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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 機械仕掛けの天使と死神と呼ばれた部隊
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新しい景色

 英雄殺しの男、永戸と出会い、彼について行くこととなった英雄を志す妖狐、神癒奈。彼に手を引かれ、世界をつなぐゲートを通るが、ゲートを抜ければ、そこには、神癒奈が全く見たことがない景色が広がっていた。


「わぁああああ……!」


 そこは、機械に満ちた、技術の進んだ世界だった。人間の言葉で言えば、都会と呼べる街で、あちこちにビルが立ち並び、道路では車が走り、道行く人は様々な種族が行き交っている。


「凄い! 見たことないものがたくさんあります!」

「地球と呼ばれる世界にある都会の街を模して作られた街なんだ、色々あるけど、まぁ慣れてくれ」


 目新しい物を見ては、あちこちに目移りをする神癒奈を他所に、街の説明をする永戸。このまま彼女の好きなようにしてあげてもいいが、もう時刻は夕方、夜にもなるしと神癒奈を連れて歩き出す。


「凄いです! 壁の絵が光って動いてますし、あの機械、人を乗せて走ってます! どうやって動いてるんですかね?」

「凄いテンプレートな驚き方するなお前」


 現代の世界を見て驚く妖怪を見てる気分だと永戸は苦笑いする。まぁ最も、彼女はその妖怪の一部なのだが。と、気がつくと、彼女、目をキラキラさせながら車の走る道路の真ん中まで歩もうとしだした。それを見て永戸は慌てて静止し、引っ張り戻す。


「全く、放置しておくと事故に遭いかねないな」

「えっえへへ……」


 永戸に怒られながら引っ張られ、困ったように耳を垂らし、尻尾を揺らす神癒奈。ふと、周りを見渡してみれば、自分と同じく耳や尻尾を生やした人や鬼のようにツノを生やした人など、普通の人じゃない人がちらほら見えた。


「永戸さん、ここでは、私みたいな妖怪の人とか普通にいるんですか?」

「ん? あぁ、そうだな、普通にいる。妖怪だけでなく、天使、悪魔、モンスター、様々な種族がここで暮らしてる」


 道を歩く人々を見て、神癒奈は自分と同じ人もいるのかなと考え、自分も耳と尻尾を隠さずに生きてもいいのかなと感じると、少し気持ちが楽になった。


「そろそろ家に着くぞ」


 そうして永戸と神癒奈は一つのビルの中へ入って行く。エレベーターで上に上がり、適当な階に止まり、彼の住んでる部屋のあるドアの前に着いた。


「ちょっとうるさい同居人がいるし、狭いかもしれないが、我慢してくれ」


 ドアのカギを鞄から探しながら永戸は神癒奈に忠告する。そして、ドアのカギを取り出すと、早速ドアを開けた。


「ただいまー……今回の仕事はなかなか骨が折れた。ちょっと、客を連れ帰ってきたけど、泊めてもいいか?」


 同居人に対してか、家の中で永戸が声を上げるが、反応がない、留守にしているのだろうか?


「……なんだ? いないのか? まぁそれならいいか、神癒奈、上がってくれ」


 永戸に言われ、神癒奈は靴を脱ぎ、おずおずとしながら家の中に入る。家の中は綺麗で、家具や道具などが丁寧に整理されていて、とても暮らしやすそうになっていた。永戸は何やら用事があるのか、部屋の奥へと入って行くが、神癒奈は特に何もすることがないので、リビングで一人ちょこんと座って待つ。


「ほう……ほうほう」


 家の中も見慣れないものが多く、神癒奈は周りを見渡す。薄型の大きなテレビや、最新のゲーム機などが置いてあるが、どれも神癒奈には知らないもので、とても興味が惹かれるものであった。神癒奈はフワフワのクッションを抱きながら、しばらく部屋の中をぐるぐる見回してみる。すると、永戸が奥の部屋からタオルを持って戻ってきた。


「お風呂を沸かしたから、先入ってくれ」

「えっ⁉︎ この家お風呂もあるんですか⁉︎」

「あるけど……? あぁ……そっか、向こうの世界ではなかったもんな」


 この家にお風呂があることに驚く神癒奈。それを見て、向こうの世界ではどうやって風呂に入ってたんだろうと永戸は想像した。だが、やましいことを考えては彼女に失礼なので、タオルと適当な服を彼女に渡すと、永戸は奥の部屋へ入って行く。


「んじゃあ、お先入りますね」


 タオルと服を片手に、神癒奈は嬉しそうに脱衣所へ行く。久しぶりのマトモな風呂なのだ、心が弾まないわけがない。

 脱衣所に入って服を脱ぐが、着ていた服は、先の戦闘でダメージを受けたせいで、ボロボロでもう着れそうにはみえなかった。


「気に入ってた服だったんですけどね……」


 ボロボロの服をカゴに入れると、お風呂の中に入る。湯船には蛇口からお湯がでて貯め込まれ始めていて、温度はちょうど良さそうに見えた。足先から湯船に少しずつ身を入れると、程よい暑さに思わず身を震わせてしまう。


「ふひゃっ⁉︎ ふわぁぁ〜……こんなお家でお風呂に入れるなんて、こんな贅沢もあるんですね」


 神癒奈は、部屋の間取りの大きさから、てっきりお風呂などはないかと思っていたが、それでも小さいながらお風呂があることに驚愕し、そして感動していた。


「はぁ〜、思えば、永戸さんとの旅はあっという間でしたね」


 湯船に浸かりながら、神癒奈は旅を思い返す。化け物退治ばかりをした旅であったが、彼との旅はとても充実した時間であったと、神癒奈は思う。

 そう彼との時間を思いふけりながら湯船に浸かるが、あんまりにも気持ちいいので、少し眠くなってきた。このまま寝てしまおうかと思うが、天井を見上げると、彼女は寝ない程度に一息つく。

 だが、そんな彼女の平穏な時間も、突然の襲撃によって破られてしまう。


「長旅お疲れ様でしたマスター♪ せんえつながら、お背中お流しいたしましょうか⁉︎」


 突然、天井から少女が()()()きたのだ。目をハートにさせながらやってきた少女に対して、天井を見ていた神癒奈は、一瞬理解が遅れる。


「あっ……」

「ふぇ……?」


 目と鼻の先の距離まで近づいた二人、どうやら少女は永戸を待っていたらしく、神癒奈を見て永戸じゃないと知ると、申し訳なさそうに体を少し引く。逆に神癒奈は急に詰め寄られ驚くが、暫くして、少女が身を引いたの見て「あー、人違いだこれ」と理解した。


「きゃあああああっ⁉︎⁉︎ だっ誰ですかあなたはぁあああっ⁉︎」


 そして、風呂場から悲鳴が上がった。

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