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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第十一章 String of Spider!
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ブラッディストリング

「大丈夫かい? ボクが助けに来たぞ!」


 ふふんと胸を張って少女が答えるそれを見た永戸は叫んだ。


(なぎさ)! 助かった!」


 瀕死のエイルを抱えた永戸が渚と呼ばれる少女に駆け寄る。


「危ないところだったね、ボクに感謝してよね、下手してたら死んでたよ」

「悪い、けど余裕がない。エイルを守るのを頼れないか?」

「怪我人を助ける慈善事業はボクの趣味じゃない、けど、守る必要がないくらい頼りになるメンツは連れてきたよ」

「何? それはどういう…」


 すると、隔離された街の中に新たな荒くれ者の集団が現れた。


「あれは……また敵⁉︎」

「いや…違うぞ、神癒奈君、彼らは…」


 新たに現れた荒くれ者は四課を助けるように戦闘に参加した。神癒奈は共食いでもしているのかと困惑するが、ユリウスは落ち着いた表情で見守る。


「"ナハトヴォルフ"、唯一四課の傘下で活動しているこの都市のギルドの仲間達だよ」

「仲間って……でもアレ完全に敵と同じ風貌ですよ⁉︎」

「まぁ仕方ない、彼らは裏路地に属する闇ギルドの者達だからね」


 闇ギルドのメンバー…だが味方らしい、そうして戦っている景色を眺めているとある男がこちらに近づいてきた。プレートアーマーをつけた銃を持ったサングラスの男だ。


「無事ですか! 隊長!」

「今は隊長ではなくて課長だよ、ジェフリー=ランツェル君」


 焦るように話す男…ジェフリーに対し、ユリウスは冷静に仕切っていた。


「良かった、吸血男爵の腕は落ちていないようですね」

「歳は取ったがね、まだまだ現役だよ、娘の渚君は元気にしてるかな?」

「ええ、この仕事が回された時、兄に会えると大喜びしてましたよ」


 そう言うと永戸のところにいる渚の方をジェフリーはチラリと見た。それに気づいた渚は手を振って返す。


「兎に角久々におにぃちゃんに会えて嬉しいよ〜、ねぇハグしてよハグ」

「ばかっ、このブラコンめ、戦闘中なんだぞ⁉︎」


 グリグリとハグを求める渚を永戸が止める。彼女の名前は陽宮(かげみや) (なぎさ)、永戸の唯一血のつながった兄妹で、ヘッドフォンがトレードマークで、彼と同じ黒い髪で、彼とは違う蒼い瞳を持った妹だ。

 若干甘えん坊だが、これでも闇ギルド、ナハトヴォルフのエースで、血の気の濃い性格をしている。


「で、アレが倒すべき敵なんだね?」


 渚がケープを翻しながらそう言う。それに対し永戸は頷いた。


「じゃ、いっくぞー!」


 勢いよく駆け出すと、両手に銃を持ち、射撃を開始した。右手にはリボルバーライフルを、左手にはショットガンを持ち、彼女は至近距離で銃を撃ちまくる。


「なんだこのクソガキは! ぶっ殺してやるよォ!」

「やれるものならやってみなよ!」


 ヤークトベアーの攻撃をひらりと宙返りして避けると、リボルバーライフルから弾丸を撃つ。それは再び頭部に命中すると炸裂した。だが、筋肉の鎧が攻撃をうけてもびくともせず、そこに奴は立つ。


「かった⁉︎ おにぃちゃんが苦労するわけだよ、でも負けないよ!」


 渚はライフルのシリンダーを開き、即座に別の弾を装填する。すると今度は剥き出しの筋肉の部分に向けて撃った。


「オアアアアッ!」


 弾は見事に内部で弾け飛び、筋肉を裂き千切るが、千切れたところからまた別の筋肉が生え、より強固な身体となった。


「うへー、回復どころか強化されるってマジ?」

「そいつの筋肉に下手に傷をつけたらダメだ! 出ないと余計にパワーが上がってしまう!」

「それ先に言って欲しかったな!!」


 永戸にそう怒ると渚はマチェットを取り出し、首を切ろうとする。が、首の方は強固な筋肉で覆われていて、弾かれてしまった。


「あーもう! なんの攻撃なら効くのさ!」

「…なら、筋肉を丸ごと切り取るぞ! 攻撃、合わせろ!」

「OK、シンクロアタックだね!」


 エイルを置き、永戸は渚と一緒にヤークトベアーの筋肉に向けて、それぞれ聖剣とマチェットを斬りつけた。


「体から切り離してやる!」

「ぶっちぎってやる!」


 2人の合わせた攻撃で、ヤークトベアーの胴体部がごっそりと切り離され、地に落ちた。


「よしっ! これで討伐完了…」

「いや…嘘だろ、渚、まだだ!」


 嫌な予感を察知した永戸は渚を抱えて下がった、すると、切り離された四肢の部分と、胴体の部分が独自に動き出し、新たに体が形成された。


「プラナリアかよ! 切っても二つに増えるだなんて!」

「そう言うこと言ってる場合か! なんとか応戦するぞ!」


 永戸と渚が、2人して二つに分離したヤークトベアーと対峙する。底のない戦いが繰り広げられようとしていた。


 ーーー


(あぁ……痛い……死にたくない……)


 ぼやけた意識の中、エイルはそう思う目の前では永戸達と交代したフィアネリスが叫んでいるのが聞こえていたが、何を言っているのかわからなかった。


(痛いのは……やだなぁ)


 力の入らない腕でフィアネリスに手を伸ばす。装甲戦闘装備も剥がれ、上半身はボロボロになっていた。


(……でも、立たなきゃ、みんな戦っているし)


 ゆっくりと体を持ち上げる。幸い蜘蛛の身体の部分はそこまで怪我はないようだ。


(やるなら……せめてあの怪物だけでも……道連れに……)


 爆薬のケースに手を伸ばすが、手が止まった。


 ー本当にそれでいいのか?ー


 ぼんやりとした頭でそう考える。

 いままでエイルは四課に来るまで普通の人生を送ってきた。適当に迫害されて、適当に暮らして、そうやって生きていくんだろうと思った。死ぬ時だってきっとあっさり死ぬんだろうとまで。

 けれど四課に入ってからは刺激のある毎日ばかり、少々辛いがこんな人生も悪くないなと思う事ができた。


 ーここで終わるのか?ー


 否、終われない、アズウルと対峙したあの時に感じた本当の恐怖に、神癒奈達は立ち向かっている。同じ四課として支えなければならない。


(……なら、答えは、一つ)


 最後の装備であるバトルアックス"アンダーカバー"を手に取り、チェーンガンの剥がれた前肢をくまなく動かして糸を編む。それは、ただの糸ではなく、アラクネの猛毒が仕込まれた赤い糸、それをバトルアックスに巻きつけた。


「エイルさん! 大丈夫なのですか⁉︎」


 ようやくフィアネリスの声がしっかりと聞こえるようになった。ぼんやりしていた思考も視界も今は鮮明だ。


「はい、永戸先輩を助けます、後は任せてください」


 そう言うと糸を射出し、永戸の後ろを追いかけた。


 ーーー


 ヤークトベアーと戦闘を行なっている陽宮兄妹はジリ貧になっていた。


「くっ!」


 筋肉が鋼鉄のように変わり、斬撃を行うのを永戸は寸前で回避するが、あまりの動きの速さに少しでもタイミングがずれれば死ぬところだ。


「しつこいなぁ! こういうのって、ボクの活躍でみんな助かって終わるってそう言う話じゃないの⁉︎」


 渚もぴょんぴょん飛び回って回避している。だが此方も有効打を与えられずにいた。


「もー仕方ない、こうなったらボクの力を解放するしか…!」


 渚が蒼白い光を放っていたその時だった、後方からものすごいスピードでエイルが飛んできた。


「エイル!」


 永戸が思わず声をかける。が、彼女はそれに目もくれずに二つの筋肉の塊に突っ込むと糸を吐き出して二つのそれをくっつけた。


「まずは強引に一つに戻す!」


 血と毒の滴る赤い糸を何度も飛ばし、ヤークトベアーの肉片を一つにまとめる、そうしてやつは元の姿の形に近い状態に戻るが、ここで、飛ばした糸の効力が出た。


「うぉアアア!」


 糸から出る猛毒の血が、傷から全身へと周り、肉体が痙攣し、糸のついたところから全身に毒が周り、溶けていく。


「能力の覚醒…エイル…お前!」

「先輩、攻撃するなら今です、一気に喰らいますよ!」

「あぁ!」


 エイルがバトルアックスを振り回しながら飛び上がると、猛毒のついたそれでヤークトベアーの肉を断ち、筋肉の鎧すらも溶かした。


「今です! 先輩!」

「渚! 行くぞ! 光を宿せ、イクセリオス!」

「うん! 魔弾よ、かの者を撃ち貫け!」


 渚が蒼白い弾丸を放ち、永戸が聖剣の光を放った。それらは真っ直ぐにヤークトベアーに飛んでいき彼の身体に命中すると、光と爆発が起きて彼を消し飛ばした。


「…やりましたね」

「やったな」

「これで終わり?」


 敵の首級を討ち取り、三人は一息つく、他の隊員と仲間達が敵を全て鎮圧したのも、丁度だった。

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