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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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他愛もない日

翌日、四課に正式に入隊となった神癒奈は、昨日貰った制服を着てみた。


「これは……! 凄い、馴染みます!」


制服を着ては姿見で格好を確認する。

神癒奈に与えられた制服は、東洋の文化にある巫女服をベースにしたコートだった。肩や太もも辺りははだけてるが振袖やコートの部分で腕や足を覆っていて、それでいて体を動かしやすくなっている。サイズもぴったりだ。

久々の和服で尚且つこれが仕事着になるのかと思うと、神癒奈はワクワクした。


「似合ってますよ、神癒奈さん」


神癒奈が仕事着の感触を確かめてる様を、フィアネリスは紅茶を飲みながら笑顔で見守る。神癒奈も相当嬉しいのか、色々ポーズを取ってははしゃいでいた。


「着替え終わったか?」


部屋の外から永戸の声が聞こえる。


「はい! バッチリです!」


神癒奈は扉を開けて永戸に制服を見せる。すると彼は目を丸くして、全身をまじまじと見た。


「似合ってるじゃないか、前着ていたボロの服装よりは全然いい」

「えへへ〜、はいっ!」


褒められて神癒奈は照れる。だがそうこうしているうちに時間が来た。永戸とフィアネリスは靴を、神癒奈は下駄を履いて外に出る。

仕事までまだ時間はあるが、何処へ行くのだろうと神癒奈は暫くは見慣れた街並みを歩いていくが、その後、ついたのは、ちょっとしたダイナーだった。


「よう、永戸、今日も仕事か?」

「ああ、おっさんも相変わらずだな」

「ははは、変わらない日々が一番さ、けどどうやら今日は珍しそうな連れがいるじゃないか、彼女かい?」


ダイナーの店主から彼女かと言われ、神癒奈は顔を赤くする。だが直後、永戸が訂正に入った。


「いや違うよ、こいつはウチで新しく働く新人、よろしくしてやってくれ」

「へぇ、嬢ちゃん名前は?」

「焔月 神癒奈と申します! よろしくお願いします!」


改まってぺこりとお辞儀をする神癒奈、その姿を見て、ずいぶん可愛らしい子じゃないかと店主は笑う。


「新しい子の就職祝いだ、特別に1割引きでメニューを提供してやろう」

「2割にまけてくれ」

「冗談はよせ、そこまで割引したら商売にならん、ほらさっさと決めな」


そうして3人はメニューを決め、店の外のテーブル席に座る。フィアネリスは店に置かれた新聞を取ってくると、開いて読み始めた。


「最近子供が行方不明になってるらしいですね」

「子供が? どこの異世界だよ」

「どこでも、10歳から4歳ほどの子供が突如として消えているそうです。対象は貧民街やスラムなどにいる親のいない孤児ですね」

「そういえばライが行った別件の調査ってそれじゃなかったか? けど犯人も見つからないし、孤児そのものの数が多い以上、探しても探しようがねぇよ」


永戸とフィーネがそう話す中、神癒奈は外の街並みを見て時間を潰していく。


「お待ちどう、チキンバーガーとBLTサンドとハンバーガー、ポテトとジュースだ、よく味わって食えよ」

「あぁ、ありがとう」


頼んだ品が運ばれ、永戸にはチキンバーガーを、フィアネリスにはBLTサンドを、神癒奈にはハンバーガーが渡される。すると店主は新聞を覗いて来た。


「あぁこの事件か…最近この辺りも物騒でな、裏路地の方でも行方不明の子供が出てるらしい、殺されるとかされてなければいいが…」

「割と近いところで事件は起きてるんだな」


長話しているのもなんだしと、3人はそれぞれのサンドに齧り付いた。その時、神癒奈はハンバーガーの味の良さに震えた。


「っ! これ…美味しいです……!」

「だろう! 俺の店のハンバーガーは他所に負けねぇからな!」


神癒奈にとってハンバーガーは初めてで、その美味しさに惹かれ、もぐもぐと一気に食べていく。その姿を見た店主はがははとした笑顔を彼女に向けた。


「永戸とフィーネはウチの常連でな、時々来ては困ったこととかを解決してくれるんだ」

「俺たちも仕事だからな、ここはイストリアの情報源の一つになってるし、無くなったら困るし、何よりハンバーガーが美味いから」

「あぁ、いつも助かってるよ、じゃ、ごゆっくり」


そう言っては店主は去っていくが、神癒奈は気になったことがあったので永戸に聞いた。


「ここの店が情報源?」

「あぁ、ここは客や店主を通じていろんな情報が回ってくるんだ。見た目は普通のダイナーだけど、時々、ここを頼りにするって訳」


あぁ、だからさっきのような孤児の話も店主さんは知っていたのかと神癒奈は思う。


「にしても、今日の朝は余裕がありますね? イストリアにはいかないんですか?」

「行くには行くけど、多分今日は暇になる。今朝起きた時からEフォンの四課の情報欄にこれといった任務が入ってなかったし、少し遅めに出勤しても問題はない」

「そんなのんびりで大丈夫なんでしょうか…」


いいような悪いようなと神癒奈はそう考えながらハンバーガーを食べ終える。次にポテトに手を伸ばしてもぐもぐと食べ始めた。


「そういうもんさ、まぁ食べるのはゆっくりでもいいが、最低限遅刻しない程度にはさっさと行くぞ」

「分かりました!」


永戸の適当な話を聞いて、神癒奈も神癒奈で適当にポテトとジュースを交互に飲食しながら、頷いた。


ーーー


食事を終えて、イストリアのオフィスに着くと、そこには、コリーとユリウスがいた。


「おはようございます、課長」

「うむ、おはよう永戸君、今日は遅めの出勤だね」

「どうせ今日は任務がないんでしょう? 連絡をみましたよ」

「うむうむ、幸い今日は今のところ事件は起きていない、我々が動くことがない至って平和な日だ」


はははとユリウスは笑いながらケーキと紅茶を味わう。ここの課長が優雅にティータイムをして笑ってるあたり、どうやら今日は本当に仕事がないようだ。


「あ、神癒奈君、改めて入隊おめでとう。これは私からの…というより、組織よりのプレゼントだ」


ユリウスから神癒奈にプレゼントが贈られるが、渡されたのは、イストリアの隊員証とそのケース、荷物を入れるロッカーの鍵と、それと神癒奈用のEフォンが送られた。


「それが君用の支給品だ。Eフォンの方は君は携帯電話を触るのが初めてだろうし、初心者でも扱いやすいモデルにしておいたからね、これからはこれらと君の力が仕事の道具になる」

「分かりました!」


神癒奈は支給品を受け取ると、それらをポーチ等に入れていく。そして、Eフォンを手に取ると起動を始めた。


「ええと、取り敢えず電源を入れればいいんでしたっけ」

「そっ、そこのボタンを押し続ければいい」


永戸に言われるがまま電源ボタンを押し続けると、Eフォンが起動した。開発者のロゴが出て、しばらくすると、ホーム画面へと移る。ホームには電話やメール、簡素なアプリケーションがいくつかと、四課の任務が表示されるタスク表があった。


「使い方はわからなくなったら聞けばいい、アプリも自由に入れていいが変なサイトとか開いてウィルスやハッキングなんかは絶対に受けるなよ、四課の情報は機密事項だからな」

「は、はい」


仕事用の電話なのに自由に使ってもいいんだろうかと神癒奈は思うが、自分のものだからいいかと思い、これもポーチにしまった。


「それで、今日は本当に出動するような任務はないんですか?」


どこかかったるそうな雰囲気で永戸が聞く。


「あぁ、ないね、強いていうなら調査だけだ」

「だったら、その調査に向かいましょう!」


調査と聞いて神癒奈はやる気満々で頷く、だがどういうことだろうか、他のメンバーはどこ吹く風な雰囲気をしていた。


「了解しました。じゃあ、調査の方、行く準備をしますね」

「うむ、頑張りたまえ」

「っ?」


ユリウスがにっこり頷き、永戸達はふぅっとため息をつきながら荷物を用意し始める。だが、持っているのは武器ではなくテントなどの機材だった。それに疑問を覚えた神癒奈はユリウスに問いかける。


「あの、調査って、具体的に何をするんでしょうか」

「ん? あぁ、調査ですることはな、"ボランティア"だよ」


ボランティアと聞いて、神癒奈はますますよく分からなくなった。

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