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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第一章 絶望を知るヒトと希望を夢見るキツネ
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放たれた聖剣

 溢れ出る光を見て驚く神癒奈を、庇うように永戸は立つ。その手には、光を放つ聖剣が握られていて、折れた刃を補うように光が溢れ出ていた。


「永戸さん……大丈夫なんですか⁉︎」

「あぁ、問題ない」


 口から血を吐き、傷のある胸を押さえ込みながら、彼は神癒奈に頷くと、剣を握りしめた。怪物はその光を見て怯えて身を引き、威嚇をする。


「行くぞクソ野郎、その肉の塊、ミンチにしてやるから覚悟しな」


 怪物が手を振り上げたところで彼は踏み出す。手が彼に振るわれるが、永戸はそれを回避し、上に飛び上がった。


「まずはその邪魔な斧を斬る!」


 永戸が上に逃げたのを確認した怪物が斧を構えて彼へ振り上げた。だがそれを永戸は少しの体の移動でかわし、その腕の上に乗る。


「叩き斬る!」


 その手に持つ聖剣を斧に突き立てると、真ん中から光によって溶断され、斧の持つ手がバラバラに切り裂かれた。


「おぉおおオオオオ!」


 武器をなくし、残るは手だけとなった怪物は、怒り、さらに体を変化させてあちこちから触手を出す。刃のついたそれは、大きく身をしならせながら彼へと襲いかかった。


「光を宿せ! レイマルク!」


 触手の攻撃を受けた彼は、かの剣、レイマルクの名前を呼ぶと、空中で体をねじらせ、四方八方から迫る触手に聖剣で斬りかかった。光の光跡が見事に煌めきながら走り、触手はバラバラに焼き切られる。そして、隙ができた怪物の体を、右肩から斜めに切り裂いた。


「やった……いや、まだ!」


 体が裂けた怪物が、永戸を掴もうと手を伸ばす。永戸はそれを避け、神癒奈の前に戻ると、彼女に対して指示を出した。


「やれ! 神癒奈!」

「はい! 焼き尽くせ!『劫火!』」


 神癒奈の手から焔が放たれ、部屋全体にまで侵食した怪物の体を焼き払う。全身を丸焼きにされて怪物は叫びながら悶えるが、二人は容赦せず次の攻撃へと移った。


「このまま一気にやるぞ! 合わせろ!」

「はい!」


 永戸には光り輝く聖剣が、神癒奈には赤く燃え盛る刀が握られ、二人は一斉に怪物へ向けて走り出した。焔で燃やされる怪物が、二人を殴ろうとする。


「はぁああっ!」


 伸ばされた手を神癒奈が切り裂き、その間を永戸が抜ける。すぐに回復して二人をそのままもう一つの手で掴もうとするが、今度は永戸が聖剣でそれを叩き斬った。

 息を合わせた二人の攻撃が、怪物を徐々に押し込んでいく。聖剣の光と、刀の焔が怪物を焼き、傷をつけていく。

 二人を倒せないことに苛立った怪物は、再び触手を、今度は先ほどよりも多く出して二人を襲う。


「俺が斬る!」


 すると、それを永戸が剣を振り、一刀のもとに全ての触手を焼き斬る。そこから神癒奈が前に出ると、怪物との距離は目と鼻の先にまで近づいた。


「焔月式抜刀術……壱式! 斬っ!!!」


 かけ声と共に居合い斬りが放たれ、怪物の体を胴体から真っ二つにした。血が溢れ、上半身が地面に落ち、怪物は地面に這いつくばる。


「オオオオ!!」


 諦めずに怪物は、倒れ伏したまま、目の前にいる永戸に手を伸ばす。対して永戸は表情一つ変えずに、剣を下から振り上げた。


「唸れ!!」


 振り上げられた剣から、煌めく光波が地に沿って飛び、怪物の手が真っ二つに切り裂かれる。最後の足掻きか、怪物は残るもう一本の手でジタバタと暴れるが、永戸はそれに対してゆっくりと彼の顔へ近づくと、口の中に剣を突き刺した。


「これで最後だ! クソッタレの化け物が!!」


 口に剣を入れられ暴れる怪物に、罵声を浴びせると、聖剣の眩い光が解放され、怪物の頭が首元ごと巻き込んで吹き飛ばされた。

 頭を失い、怪物だったものは力なく地面に倒れる。二人はその前に立ち、完全にやったかしばらく眺めたが、怪物はピクリとも動かなかった。


「やった……やりましたよ!! 永戸さん!! さっきの聖剣!! とっても凄かったです!!」


 怪物が動かないことに安心した神癒奈が、先程の永戸の姿を見て、嬉しそうに尻尾をブンブン揺らしながら褒める。


「ま、まぁな、俺にかかれば、ざっとこんなもん……か」


 神癒奈に褒められ、永戸はまんざらでもなさそうに照れるが、だが、彼も限界が来たのか、出血をしながらふらりと倒れかけてしまう。


「わっわわわ! 大丈夫ですか⁉︎」

「ごめん、割と結構キツい……」


 神癒奈に抱えられ、永戸はなんとか立ち直るも、傷は深く、彼女がいないと立ってられないような状態だった。


「はぁああああー……やり切ったな」


 永戸はゆっくりと地面に座り、薬を腰から取り出し、瓶を開けて口にくわえた。激痛と共に痛みが少しずつ治り、少したてば、立って歩ける程度には回復した。


「さて、ブツも回収するか」


 薬の入ったトランクケースが遠くにあるのを見て、立って、おぼつかない足取りで彼は取りに行く。トランクに触れ、中身を確認するが、幸運にも、特に破損してるものなどは見当たらなかった。


「これで、本当に任務は終わったんですよね?」


 永戸がため息をつくのを見て、ふぅーっと神癒奈も座って一息をする。人殺しをするかと思いきや、最後の最後まで化け物退治だったのだ。傷もついたし、疲労も溜まっている。


「あぁ、これで、俺のここでの任務は全部達成だ。ご苦労さん」


 トランクを持った永戸が、神癒奈に近づくと、彼女の頭を優しく撫でた。急に頭を撫でられて神癒奈は驚くも、撫でられてるうちにそんなことも忘れて、顔を緩ませてゆらゆらと尻尾を揺らす。


「えへへ、私、頑張りましたよね」

「あぁ、頑張ったな」


 頭を撫でられて嬉しそうにニッコリと笑う神癒奈に、永戸は笑顔を返す。その笑顔を見て、神癒奈は、彼に対して、最初は人を躊躇いなく殺す怖い人間だと思っていたが、今こうしてみると、存外、優しい人間なんだと感じ取った。

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