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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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本入隊試験

数日後、本入隊試験の日が来た。

行き来にも慣れたのか、制服を着た神癒奈は、イストリアのビルの中へ一人で入る。

永戸達は先に来ていたらしく、どうやら試験を見物するらしい。


「おはようございます、焔月 神癒奈さん、本日は貴方の本入隊試験と、適性検査の日になっています」

「はい、どこに向かえばよろしいでしょうか?」

「筆記と実技に分かれてますが、まずは筆記ですね、こちらの部屋まで向かってください」


受付の人の指示に従い、神癒奈は試験会場となる部屋へ向かう。部屋に到着すると、数人ほどの人が集まっていた。


「…何だか物々しい雰囲気ですね」


部屋の中は重い空気で満たされていて、一緒に試験を受ける者は、どれも緊張した様子でいた。

そんな中、神癒奈はその空気に負けないよう、落ち着いた足取りで席に座り、試験が始まるのを待つ。

暫くすると、試験官の人がやってきた。


「諸君、イストリアへようこそ。これより君達がイストリアにふさわしい人材かどうか、試験をさせていただく。それでは、筆記試験、はじめ」


そう言うと、他の人達が、試験の用紙を手に取り、テストを始めた。神癒奈も同じように試験の用紙を取って中身を見る。


(これくらいなら、私でも解けますね)


神癒奈はペンを手に取り、カリカリと書き始める。問題は常識的な問題ばかりで、それが終わったとしても今度は心理テストとなる問題で、気が楽だった。他の人もどこかほっとしてるのか、テストを書き進める。

そうして時間が経ち…。


「時間だ、解答用紙を回収する」


テストの解答用紙が全員回収される。書き損じた所はなく、神癒奈は多分大丈夫だろうと思うと、次の試験の場所へと向かった。

次についたのはグラウンドだった。だだっ広いグラウンドにポツンと神癒奈達が立つ。だが、グラウンドの脇の方では、暇を持て余した職員達が、神癒奈達の試験を眺めていた。その中には永戸達もいて、神癒奈は見られてる中戦うのかと少し恥ずかしく感じる。


「次は実技試験だ、筆記は簡単な問題ばかりだったが、この実技試験において、君達の実力を計らせてもらう」


試験官がそう言うと、グラウンドに、一人の男が入ってきた。その男が神癒奈達の前に立つと、彼女達をじっと見つめる。


「私は異世界特別調査隊三課のエージェント、レイモンド・アールマンだ、今回、お前達の相手となる、よろしく頼むぞ」


そう言うと、レイモンドは所定の位置に立ち、試験の準備をする。


「実技試験では各々、手持ちの武器や能力の使用を許可する。どんな手段を用いてもいい、相手となるレイモンドを無力化するんだ」


説明を終えると、試験官は試験を行う人の名前を呼んで、レイモンドと対面になる位置に立たせた。


「よ、よろしくお願いします!」

「ああ、存分にかかってくるといい」


持ち前の武器か、トンファーを取り出したレイモンドに対して、最初にテストを受ける男は、その気に押されながらも剣を構える。


「では、実技試験、はじめ!」


まずは先手は試験を受ける男が取った。剣を構えながら走り、綺麗な太刀筋で剣を振るう。

だが、その一撃を、レイモンドは受け止めた。


「ふむ、初手に攻めた度胸は認める、だが私を切り崩すには、少し気合いが足りないようだ」


レイモンドは剣を両手のトンファーで払うと、接近し、背中でタックルした。男は吹っ飛ばされかけるが、何とかバランスを取り、立ち直る。


「体幹もいい、悪くないな」


しかし隙は生まれ、レイモンドが男の懐へ飛び込むと、トンファーを二、三回ほど連打した。強烈な一撃が男に響く。しかし男はそれでも戦い、膝蹴りを行なってレイモンドを突き放した。


「この攻撃に耐えるとは、なかなか頑丈じゃないか、私の能力は衝撃波を発生させるもの、その対象は拳だけではなく、手持ちの近接武器にまで影響を与えることができる。その衝撃に耐えるとは、お見事だ。だがかなり効いただろう? まだやるか?」

「まだ…やります!」


男は再び剣を構え、レイモンドに向かって走った。しかし先ほどと比べて太刀筋が乱れ、隙だらけになっていた。反対にレイモンドは振り翳された剣を片手のトンファーで弾き返すと、もう片手のトンファーを男の首に押し付ける。


「…こんな所だ。君の実力は計らせてもらった。エージェントまでにはいかないが、入隊しても問題はないだろう」

「あ、ありがとうございます…」


勝負が決まったのか、二人は武器を戻すと、次の人へと移る、次は神癒奈の番だ。


「あれが例の四課に入る九尾か、また随分と異様な覇気を纏っているな」

「見た目は強そうだけど中身はどうなんだ? 九尾の入隊希望者なんて見たことないから、全然わかんないぞ」


見物客がそう言う中、その中にいた永戸達は、神癒奈をじっと見守る。


(頑張れよ…)

(あなたの実力、計らせていただきますよ)


永戸は神癒奈の実力は評価しているが、フィアネリスはこれを見るのが初となる。四課の二人は固唾を飲んで見守った。


「……九尾の狐か、珍しい入隊希望者だな、名前は何と言う」

「焔月 神癒奈と申します!」

「神癒奈か。その体から溢れる力、エージェントとして充分過ぎるものだろう、だが、力があるとはいえ、この私を崩せるかな?」


そう品定めを終えると、レイモンドは構える。

神癒奈も刀を構えて両者睨み合った。


「では、始め!」


試験の開始と同時に、先程の戦いとは違い、レイモンドが急に距離を詰めてきた。


(速い!)


神癒奈はすぐさま横へ飛ぶ、すると、神癒奈のいた場所にパンチが飛んできて、衝撃波が走った。


「四課の配属を希望していると聞いた。そうなれば、こちらもそれ相応の力で戦わせてもらう」


そう喋りながら、レイモンドは連続攻撃を神癒奈に叩き込み続ける、神癒奈はそれを回避し続ける。


(攻撃する暇がない!)


彼の攻撃は一撃一撃が重く、命中すればダメージは免れないだろう。刀で攻撃を捌き、なるべく衝撃波を受けないように避け続けるが、間髪入れずに攻撃を続けてくる為、こちらから攻めることができなくなっていた。


「どうした、守るだけでは戦いにはならないぞ、四課はそれほど甘くはない、ここに入隊したいなら、気合いを見せてみろ!」

「くっ…!」


神癒奈は攻めることができず、ひたすら攻撃を弾き続ける。衝撃波がギリギリを掠めるが、彼女はそのギリギリの中で何とか戦いを続行していた。


(チャンスを作る!)


連続攻撃の中で、神癒奈は両手のトンファーの一撃を、同時に刀で受け止めた。一瞬だけ生まれた隙、その隙に乗じて神癒奈は焔を出した。


『絶火!』


手のひらをレイモンドに当てると、ゼロ距離で焔の弾丸を放つ。本来なら指先から収束して放つが、手を開いて拡散させて放つことで、貫通性を無くした代わりに、衝撃波と同じように、レイモンドを焼きながらダメージを与える。


「ぐっ…炎に私と同じ衝撃波を加えるとは…!」


レイモンドは焼かれた部位を抑え、空いた片手でトンファーを振るうが、攻撃速度は先ほどより落ちた、神癒奈は軽々とそれを避けると、自身の全力を出す。


「今度はこっちの番です!」


刀身に焔を纏わせ、全身からも焔を溢れさせてドレスのように纏うと、レイモンドに反撃を開始した。焔が宿った刀でレイモンドに一撃一撃的確に攻撃を加えていく。


「ちぃっ!」


彼はそれをトンファーで捌くが、あっちの衝撃波とは違いこちらは焔、かするだけでも肌を焼き、受け止めれば直に焔を浴びる事になる。


「その気になれば、君はここら一体を焼くことはできるんじゃないか⁉︎」

「そうですね、私ならそれも可能です!」


実際に彼女が通った箇所には燃えるものがないのに焔が残っていた。実戦で何の枷もなしで本気で戦えば彼女単体でも充分強いだろう。


「だが、私とて特査の一員、舐めるな!」


レイモンドがもう一度攻撃を行おうと、全身に焔が纏われていることを関係なしで再びトンファーで神癒奈に連続攻撃を加える。その一撃は、神癒奈の頭を確実に捉えた。その瞬間だった。


「攻撃が、当たってない⁉︎」


トンファーによる一撃が、神癒奈の身体をすり抜けたのだ。どう言うことかレイモンドは驚き、もう一度攻撃を加える。だがまたしてもその攻撃はすり抜けてしまう。


「『陽炎』……そこにいる私は、焔で作り出した残像です」


焔がゆらめき、残像が消え、レイモンドは神癒奈の姿を見失う。そして、そうしているうちに、本物の神癒奈は、レイモンドの後ろを取っていた。刀を鞘に納め、抜刀の構えを取る。


「焔月式抜刀術…壱式………!」


鍔を弾き、しっかりと刀を握ると、背後から爆速の抜刀でベルモンドを一刀両断した。


「っ…!」

「試験ですので峰打ちにしました。ちょっと火傷はしますけどね」


レイモンドが膝をつくのを見て、神癒奈は纏っていた焔を解き、刀を鞘におさめる。


「ふぅ、これでよろしいでしょうか?」

「あぁ……文句なしの合格だ。その実力なら、四課でも充分戦える」


膝をついた状態で回復薬を飲んで状態を治療すると、ベルモンドは立ち上がって神癒奈と握手をした。

それを見た見物客からは、驚愕の声が上がる。


「あのレイモンドに勝っただと⁉︎ やはり九尾の狐は強いのか!」

「特殊能力もかなりバリエーション豊かだったな、四課のエージェントとしてもやってけるほどに」


見物客がそうガヤガヤしてる中、永戸は立ち上がってその場を去ろうとする。


「おや、適性検査まで見に行かなくてよろしいのですか?」

「もう合格したようなもんだろ、現役のエージェントに勝ったんだ、新人の歓迎会の準備にでも行こう」

「それもそうですね」


そう言うと永戸とフィアネリスはその場から去った。


「ふぅ、やりましたね」


山場は超えた…後は適正検査のみだ。そう思うと神癒奈はほっとして、他の入隊希望者の戦いを見て、後に、適性検査を受けた。

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