に聞いて回ったりとかする物じゃないんですか? なんというか、"死神部隊"と呼ばれる割には、らしくないなって」

「そうだな、らしくない、だがこれも仕事なんだ」

「どういうことなんです?」


訳がわからなそうにしている神癒奈に、永戸が説明する。


「まず、四課は公には他の課のサポートと、こういった異世界の住民たちとの交流が目的と言われている」

「なぜ?」

「四課の仕事は公には出せないんだよ、だってそうだろう? 危険物の処理が基本なこの仕事を公にしたら、異世界という夢のような場所へよからぬ偏見が生まれる。それを防ぐ為にわざわざ情報統制や記憶処理とか行ってるってわけ」

「で、ここ特査四課は表向きには異世界の方々とのフレンドリーな交流を目的としてる、イストリアとは平和な組織ですとアピールをする課となっている、そういうわけです。後はまぁ、情報収集の手段としての交流というわけですよ」


炊き出しのスープに入れるじゃがいもを切り終えたフィアネリスが、笑顔を振り撒きながらやってくる。神癒奈はそういうことかと納得をすると、炊き出しをもらいにきた者たちに水を配り始めた。


「納得するのが早いな」

「それはそうですよ、だってこの仕事は、誰も傷付かず、誰かのためにできる仕事ですから」

「あまちゃんめ」

「ほっといてくださいよ、これも英雄への一歩です」


意外とポジティブだなと永戸は笑う。もっと唖然として反抗的な態度をとるかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

そんな時だった。


「イストリアの方…どうかお助けください…」

「どうしたんですか?」


水を配り終えた神癒奈に、年めいた老婆が助けを求めてくる。


「実は…私の住んでいる街で数日前、子供達がみんな行方不明になったんです……街の皆と探しても見つからなくて…他の住民も、子供がいなくなったと似たような話をして…どうか、子供達を、探してください…!」

「っ…」


老婆の話を聞いて、神癒奈は息を呑んだ。その話は、今朝ダイナーの新聞で見聞きした話だった。


「永戸さん、こちらの方が…」

「あぁ、仕事だな、了解だ、住民から情報を集めるぞ、神癒奈、スープを配ってる間、街の人に聞き込みをしてきてくれないか?」

「分かりました!」


スープを作った永戸が一人ずつに食事を配り始める。それらしい仕事をもらったと、神癒奈は街の一人ひとりに、子供の行方不明の話を聞き始めた。


ーーー


炊き出しが終わった後、永戸達も食事を取ろうと、余ったスープをすすっていた時だった、神癒奈の聞き込みが終わった。


「お疲れ様、で、成果は出たか?」

「はい、どうやら子供は、白昼堂々と白衣を着た人たちに攫われてるようで、そのままトラックに乗せられて、誘拐されてるらしいんです」

「ふむ…ややぼんやりとした情報ですね、それだけ、相手が徹底して情報を得られないようにしているのか…トラックや白衣の人間に関する情報などはございますか?」

「トラックは軍用ではなく民間用のらしくて、白衣の人たちは数人で子供達を一人ずつ攫ってるらしいんです」


つまるところ…犯行は単独ではなく、複数人による犯行で、子供を攫ってはトラックに乗せてどこかに運ばれているらしい。民間のトラックとなると、犯人はそこまで武装しているようには思えないが、だが、それ以上の情報は得られなかった。


「結局、子供をさらって何がしたいんだ? それもこんなに集めて」

「…ろくなことではなさそうですよね」


神癒奈も余ったスープを飲みながら考えるが、子供を攫っていったい何をしてるのだろうと思った。


「少年兵…にしては年齢が低すぎる気がする…フィーネ、何か検討が付くとしたら?」

「相手方の服装から着目しましょう、相手は白衣、とすると…」

「臓器売買か?」

「えっ…」


臓器売買という単語を聞いて神癒奈は顔を真っ青にする。こんな子供達を連れ去って、犠牲にして、臓器売買をしてるとなると、人の心がないんじゃないかと。


「まぁいずれにせよ、トラックで白衣の男たちが子供を連れ去ってることは分かった、あとはまぁ、ライの調査結果と照らし合わせるしかなさそうだな」

「そうですね、後はなるようになるしかなさそうです」


その後、永戸と神癒奈達は、食事を終えた後、更に情報を集めるべく、ボランティアをしながら住民から聞き込みを続けた。


ーーー


イストリアの四課の部屋に戻る頃には、夕方になっていた。ユリウス課長も疲れた様子で紅茶を飲み、先に帰ってきていたライも書類をまとめていた。


「お疲れ様です、皆さん」


コリーが全員分のお茶を用意してくれる中、永戸達は報告に入る。


「ふむ、白衣を着た者がトラックで…割とアナログであからさまな犯行をするのだね」

「はい、俺もそう思います。それだけ相手は警戒心がないのか」

「或いは、それだけ脅威となるものを持っているかだね」


書類仕事を終えたライがユリウスに紙を渡しながら話に入る。


「こっちの調査でもその白衣の男達は発見できたよ」

「そうかそうか、それで、相手はどこに子供達を連れ去ったのかね?」

「魔力の痕跡を辿って追いかけたけれど、たどり着いた先にあったのは孤児院でした」

「孤児院?」


孤児院と聞くと、その場のライ以外の全員が疑問に思った。


「あの、それって良いこと…だとは思いたいですけど」

「確かに、身寄りのない子供を連れ去って孤児院の子にするならまだ発想としてはマシだね、最も、誘拐をしてる事実は変わらないが、だがその孤児院、少し妙なところがあったんだ」

「妙?」

「常に全ての窓とカーテンが閉まってたんだ。それに、探知を行った結果、孤児院の中の構造は、地下にまで広がっていることがわかった」

「と…言うと?」


神癒奈が疑問に疑問を重ねる。察しが悪いお嬢さんだとライは苦笑いしながら机の紙を持つと、神癒奈に渡した。


「つまりは、孤児院なんてのは仮の姿、実際は地下で何かしらが行われているってことだ」


紙に記されていたのは、孤児院の内部構造の全体像だった。探知機で割り出したぼんやりとしたデータだが、孤児院の地下には広大な施設があることが書き記されていた。


「これ…ってことは」

「あぁ、これだけ広大な施設だ、一度調査に入る必要がある、誘拐の罪状を叩きつけると一緒にね」


ライはそう言うと、ユリウスの方に振り向いた。


「課長、調査の方はいつにしましょう」

「そうだね…やるとしたら、今日はもう遅い、やるとしたら明日、君たち全員でやってもらおう」

「今のメンバー全員でですか? 少し過剰では?」

「念の為…だ、まだ入ったばかりの神癒奈君もいることだしね」


ユリウスは全員の顔を眺めると、ライから受け取った書類を見て、指令を出した。


「では改めて、明日、君たち全員でこの孤児院の調査を頼むとしよう」

「「「了解!」」」


ユリウスの指令を受けて、各々は仕事を終えて帰宅の準備をする。すると、ユリウスは、永戸と神癒奈に声をかけた。


「そうそう、永戸君、神癒奈君、君達に一つ伝えたいことがあったのだがね」

「俺にですか?」

「どうかしましたか?」

「うむ、君達が先日戦った、元勇者、カインの状態についてだったんだが、重要なことがわかった。ざっくりといえば、彼のあの状態は人間としてとてもかけ離れた姿と力を持っていた。まるで、ヒトとしてあるべき姿に"なり損なった"かのように」

「なり損なった…」


永戸は振り返り、ユリウスの話を聞く。カインといえば、永戸と神癒奈が初めて出会った時に戦った、あの勇者だった。神癒奈も、帰りの準備をしながらユリウスの話を聞いた。


「あのような姿になったのは、"大戦"以降、異例の事態だ。大戦時にもあのような敵はいたが、大戦だから仕方ないと我々は見ていた、だが、このような形であんな敵が出た以上、今後、何かしらの形でまた遭遇するかもしれない。我々は、あれの事を今後"なり損ない"と呼ぶ事に決定した」

「なり損ない…ですか」

「戦う際は気をつけたまえ、以後、あらゆる戦いにおいて、ああいった個体が発生する危険性がある。充分な注意と、覚悟をするように」

「分かりました」


なり損ないと聞いて、永戸は頷くが、神癒奈にはあの敵が一体どんな存在なのかさっぱりわからなかった。だが、今それを考えても仕方なく、神癒奈は、部屋を出ていく永戸に着いて行くしかなかった。

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