アフターケア
それからというもの、闘技場での違法賭博が警察に発見され、そこでの違法バトルが禁止されることとなった。亜人が市民権を得る話も無くなり、アーティファクトも、イストリアの内部で厳重に保管される形で今回の件は幕を閉じた。
エイルに発現した能力は「貴血の糸」と命名された。自身の血液や体液に含まれる猛毒を糸に含め、射出することで触れた敵に猛毒を流し込み、さらに溶かす事ができる能力で、糸自体の硬さもワイヤー並みに増し、毒自体の威力もふれれば殺人級の威力となった。ただ唯一欠点があるとするならば…。
「あぁ、見舞いに来てくれたのですね」
「はい、エイルさん、大丈夫ですか?」
「ええ、貧血も輸血でなんとか治りました。来週くらいには職場に復帰できます」
イストリアの医務室でゆったりとしていたエイルに神癒奈が見舞いに来ていた。
彼女の能力の欠点は血を使う以上、大量に使用すると貧血に陥ってしまうという点だった。あの戦闘の後、エイルは再び倒れ、慌てて医療部に搬送されたが、ただの貧血とわかり、全員がほっとした。なんでも、その欠点を補う為、イストリアは新たな武装と専用の輸血パックを開発するそうだが、それは彼女が職場復帰するまで見ることはないだろう。
「仕事はどうですか?」
「相変わらず閑古鳥が鳴いてますよ、まぁ平和なのが一番ですけどね」
差し入れのスイーツを2人で分け合って食べる、よく見ると彼女のベッドの棚には他にも差し入れがあった。「シグちゃんからb」と書いてあるのは特査二課のシグナイトからのだろう。
「よかったです、一先ず…事件は解決しましたね」
「ですね」
コロシアムで戦うとなった時はどうなることかと不安だったが、今回もなんとか生き残れたと感じ、2人は安心する。
「そういえば、永戸先輩の妹さんはどうしましたか?」
「あぁ、渚さん…でしたっけ? あの子なんですけど」
あの戦闘にぽっと出で参加した渚のことなのだが…。
「ボクも一緒に住むことにした!」
仕事終わりで休んでいる時に、住んでいる家の玄関を開けてみれば、彼女が重たい荷物を抱えてそこに立っていた。
「…えっ?」
「だーかーらー、ボクもおにぃちゃんと一緒に住むの!」
「玄関先で騒ぐな、他の人の迷惑になるから、話は聞くから上がれ」
彼女を玄関から家に入れてみれば、荷物をバラバラと広げては永戸の部屋を占領して…。
「今日からボクはおにぃちゃんと同じ部屋に住む!
と言っては話を聞かず、永戸にくっつくようになっていた。だがそれに対し真っ先に反抗したのは意外にもフィアネリスだった。
「ダメです、マスターになんらかの不純な行為があった場合、責任は取れますか?」
「取らない!」
「却下!」
パシリと言われ、ずるずると引っ張られて彼女はフィアネリスの部屋に送られる。だがその翌日…。
「〜」
「……はぁ、渚さん? 何故マスターと一緒に寝ているのですか?」
「うぇ……? うぇへへへ…おはよぉ」
「いい加減になさい!!!」
と、このように、隙あらば兄の部屋に忍び込もうとするブラコンっぷりを見せた。
「あはは…永戸先輩も大変そうですね」
「職場では普通なんですけどね、妹だから怒るに怒れないらしくて」
そうこうしているうちにスイーツを食べ終わり、2人は話を終える。
「それじゃあ、私ももう行きますね、仕事の方に」
「ええ、頑張ってください」
そう言うと神癒奈は手を振っては医務室を後にする。それを見送るとエイルは窓の外を見た。今日も都市はぐるぐると目まぐるしく人が動いていく。
「……私も、四課のために戦えてますよね」
遠くの景色を見て、エイルはどこか決心がついたようにつぶやいた。
ご拝読ありがとうございました。本章にて登場した渚が主人公の「ボクの異世界黙示録」も投稿されてますので、よろしければそちらも読んでください




