異端同士の戦い
永戸と神癒奈が巨漢の死刑囚と真っ向からぶつかる。
相手は典型的なパワー型で、能力も衝撃波と単純だ。だが、相当練り上げられているのか、衝撃波は攻撃だけでなく防御でも使われている。その為、剣で斬りつけようとしても傷つくことがなかった。
「唯一まともに傷つけられるとしたら神癒奈だけか…!」
「でも、すぐに回復されますよ!」
巨漢の攻撃を回避しつつ、2人は攻撃を入れる。
攻撃力なら向こうのほうが高いがスピードはこちらが完全に上だ。
神癒奈が巨漢を斬りつけてダメージを与えるが、すぐに再生されてしまう。永戸に至っては攻撃が届かない始末だ。
「零さえ使えれば…!」
零さえ使えれば、永戸も彼に対抗することができる。しかし、先程から零の発動をしようとしていたが、その度に他の兵士に邪魔されては発動できなくなっていた。
「お前の能力は把握済みだぜぇ? 能力者を殺す能力、使わせはさせねぇ、隊員が何人犠牲になってもだ!」
「くそっ!」
他の隊員が命がけで永戸を押さえ込む。零の発動する寸前でグラップルガンで彼の手を縛り付け、攻撃のチャンスを消していた。
「そして、ガラ空きだぁ!」
「っ!」
動きが縛り付けられた永戸に向けて大剣が振り下ろされるが、神癒奈がその攻撃を防いだ、その間に永戸は縛り付けた紐を剣で断ち切り、離れる。
そして、空いた隙を狙って、神癒奈が一撃を入れた。
巨漢は再び真っ二つになるが、やはり即座に身体が再生される。
「痛えんだよぉ!」
『陽炎!』
巨漢の攻撃から神癒奈が焔の幻で回避し、2人は周りにいる兵士と巨漢を睨む。
「あいつら、俺が零を発動させようとするとグラップルで邪魔をしてくる…!」
「だったら、私がなんとかします!永戸さんはアレの相手を!」
永戸は巨漢に向けて、神癒奈が敵兵数人に向けてそれぞれ走り出した。
「お前如きが、俺の衝撃波を防ぎ切れる筈がねぇ!」
「やってみせるさ!」
飛んできた衝撃波を零で打ち消し、近距離での斬り合いになる。永戸はガンブレードと聖剣で何度も斬りつけるが、やはりそれも衝撃波で防がれた。こいつを倒すには、強力な零の一撃を叩き込むしかない。
「邪魔はさせません!『劫火!』」
数人の死刑囚が神癒奈に襲いかかる。神癒奈はその攻撃を全て陽炎で回避し、辺りを焼き尽くす爆炎を放った。その焔は神癒奈から大きく広がり、死刑囚達は焔に巻き込まれないよう空中へ逃げる。
「逃がさない!『狐火!』」
神癒奈が追尾性の狐の焔を放つと、焔は敵まで追いかけていき、身体を覆い尽くし、炭になるまで燃やし尽くした。だが、残った死刑囚が神癒奈に向けてグラップルガンを放つと、彼女の四肢が縛り付けられてしまう。
「このっ…!」
彼女が力を込めて引っ張ろうとしても、死刑囚が装備していた飛行用のジェットブースターで体を逆に引き伸ばされてしまう。
「このまま体がちぎれてしまえ!」
「そうは……させ…ません!」
そっちも炎で飛ぶならと神癒奈は四肢から焔を噴射して強引に引っ張った。
「せぇ…のぉおっ!」
全力で紐を引っ張り切り、彼女が腕を振り上げると、敵は空中へと放り出される。
「これで終わりです!『口火!』」
彼女が指を鳴らせば、縛り付けられていた紐に火が付き、そこから線を描いて火が走っていくと、紐の先で爆発が起き、敵兵が全て燃やされた。
「永戸さん! 今です!」
神癒奈が敵兵を始末した所を見て、永戸は巨漢にゼロ距離まで近づく。
「やらせるかよぉ!」
巨漢が大剣を振り下ろすが、永戸は持っていたガンブレードを上に向けてブーストさせ、大剣を弾き返す。そして、手から剣を離すと、それを巨漢に向けてかざした。
「零に還れぇえええっ!」
彼の手から赤黒い稲妻が迸り、巨漢の体を貫く。ダメージはないが体に纏っていた衝撃波が消え、彼は元の人間の状態の力に戻り、動きが遅くなった。
「トドメだぁあああああ!」
腰から取り出したパイルブレードを突き立て、巨漢の胸元に射出する。それは、巨漢の肋骨を砕き、心臓を綺麗に貫いた。
「へ…へへ…やっぱ…お前は……すげぇや…」
巨漢は力尽き、その場に立ったまま動きを止める。
落ちた剣を手に取り、ふぅっと息を吐くと、永戸は近づいてきた神癒奈と拳を合わせた。
「やりましたね」
「あぁ、上出来だ」
ーーー
一方、フィアネリス、桐枝、エイルの三人の方でも、戦いは苛烈になっていた。
「アンタ達なんかにアタシが倒せるわけないでしょ!」
悪魔の複数の分身から来る攻撃を三人でただひたすら防ぎ続ける。武器は鎌だけだが、魔法による援護砲撃もあり、攻撃に転じる暇がない。
「このままじゃジリ貧っすよ!」
「でも…守るだけで精一杯…!」
「……」
桐枝とエイルが狼狽える中、フィアネリスは守りながら静かに目を逸らし、辺りを見渡す。攻撃してくるのは同じ姿をした分身ばかり、全知を使用してそれらすべての情報を探る。そして、数々の分身の中から、本物を見つけ出した。
(が、しかし、私が動けばこの2人の防御が崩れてしまいます)
フィアネリスはすぐに攻撃に動きたかったが、今彼女は2人の防御も担っている状態、ビットにシールド、そして波動砲もすべて防御タイプに変更している。2人の防御力は現状の装備では高くはない、そんな中で動き出せば2人を危険に晒す事になる。そこでフィアネリスは、もう1人、動ける人にメッセージを送る事にした。
(賭けですよ、私の情報が届けばいいのですが)
遠くで身構えている"彼女"に、フィアネリスは口パクでメッセージを送る。
それを見た彼女は人が点にしか見えないような距離から狙撃銃を構え、フィアネリスのメッセージ通りの目標に向けて撃った。
遠くから聞こえる発砲音と共に弾丸が真っ直ぐ飛んでいき、的確に目標を貫く。
「あぁああああっ!」
的確に胸元を貫かれ、分身であったはずの悪魔は地面に落ちていく、どうやらこれが本体だったらしく、他の分身はゆらめく影のように全て消えた。
「よくやってくれました……コリーさん…!」
フィアネリスが彼女を褒め称えると、通信機越しにこんな声が聞こえてくる。
『フェイタルポイント着弾確認、オーダー通り当てましたよ、先輩!』
「はいな! エイルさん、桐枝さん、攻撃に移りますよ!」
「はい!」
「了解っす!」
地面に落ちて血を吐く悪魔に対し、三人は攻撃に転じる。
「調子に乗るんじゃないってのよ!!!」
だが、悪魔も弱点を貫かれても能力を行使できるのか、体をより凶悪に変化させ、応戦する構えをとった。
三人が同時にバトルアックス、聖剣、槍を振るうがその全てが鎌と硬く硬化させた腕で塞がれる。しかし、四人目となるコリーの狙撃が飛んできて、硬い皮膚を砕く。
「ちぃっ! 4対1じゃ分が悪い!」
「それがさっきまで分身使ってたやつのセリフですか?」
エイルが牽制用のサブマシンガンを連射しながらバトルアックスを振り下ろし、鎌ごと悪魔の腕を切断する。
「くそぉおおおっ! アンタ達! こいつらを止めろ!」
「「「はい!」」」
「雑魚が固まって勝てるとでも!」
悪魔の指示を受け、下級の死刑囚が集まり、銃火器を彼女達に乱射する。それをフィアネリスが盾とビットで防いだ。
「悪いけど、邪魔するなら容赦しない!」
フィアネリスの後方から桐枝が聖剣を構え、溢れんばかりの光を解き放ち、彼女が前に出ると同時にそれを振り下ろした。膨大な光が死刑囚を焼き、逃げようとしていた悪魔もその光に焼かれる
「ぎゃあああああ! 何よ、この光はぁ! 体が、体が溶けるぅうううっ!」
敵を切り裂く裁きの光を受け、悪魔の体は焼かれ、凶悪な姿から溶けて、元の姿に戻る。そして、光が消えた途端にフィアネリスが近づき、悪魔に槍を突き刺した。
「綺麗さっぱり消えてなくなってください、ギガ波動砲!」
最後の一撃を入れ、悪魔は粉微塵に吹き飛ばされた。完全に敵を倒したことを確認するとフィアネリス達三人は振り向いて無事を確認し、ハイタッチをした。
「連携…完璧でしたね」
「カッコいい技決めれたっすね!」
「ええ、よくできました」
ーーー
そして、リオーネを守るライの方では、ライは彼女達をバリアで守りながら盾で全ての攻撃を捌きつつ、シールドバッシュで次々と敵を倒していた。だが、敵が複数の中、たった1人で戦っていた為、どんどんボロボロになっていった。
「もういいわ! そんなにやらなくても! 後はアタシが!」
「そうですぞ! 女王の命令を聞くのだ!」
「いいや、命令は聞かない、四課たる私のプライドもかかっているからな」
傷だらけになりながらも彼は盾で全てを防ぎ、時には腰に携えた剣で敵を斬りつけ、次々に敵を倒していた。
「ぐっ…」
が、度重なるダメージの影響か、彼は地面に膝をついてしまう。
「今だ! 全力攻撃で奴らを盾ごと殺してしまえ!」
死刑囚達がそう言うと、ライに向けて魔法や銃撃が一点集中で飛んできた。
「くっ…うおおおおおおっ!」
口から吐く血を飲み込むと、ライは立ち上がって盾を構え、その前にバリアを何層にも展開した。
敵の全火力がライに向かってくる。攻撃を受ければ、バリアが一枚ずつ割れていく。
「耐えてくれ……!」
また一枚とバリアが破れ、残すバリアは一枚となった、これを破られたらリオーネ達にも被害が及ぶ。ライもすでに限界だった。
ぐらっと体が揺れ、意識も曖昧になりかけるが、その時、永戸の姿を夢想した。
「まだだ…まだ、やられる、ものかぁああああっ!」
瞬間、バリアが強く輝き、彼らに来るすべての攻撃が弾き返された。
「なっ…馬鹿な…この攻撃を、防いだ、だと⁉︎」
「返すぞ、お前達の、攻撃を!」
ライが力強く盾を構えると、その盾から、拡散するビームが放たれ、ライに攻撃をした全ての死刑囚がそれに焼かれた。
全ての敵を倒し、屋敷の中は静かになる。フィアネリスの情報から全ての敵が倒されたと知ると、ライはふっと静かに笑い、倒れかけた。それを、誰かが支える。
「……すまないな、永戸……私は、君には及ばないようだ」
「何言ってんだよ、目標は無傷だ、今回はお前がMVPだよ、英雄」
「……そうか、君にそう言われると、嬉しいよ」
再び微笑むと、今度はリオーネが駆け寄ってくる。
「何無茶してんのよ、このバカ!! 盾しか能がないアンタが、一丁前に敵全部倒してんじゃないわよ! 心配したんだから…!」
倒れそうなライの体を起き上がらせてリオーネが涙目で言う。それを見たライは困ったように微笑むと、リオーネの頭を優しく撫でた。
「…そうだな、私も、傷つきながら守るだけではダメだな、でないと、大切に思ってくれる者に心配をかけてしまう」
そう言うと、ライは回復用のアンプルを打ち込み、自分で立った。




