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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第十章 白竜の女王と最硬の盾
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思わぬ参戦者

「囚人部隊が全滅だと⁉︎ たった七人の兵士相手にか⁉︎」


第108支部の四課の課長は狼狽えていた。自分が抱えていた囚人部隊が全滅したことに。死刑囚とはいえ、自らが保有していた者達は殺しに関してはエキスパートと呼べる者達だった。

物量で彼らに勝っていたし、武器もそれなりに整えていた、禁忌扱いの能力者だっていた。それなのに、全て全滅したと聞いて、課長は驚く。


「くそぅ…死神部隊め……我らが処刑隊が負けるなど……!」

「課長! 大変です! 61支部の課長が今回の抹殺対象を連れてこちらに…!」

「何⁉︎ そう言われても、戦力はもうっ…!」

「ですが、あなたに直接会いたいと…!」


直後、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。そのノックが、ここの課長にとって、死神の持つ鐘の音に聞こえた。


「絶対に中に入れてはならん!」

「ですが…!」

「ならん! これは私の命令だ!」

「見苦しいね、ここまで来ると」


すると、ドアが蹴り一つでぶち破られ、その中にユリウスとリオーネが入ってきた。


「客人としてきたのに紅茶一つも出さないとは礼儀がなってないね」


ニコニコとした笑顔でユリウスはそう言い、ここの課長を前に礼をする。


「れ、礼儀だと⁉︎ 貴様! 私の部隊を潰しておいて、何を言うか!」

「もともと仕掛けてきたのはそちらだろうに、私はあくまで自己防衛に走ったまでだよ?」


ふーんと彼は真っ直ぐ立ち、ここの課長を見下す。


「独断専行による我々と依頼主の抹殺、イストリア本部や各支部からはクレームが殺到しているのだよ、そして今日、我々61支部四課に命令が下された」

「なんだ、その命令って……!」


震えて窓際まで追い込まれながら、課長は聞く、すると、ユリウスはニタリと笑い、答えた。


「君の抹殺指令が下された、世界の闇を切除する四課に、君のような乱暴者は必要ないと、本日をもって、第108支部異世界特別調査隊は一次解散が決定された」

「な……馬鹿な⁉︎」


課長は口をパクパクさせながら驚く、その後、再び、今度は隠しきれない恐怖を抱えてガタガタと強く震え始めた。だがそんな驚きをよそに、ユリウスは淡々と話を続ける。


「外には我々61支部の四課が各所で待機している、どこにも逃げられない、君はここで私に殺される……が、それでは少し面白みがない、そこでだ、君の処遇は今回の依頼主に委ねる事にした」

「それって…どう言う…⁉︎」


ユリウスがそう言うと、リオーネが課長の前に立った。


「アンタね、アタシを殺そうとしたのは?」

「ち、ちちち違う! 私は、お前を、い、いいえ、貴方様を殺そうとなど……!」


その瞬間、靴が肩に押し付けられ、翼を開き、リオーネの紅い瞳が課長を貫いた。


「そんな見え透いた嘘でアタシを騙すつもり? つまんない冗談を言うな!」


課長に向けてキックが炸裂し、彼は部屋の隅に飛ばされる。怯えた課長が目にしたのは、竜の怒りの瞳だった。


「危険と見た者は全て消す? 傲慢な人間らしい浅はかな考えね、それとも何? それらを従属させて自分は犬の飼い主気取り? どちらにせよ、不愉快だわ」


グググと彼女の姿が変わり、部屋中に広がると、巨大となった竜の瞳が課長を貫く。


「あ、あぁああ! どうかお許しください! 貴方様の怒りを買ってしまった事は深く反省しております、ですので、どうか私に慈悲を…!」

「バカね、今更謝ったって、取り返しはつかないのよ!」


瞬間、巨大な竜が課長に噛みつき、そのままばりぼりと骨の折る音をたて、飲み込んだ。

それを見た秘書は腰を抜かして泡を吹いて気絶した。


「……不味くて身体に悪い味ね、気に入らないわ」

「すまないね、君にこのようなことをさせて」

「いいのよ、アンタ達はアタシとの契約を全うしてくれた、それだけでも合格点だし、オマケに囮扱いはされたけど護衛までしてくれた。ここがどんだけ腐った職場なのかもよーーーーくわかったわ」


竜から元の姿に戻ると、リオーネは腰に手を当て、胸を張ってはぁっとため息を吐く。


「でもまぁ、そこで戦う人達の強い思いは同じくらい伝わったわ。支援金の件、喜んでサポートしてあげるわ、あの狐の国の件もね」

「それは良かった、そう言われると、我々も嬉しく思うよ」

「けど、サポートするには条件があるわ」

「条件? それはどんなかね?」


ユリウスが聞くと、リオーネはふふふっと笑い、指をビシッとさしてこう答えた。


「アタシを、この四課の隊員にしなさい!」

「は?」

《《《は?》》》



「はぁああああああああ⁉︎」



ーーー


翌日、仕事の時間となり、いつものように四課の隊員が出勤してくる。


「よーっす、お疲れ様っす」

「お疲れ、桐枝ちゃん」


今日は学校が休みなのか、普通の時間に出勤してきた桐枝をコリーが出迎える。既に四課の隊員達は出勤済みでそんな中桐枝はカバンをロッカーに押し込み、椅子に座る。


「んで……なんでリオーネさんがまだここにいるんすか⁉︎」


至極真っ当な桐枝のツッコミが炸裂する。四課のオフィスには新たにリオーネ用のちょっと豪華な机が置かれ、昔からいたかのように彼女が座って事務仕事をしていた。


「うるさいわねぇ、昨日言ったとおりよ、アタシは四課に入る、そう言う決まりでしょ?」

「決まりって⁉︎ そんな軽く言って入れるもんなんすか⁉︎」

「入ったわよ、もうここのデータベースにはアタシの名前が刻まれてるわ」

「試験や検査は⁉︎」

「検査はあっても試験なんてする必要ないじゃない、アタシは竜の女王よ?」


桐枝の言う言葉に面倒そうにリオーネは返していく。他の隊員も気まずそうに二人のやりとりを見ていた。


「大体、アンタ達はいくらなんでも命を軽視しすぎよ、依頼主のアタシを囮に使うわ、盾役1人に護衛を任せるわ、いつか死人が出てもおかしくないわ」

「ははは、それは面目ない…」


四課の課長であるユリウスも、窓の外を見てどこかよそよそしい態度でそう言った。


「それに、この部隊、政治的にも弱い立場にいるそうじゃない? 普段やってることって、命令一つで死にに行けと言われてるようなもんよね? 今までギリギリ生き残って来たとしても、そんなんじゃいつか破綻するわ、だからアタシが直々に強力なバックとしてつく、それなら簡単に死ねと命令されることも無くなるだろうし、いいわね?」

「面目もないねぇ」


再びよそよそしい態度でユリウスが言う。

だが実際リオーネの言ってる事は事実だ。四課は切り札となるジョーカーのカードであると同時に命令一つで生き死にが決まるような部隊だ。このまま戦い続ければいつか誰かが死ぬかもしれない。

彼女は自分が所属することでそんな風潮になるのを阻止しようと決めたのだ。


「それは……そっすけど」

「だから、アタシが入る、心配はいらないわ、アタシだって禁忌の1人、戦いのやり方なら心得てる、アンタみたいなへっぽこな学生1人とは年季が違うのよ」

「うぐ…」


へっぽこと言われ、桐枝はぐうの音も出なくなる。

そんな中、オフィスにライがやって来た。


「おはよう、みんな」

「おはようございます、ライ先輩!」


重々しい盾を壁にかけ、彼は椅子に座ると、コリーからコーヒーを受け取る。すると、面目ないと呟いていたユリウスが話しかけて来た。


「ライ君、そういえば、君の能力の変化についてどうなったのかな?」

「かなり大きく変化してましたよ」


ライは今日結果が出たデータを四課のメンバーと共有する。


「簡単に言えば、まずは防御性能が増しました、単純な攻撃への防御力だけでなく、バリアを貫通する特殊な攻撃や侵食などへの耐性が付きました。自身の防御力もバリア並みに強化されてます。そして、最大の強化は攻撃を撃ち返すカウンター能力、私さえ生きてれば、敵がした攻撃をそのまま返すことができる、と言うことです」

「ふむ……かなり大きな力となったね…これも、禁忌に触れる力とも言うべきか?」


ユリウスはふむ…と顎に手を添えて考える。ライの防御力の強化と新たな力はこの先戦う上で便利になっていくであろう、そう考えた時であった。


「ライ、アンタも、盾役なのは分かるけど無理はしないでよね! 英雄になるのはいいけど、死んで英雄になるのは違うから!」

「そうだね、善処するよ」

「軽く言うんじゃないわよ! 本気で心配してるんだから!」

「ははは……分かったから、レディーが大声を出さない」


自分の為に怒るリオーネに対し、ライは困ったような笑顔で答えた。だが彼は、リオーネと対話し、こんな日常を己の盾で守れる事を、誇りに感じていた。

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