表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第一章 絶望を知るヒトと希望を夢見るキツネ
18/258

夕焼け

 外に出ると、日が落ちる時間帯か、もう夕方になっていた。神癒奈は一仕事終えたと太陽を見ながら背伸びをするが、少し寂しい気持ちもあった。


「さて、この世界における俺の任務はさっきので全部終わった。俺がこの世界にいる理由はもうない、この意味、わかるな?」


 永戸が振り返って、神癒奈の顔を見ながら問いかける。そう。彼女が寂しいと思ったのは彼と別れてしまうからなのだ。彼は世界を渡り、その調律を正す者。この世界の調律を正し終えた今、ここではもうやることはないと、彼はこの世界からいなくなろうとしていた。


「はい。ここでお別れ……ですよね」


 彼と別れるのが名残惜しいのか、俯きながら神癒奈は答える。それを見た永戸は当然の反応だろうと思った。自分は普通の人間ではない。世界を渡る者だ。一度世界を渡ってしまえば、目の前にまた現れることなど二度とないだろう。

 神癒奈のそんな顔を見て、永戸もまた心に寂しさを抱くも、それを振り払い、彼は手をかざしたかと思うと、時空をつなぐゲートを作り上げる。


「あぁ、短い旅だったが、お前との旅、楽しかったよ、じゃあな」


 永戸は彼女に別れを告げ、ゲートを開くと、世界を移動しようと体を入れようとする、すると、突然、神癒奈が彼を引き止めるように声をかけてきた。


「あの! 私、短い間でしたけど、あなたと旅ができてよかったです! あなたとこの世界の真実を見て、悩んで、戦って、いろいろなことがありましたけど、私も、楽しかったです!」


 神癒奈が話しかけてきて、ゲートに入りかけた永戸はピタリと止まる。


「あなたと別れるのはもちろん寂しいですけど、ここまで旅ができて、私は良かったです!」


 ゲートに足をかける永戸は、神癒奈の顔を振り返って見た。精一杯の笑顔で、泣きそうになりながらも神癒奈は彼を見送ろうとしていたのだ。


「私の探しているものは、見つかりませんでしたけどね」


 えへへとまた笑いながら、神癒奈は永戸を見る。その顔を見て、永戸は目の前の少女は自分と別れるのが本当に寂しいのだと悟った。こんな、表立ってできないような仕事をしている自分だが、そんな自分との別れを、本気で惜しんでいるのだと彼は感じた。するとここで、ある提案が永戸の中で浮かび上がった。


「……くるか?」


 唐突な彼の誘いに、神癒奈は目を丸くする。


「えっ?」

「探し物をしてるんだろう? この世界にずっといても仕方ないだろう? なら、俺のところに来ないか? ……英雄になって、夢を、叶えたいんだろ?」


 永戸の言っていることが、一瞬、神癒奈には理解ができなかった。彼が自分を誘っていると、わからなかったのだ。


「でも、貴方は、英雄になることを嫌がって…」

「…口ではそう言うけどさ、俺の仕事は見ての通り人殺しばっかだからな、お前のそういう夢ばっか見る姿勢を否定せざるを得ないんだよ」


 吐き捨てるように彼は言う。


「だけど、俺はお前の夢は素晴らしいと思ってる。人と妖が繋がれる世界。もしそんなのがあったら、戦いが一つ減って、俺達が動くこともなくなるじゃないか。それがもしも達成できたら、すごいと思う」


 彼の言葉を、神癒奈は聴き続ける。


「お前がもし英雄になりたいと言うのなら、その夢を追える場所を知ってる、結局俺と同じ仕事になるかもしれないけど、ここで呑気に傭兵やってるよりは遥かにそれらしい事をする場所を教えてやるよ」


 彼の言う意味を理解した時、神癒奈の目から、ポロポロと涙が溢れ出してきた。英雄殺しと呼ばれる彼が、英雄を志す自分に対して「夢の為に、一緒に来ないか?」と声をかけてきた。それが、たまらなく嬉しかったのだ。


「来いよ、帰る家も与えてやるし、新しい仲間だって紹介してやる。お前が英雄になれるかもしれない場所を紹介してやるよ。仕事は……ちょっとキツイかもしれないけどな」


 永戸は神癒奈に笑顔で手を差し伸べる。その姿は、この世界に来てからずっと一人だった神癒奈にとって、救いのように見えた。


「…いいんですか? 私は、甘っちょろい夢想家ですよ?」

「あぁ、お前は甘っちょろい、だが戦う力はあるし、覚悟も度胸もある。守りたいと願う心だってある。英雄になりたいなら、それだけでも十分な素質だ」


 神癒奈は不安そうに手を取るが、だが彼は強くそれを握り返し、彼女をじっと見つめた。


「もっと広い世界に行こうぜ。クソッタレな奴らばっか片付ける仕事だが、お前に、英雄とはなんたるかを教えてやる。覚悟しとけよ、狐のお姫様」

「……はいっ!」


 涙を拭い、彼女は彼の手を取る。差し伸べられた彼の思いに応えるように。


「よろしくお願いします! 永戸さん!」

「あぁ、これからよろしくな、神癒奈」


 手を握りしめあい、共に行くと決意が決まると、二人はゲートへと入っていく。

 これで終わりじゃない、これから始まるのだ。英雄殺しと呼ばれた彼との長い旅が、自分が英雄になる為の、果てしない冒険が。

 神癒奈は、これから待つ、新しい世界に、胸を躍らせた。

これにて第一章は終了です!

この二人の主人公を軸に、物語が展開していきます。

第二章からは、新たなキャラクターが続々と出るので楽しみにしていてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ