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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第一章 絶望を知るヒトと希望を夢見るキツネ
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潜入

 翌日、朝早くに起きた二人は、生物兵器の研究がされてると思われる施設へ向けて歩いた。そして、昼過ぎになる頃、その施設の周辺にたどり着き、二人は、見晴らしのいい崖の上から、施設を覗き込んだ。


「こんな世界に、随分と技術力の高そうな建物じゃないか」


 双眼鏡を覗きながら、永戸はそうつぶやく。建物の外を観察すると、技術水準の低いこの世界にしては、監視カメラや鉄の金網など、技術力の高そうなものが配置されていて、さらに、外の世界に気づかれないように、光学迷彩で建物全体を隠していた。


「見たことないものがたくさんあります……中はどんな感じなんでしょうね?」

「さぁな? 中がレストランだったら、気が楽なんだが」


 軽く茶化しながら、永戸はどこかから入らないか探してみる。入り口の方には警備の人がいて、この世界にはあるまじき、銃を持っている。普通に玄関のドアをノックしに行こうとするのは危険に見える。

 反対の方に何かないかと探してみるが、すると、建物の裏の方に大きなダクトがあるのを見つけた。


「丁度いい、あそこから入るぞ」

「あの穴からですね、わかりました!」


 荷物を抱え、崖を滑り降りると、二人は監視カメラを避けながら、ダクトの側へ近づく。丁度人一人倒れるようなサイズのダクトだ、先に永戸がダクトに体を入れ、神癒奈がその後をついていく。

 暫く、暗いダクトの中を這って進んでいく。途中、人の声や機械の音が聞こえたが、まだ中の状況を確認できず、何がそこで起きているのか理解できなかった。


「あそこ、のぞけそうですよ」


 すると、神癒奈が、光の漏れる金網を見つけ、そこを指さした。二人はその方へ進み、金網から中を覗く。

 そこは、どうやら研究室らしく、白衣を着た人達が、注射器などの手術器具を持ちながら、手術台に横たわる人を囲っている。


「やめろ……やめてくれ、俺もあんなのにはなりたくない!」


 手術台に寝ている人は、何やら怯えている様子で周りの人に懇願していた。一体何に怯えているのだろうと神癒奈は思うが、ここで、手術台の人と天井のダクトにいる二人が目を合ってしまう。


「助けてくれぇ! 化け物になんかなりたくない!」


 大声で助けを求められ、二人はバレたと思って一瞬身を引くが、隠れながら見ると、手術台の人以外は気づいていないらしく、必死に叫ぶ人をよそに、その人の手や足を押さえ、注射器を首元に刺した。


「いやだ、いやだいやだいやだ、嫌だぁ! あっ……が……ぁ……ぎぁあああああっ!」


 体内に謎の薬物をか流し込まれ、手術台の人は苦痛で叫ぶと、体が徐々に変化を始めた。ぐちゅぐちゅと音を立てながら、体が醜く変形し、瞬く間に異形の怪物になる。状況から察するに、どうやら人を生物兵器にできないか実験をしていたらしい。


「そんな……なんて事を」


 その惨状には思わず神癒奈も絶句した。人を化け物に変えるだなんて、とてもマトモには思えなかったからだ。


「生物兵器の開発の話は、どうやら本当だったようだな」


 反対に永戸はこういうのには慣れていたのか、なんのリアクションもなかった。再び二人が覗くと、研究員は変化した怪物から、何やらデータを取っていた。怪物の状態を見て、メモを各々が書き記すと、怪物を放置して、部屋から出ていく。


「中に入るぞ」


 誰もいなくなった隙を見て、永戸と神癒奈は下に降りる。怪物が二人を見て、襲おうと手術台の上で暴れるが、二人は無視をして周りに何かないか探した。


「これは……おい、こっちに来てくれ」

「なんです?」

「見覚えのあるものを見つけた」


 永戸が見つけたのは、小さな虫と薬品の入った大量の試験管だった。見覚えのある虫、そう、この前の調査で見つけたあの寄生虫だ。永戸は鞄から瓶を出して、試験管の中身と見比べてみるが、試験管の中の虫と、この前手に入れた寄生虫は見た目が完全に同じだった。


「これも使って、生物兵器を作れないか実験してたと言うわけか」


 試験管を一本持ち出しては、瓶と同じようにカバンの中入れていく、その他の研究資料も、めぼしいものから鞄へ突っ込んだ。

 すると、研究室のドアが、開かれて、外から誰かが入ってきた。


「なっ⁉︎ なんだお前たちは⁉︎」


 どうやらさっきの研究員らしく、研究室を漁っていた二人を見つけては他の人を呼ぼうと声をあげようとする


「させるか」


 危ういと思った永戸は、腰にさしていたナイフを研究員に投げ、胸元に刺す。痛みで研究員が悶えているうちに、彼は接近し、そのまま刺したナイフを引き抜き、首を斬った。


「これでまずは一人」


 血を流して倒れる研究員を見て、永戸は落ち着いてナイフの血を払う。神癒奈はこの状況に少し驚きはしたが、しっかりと覚悟は決めてきたのか、拒否反応は起こさず。死体を引きずっては、部屋の奥へ隠した。


「作戦開始だ。施設内の人をやりながら探索するぞ、ついてこい」

「はいっ!」


 扉から出ると、二人は走り出した、途中何人か研究員に出会うが、一刀のもとに斬り伏せて進んでいく。


「侵入者を発見!」

「止まれ!」


 向こうも異常に気づいたらしく、警備の者が二人、銃を抱えながらやってきた、威嚇射撃をされて、銃弾が二人の横を通るが、二人はそれに臆せず、そのまま前へ走る。


「邪魔だ!」

「ごめんなさい!」


 永戸が警備員の銃の銃口を真っ二つに斬ると、神癒奈が刀でまとめて斬り捨てた。そしてそのまま二人は施設の中を、駆け回っていく。途中で警備の者がまた来ても斬り、研究員と鉢合わせしても斬り、部屋に入っては情報を漁り、二人は施設の奥へ突き進んでいく……。


 ーーーーー


 暫く、二人は施設の中を探索した。生物兵器を培養するカプセルが入った部屋や、研究員がデータを残すパソコンの部屋など、様々なところを探し回った。当然、そんな中で出会った者は全て殺した。

 そんな中で二つ、わかったことがある。

 一つは、先程見つけた寄生虫は、本当に生物兵器としてこの施設で生まれたものだった。資料によると、この寄生虫は、生物に寄生しては宿主となり、生きている間は衝動のままに他の動物を襲わせ、死んだ後は体を動かし、ゾンビのように活動を続ける。これに怪物と化す薬を組み合わせれば、たとえ本体が人間だろうとあっという間に頑丈で強力な生物兵器の完成という事だ。

 そしてもう一つは、その兵器は、これから始まる異世界での戦争で商品として利用される物だった。戦争にて新しい武器として投入されるこの生物兵器は、これを開発した企業が各勢力に売り捌き、金にして儲けるらしい。

 これを知った時、神癒奈は怒りを覚えた。人道に反している、生き物としてのあり方を踏みにじった兵器であると。


「こんなの、絶対許せません! 必ず止めましょう!」

「あぁ、ここで行われている実験は今日ここで終わらせる」


 永戸も同じ気持ちらしく、殺してきた人の血を拭いながら、施設を歩く。

 神癒奈は神癒奈で、最初は人を殺すのにためらいを持っていたが、ここで起きた非人道的な実験を見てきて、生物に対する冒涜だと思ったのか、既に殺すことへのためらいを無くしていた。


「あと残された部屋は……ここだけだな」


 物々しい大きな扉の前に二人は立つ。施設の構造からして、おそらくここは危険な薬品を保管している部屋のようだ。


「っ? 中から人の声が聞こえてきますね」


 扉の奥から、悲鳴のような声が聞こえてくる。誰か、彼らから逃げ遅れた研究員でもいるのだろうか。


「そんじゃま、挨拶をしにいきますか!」


 鍵のかかった扉を蹴り、無理矢理こじ開ける。開かなくても何度も蹴り、扉をひしゃがせ、ついには蹴破った。


「こんにちは、誰かいるなら返事をしてくれよ」


 武器を片手に、二人は中へ入っていく。中には、色々な薬品が所狭しと棚にしまわれており、奥には、薬品を作る機械らしきものがいくつも合った。

 ふと、そんな機械の横に、男がいるのを見つけた。薬の入ったトランクケースを大事そうに閉じては、それを抱え、怯えた様子でこちらを見つめてくる。


「き、きき君達は……⁉︎」

「お前たちのやってきたことに精算をするために地獄からやってきた死神だよ」


 二人は対面する。怯えた研究者の一人の男と。

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