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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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天使、遭遇

 天井から少女が現れ、神癒奈は驚き、慌てふためきながらお風呂から出ると、部屋にいる永戸に助けを求めた。


「永戸さん永戸さん! 天井から急に人が⁉︎」


 風呂場での襲撃を受け、神癒奈はお湯でぬれた状態で全裸のまま、凄い形相でお風呂から出てくるが、その側には、先ほど天井から生えてきた少女も一緒にいた。


「一体急に怒鳴って何があったんだ⁉︎ ……あー、そういうことか」


 これには永戸も驚きだったらしく、神癒奈に何があったか聞こうとするが、隣にいた少女を見て、何となく事情を察した。どうやら、この少女の先程の犯行は、日常茶飯事みたいなものらしい。


「もう、マスター、客を連れて帰ってくるなら事前に言ってくださいませ、あなたの帰還に合わせてお風呂場から帰ろうとしたら危うくそこの狐に焼かれかけましたよ」


 やんわりレアに焼かれたのか、ちょっと焦げ臭いを出しながら少女は永戸に不満を言う。


「玄関からではなく風呂から家に帰るバカがいったいどこの世界にいる!」


 どうやらこの状況には慣れてるのか、永戸は不満げな少女に対して、真面目にツッコミをいれた。それに対して少女は叱られ、そんなぁと声を漏らしながら黙る。


「ええと……あのう、そちらの方はどなたなんですか?」


 この摩訶不思議な状況に耐えられなくなったのか、神癒奈は全裸のまま手を挙げて質問をした。


「……服着ろ」

「へ?」

「服を着ろこのバカっ!!!」


 精一杯目を逸らしながら、永戸は神癒奈を脱衣所へ押し戻し、ドアを閉める。全く世話が焼けると呟くと、永戸は椅子に座って項垂れた。

 暫くして、ちゃんとぬれた体を拭いて、服を着た神癒奈が、恥ずかしそうな表情で脱衣所から出てくる。全裸だったのが恥ずかしかったのか、顔を赤くして背け、尻尾を悩ましげに揺らす。


「で……その方は、その、誰なのですか?」


 そうして神癒奈は少女を見るが、この少女には、普通の人間とは違うところがあった。容姿は、燃えるような真っ赤な髪に、琥珀色の瞳、神癒奈より少し高い身長をしていたが、背中には三対の羽、頭には、光る輪が浮いている。その姿を例えるなら、神聖で、美しさを感じるものだった。


「あぁ、紹介するよ、コイツは俺のアシスタントの……」

「熾の天使、フィアネリスと申します。初めまして、以後、お見知りおきを」


 永戸の紹介を受けて、天使という種族の少女、フィアネリスは礼儀良く一礼をする。神癒奈はははぁと困った顔で頷いては、彼女に礼を返す。


「マスターからあなたの話は聞いていますよ、神癒奈さん」


 ニッコリと笑いながら、フィアネリスは神癒奈のことを知っていると話す。いつのまに知られていたのだと神癒奈は驚くが、その前に、"ますたぁ"とよくわからない言葉が気になった。


「フィーネは昔俺と契約して従者になった天使なんだよ、まぁ、要するに主従関係があるんだ」


 椅子に座った状態で楽になりながら、永戸は説明する。成る程、主従関係、どうりで礼儀が正しいのだと神癒奈は思った。


「神癒奈のことは、向こうの世界にいたころから、通信による情報共有で伝えてある。だから、気楽に話しても大丈夫だぞ」

「通信?」


 また聴き慣れない単語が聞こえて神癒奈は首を傾げる。すると、永戸は腰のポケットから、何かの機械の端末を取り出した。


「この異世界間通信機器、通称"Eフォン"で連絡を取りあってたんだよ。お前が寝てたりとか、見てないウチにな」


 一種の携帯電話というものだと彼は説明しながら、神癒奈にEフォンを見せつける。これでフィアネリスと適時連絡を取っていたのか、便利なものだなぁと神癒奈は感心した。


「じゃあ、永戸さんとフィアネリスさんは、主人と従者で、仕事仲間、ということなんですか?」

「そういうことだ」


 永戸の仕事仲間と聞いて、神癒奈はフィアネリスを見る。顔を見つめると、彼女は深い笑顔でこちらを見かえしてきた。どこか含みがありそうな笑顔で、神癒奈からしたら少し怖い。


「ええと、よろしくお願いします、フィアネリスさん!」

「はい、よろしくお願いしますね。もし名前が呼びにくければ、フィーネと呼んでも構いませんよ」


 満面の笑みで神癒奈と挨拶を交わすと、フィアネリスは永戸に向いた。


「それで、マスター、本日の任務で回収した物は?」

「あぁ、そこのトランクの中にある。傷はついてない、明日、四課に持っていくつもりだ」


 今日の任務で回収した、薬の入ったトランクを指差すと、フィアネリスはそれを中身を確認した。中身は昼の時と変わらず、傷もなく綺麗に薬が入っている。漏れている気配もない。


「確かに、確認しました。神癒奈さんの扱いはこれからどうするつもりです?」

「四課に配属させようと思う。俺たちの仕事をして色々知りたいんだとさ」


 "四課"とは何だろう、またまた聞いたことない単語だと神癒奈は思うが、それに悩むのにきづいた永戸は彼女に振り向くと「明日までの楽しみだ」と笑った。


「かしこまりました、では、神癒奈さんの入隊の手続きをしておきますね」

「あぁ、頼むよ」


 フィアネリスに何かを頼み込むと、永戸は奥の寝室へと姿を消す。神癒奈も今日は休もうかとフィアネリスに寝室はないか尋ねてみる。


「私はどこで休めばいいですかね?」

「神癒奈さんはあちらの部屋ですね、私と一緒に寝てください」


 とりあえず同性の私と寝ましょうとフィアネリスは虚空から枕を取り出すと、宙を浮いて部屋まで移動し始める。それを見た神癒奈は、人が浮いてるとポカンとなって彼女を見つめた。


「もしや、天使を見るのは初めてですか?」

「えぇ、まぁ……」


 物珍しい目で見つめられて奇妙に思ったのか、浮いたままフィアネリスは神癒奈に質問する。天使という存在は知っていたが、いざこうしてみるのは初めてだと神癒奈はフィアネリスをじーっと見る。


「やん、そんなに見つめないでくださいまし♪」


 冗談めいた態度で、神癒奈の視線を受けるフィアネリス。それを見て、変わった天使だなぁと神癒奈は白い目になる。


「ルームメイトになるのですし、仲良くしましょう」


 背中の光輪をクルクルと回転させながら、フィアネリスはまたニッコリと笑った。そんな彼女に、このまま何も言わずに接するのはダメだと感じ、神癒奈も笑い返すと、フィアネリスと一緒に彼女の寝室へと向かう。

 彼女の部屋に入ると、そこは、家具が綺麗に整えられた書斎だった。壁の本棚には本がびっしりと敷き詰められており、その本の多さに、神癒奈は目を奪われそうになる。


「気になったら読んでいただいてもよろしいですよ」


 服を脱いでは寝間着に着替えるフィアネリスにそう言われ、神癒奈は試しに一冊手に取ってみる。難しそうな本で、ページを開いてみてみるも、彼女ではとても読み解ける感じがしなかった。


「私はソファーで寝るので、神癒奈さんはベッドで寝てくださいな」

「えっいいんですか⁉︎」

「今日はお疲れでしょう、怪我もあるでしょうし、そこで寝てもよろしいですよ、ただ、明日からはそこで二人で寝ることにはなりますよ?」


 ベッドメイクをして、彼女に寝ていいというと、フィアネリスは枕を置いて、毛布を手にソファーに寝転がる。ここは厚意に甘えておくかと神癒奈はベッドに横になると、彼女をチラリと見た。


「明日からは色々と大変になるでしょうが、お互い頑張りましょう、では、おやすみなさいませ」


 ソファーで横になったフィアネリスが、寝る前に神癒奈に声をかける。明日、何をするんだろうと神癒奈は考えるが、そうしているうちにフィアネリスは部屋の明かりを消し、眠り始めた。


「はい、おやすみなさい、フィアネリスさん」


 明日のことを今考えても仕方ないかと、神癒奈は布団をかぶると、フィアネリスに言葉を返し、明日を楽しみにしながら目を閉じて眠った。

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