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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第一章 絶望を知るヒトと希望を夢見るキツネ
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うごめく死体の山

 巨大な影を追って、調査団のキャンプへ走る2人。キャンプへ近づくごとに、巨大な影の姿も明確に捉えられるようになってきた。


「たくさんの死体が、重なって、動いている?」


 そう、その巨大な影は、先程の獣に殺された動物の死体の山だった。醜い肉の団子のように重なったソレは、一つの巨人となって、キャンプの中で暴れて回っている。それを見た2人は、背中に嫌な感覚が走った。


「ちくしょう! この前に引き続きまたとんでもないのが相手かよ!」


 武器を構え、毒を吐きながら、2人はキャンプに着いた。そこでは、やはりあの巨大な怪物が暴れまわっていた。テントは潰され、調査用の機材も壊され、そこで動いていた人々は、あちこちに倒れている。とてもまずい状況だった。


「危ないっ!」


 怪物が逃げ惑う調査員を襲おうと手を振り上げたのを見て、神癒奈は全力で駆け出し、飛び込んで調査員を抱え、そのまま振り下ろされた手を避ける。


「あの怪物は一体何ですか⁉︎」


 間一髪助かった調査員に、神癒奈は聞く。


「死体を解剖していたら、あちこちの死体が急にうごめいて……一つになって……!」


 恐怖に怯えながらも話す調査員の話を聞いて、神癒奈は唖然とする。死んだ動物の死体が、積み重なって、一つの巨大な怪物になった、そんな話が信じられなかったからだ。だが現状、あの怪物を見るに、その話は嘘のようには思えず、恐怖でおかしくなりそうになるが、信じるしかなかった。


「とにかく、貴方は他の調査員を連れて逃げてください! ここは私たちで何とかします!」

「わかった!」


 怪物が暴れるキャンプから一人の調査員をにがし、神癒奈は怪物へ向けて刀を構える。永戸も、神癒奈に追いついて、彼女とは反対の場所で剣を構えた。


「この感覚、さっきの魔物と同じか? 同じやり方で行くぞ!」

「はい! 復活できなくなるまで攻撃を続けるんですね!」


 死体が積み重なった巨体を見て、先程の獣のように、そう簡単には殺せないと察した二人は、「確実に死ぬまで攻撃をする」とさっきと同じやり方で戦うことにした。

 巨大な怪物の体の表面についた瞳が、ギョロリと一斉に二人を注視する。鼻を刺すような死体の汚臭を放ちながら、おぞましくうごめく死体の山は、まず先程邪魔をした神癒奈に襲いかかった。


「くる!」


 怪物がぐちょぐちょと血をたらしながら神癒奈を掴もうと手を伸ばすが、彼女はすぐに回避し、そのまま手の上に乗って刀で腕を斬る。腕から大量に血が溢れ出るが、死体が動いて傷がすぐに塞がり、腕はすぐに元の形に戻った。


「普通に攻撃しても無駄だ! 別の方法でやらないと死なないぞ!」


 永戸も怪物の背中に手をかけ、上へ駆け上がりながら背中をどんどん切りつけるが、肉や目をいくら切り刻もうとも、すぐに肉はつながれ、目は新しいものが表面に現れていく。

 "ただ斬るだけでは殺せない"、二人の中で共通の認識が生まれ、ならばと今度は体を吹き飛ばしてはどうかとそれぞれ拳銃と炎を構える。


「唸れ!」

『絶火!』


 大型の拳銃と、神癒奈の手から、弾と炎が放たれ、怪物の身を抉り取り、穴を開ける。どうやらこれは効いたらしく、怪物の身体が少し削れ、大きさが少し小さくなった。


「そうか、身体から死体を引き剥がすんだ! なんでもいい、奴から身を削いでやれ!!」


 敵の攻略点を見つけた永戸は、剣を持って接近すると、凄まじい速度で怪物の脚部を切り裂き、足から死体を削いでいく。すると、効果があったのか、怪物は細くなった足で自重が耐えられなくなり、前へ転んだ。


「それなら、その体ごと吹き飛ばすまでです!『大花火!』」


 永戸の攻撃を見て対処法を知った神癒奈が、大きな炎の弾を怪物にぶつけると、爆音と共に炎の弾が炸裂し、怪物の体をバラバラに引き裂いた。上半身が綺麗に抉り取られる形で怪物はダメージを受けるが、なくなった部位をなんとか取り戻そうと、先ほどより小さくなりながらも四肢を回復させる。


「ーーーーっ!!!」


 怒るように怪物は全身を震わせながら雄叫びをすると、身体から刃のついたドス黒い触手をいくつも生やし、二人へ攻撃を始めた。


「まだまだアイツ元気そうだぞ!」


 触手による斬撃を必死にさばきながら、永戸は次の手を考える。回避するだけなら容易だが、これほどの数の触手を相手に接近して攻撃は難しいと彼は考える。隙を見て剣で触手を切りおとしもしているが、すぐに新しいのが生えて、結局状況は変わらずだった。


「でも、このままだと私たちやられますよ⁉︎」


 神癒奈も触手を上手く避けているが、二人は徐々に、押し込まれ始める。手数の多さが違う。二人、それぞれ二本の剣と刀では十本以上ある触手の攻撃をさばききるのは限界があった。


「……なら、一か八かかけてみるか! 神癒奈! 俺が攻撃をなんとかする! お前はさっきの術をもう一度撃ってくれ!」

「あの数を一人でやる気ですか⁉︎」

「このままだとジリ貧なんだろう⁉︎ やるしかないだろ!」


 額まで迫った触手を、片手の拳銃で吹き飛ばしながら、永戸は神癒奈の前に立ってそう言う。確かに、このままやられるよりは、リスクを犯して倒せる可能性にかけてみるほうがいい。そう思うと、神癒奈は、もう一度、大花火を放つべく手に炎を出し、収束を始める。


「クソッタレな肉団子の触手なんか、全部いなしてやるよ! うおらぁあああああっ!」


 罵声を浴びせながら、永戸は迫り来る触手を、一人で切り落としていく。英雄殺しと呼ばれるだけあって、彼の剣戟はすさましく、襲いかかってくる触手を、見事にさばいていくが、やはり多勢に無勢と言うべきか、少しずつ、刃が身をかすめていく。


「まだか!!」

「とびっきりのをいきますから、もう少し待ってください!」


 神癒奈に触手がふるわれそうになっても、ギリギリで永戸が触手を切り落として守っていく。彼の防御に守られながら、神癒奈は、先ほどよりも強力な威力にすべく、炎を溜め込んでいく。

 対して、うまく攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか、怪物は触手の攻撃を激しくし、更に、左手を構え、二人へ向けて殴ろうとした。


「させるかぁああああ!」


 一気に迫り来る攻撃を見た永戸は、まず自分に襲いかかってきた触手全てを、剣で斬り刻むと、そのまま殴りかかってきた拳へ、パイルを突き立てた。トリガーが引かれると、爆音とともに鉄針が放たれ、怪物の拳は、肉が裂けて弾け飛ぶ。


「神癒奈ぁっ!!!」

「言われなくても! これでおしまいです!『大花火!』」


 パイルの余剰熱の蒸気を浴びながら、もう限界だと永戸が彼女の名前を呼ぶと、待ってましたと言わんばかりに、神癒奈は先ほどよりも威力の増した炎の砲弾を怪物にぶつけた。文字通り、花火の如く炎が炸裂し、死体の塊であった怪物の上半身を粉々に吹き飛ばした。

 ぐちゃりと降ってくる死体の雨と、ドロドロと溶けて消えていく怪物の体を見て、流石に死んだだろうと思うと、永戸は疲れのあまりがっくりと膝をつく。


「は……ははは、やったぞ、なんとか、勝てた」

「本当にお疲れ様です」


 ひきつった笑顔でなんとか平静を保つ永戸に、先程の攻撃を防いでくれたお礼に回復薬を渡す神癒奈。ありがたく頂くと永戸はそれを受け取ると、瓶の蓋を開け、口に飲み口を咥え込んだ。


「もう動きませんよね?」

「流石にもうないと俺は思いたい」


 本当に動かないのだろうかと神癒奈は刀の鞘で死体をつついてみる。だが、全身を丸ごと吹き飛ばしたのは正解だったのか、どの死体も動かず、怪物も死んだと二人は判断した。


「でも、どうして死んだ動物が集まってこんな風に動いたのでしょう?」

「さぁ? ただこの感じだと、突然変異とかそう言うありきたりな理由ではなさそうだな」


 はぁああっとため息をつきながら、永戸は回復薬を飲みきる。体についた傷はみるみる回復していき、彼の疲労も消えて、楽になった。


「まぁ、安全も確保できたと思うし、調査団の奴らに聞きに行こう、何か知ってるはずだ」

「そうですね、聞きに行きますか」


 傷が回復したのを見て、永戸は立ち上がると、生きている調査員を探しに歩き出す。神癒奈も、一瞬だけ振り返って死体を見たかと思うと、そのまま永戸を追いかけて歩いた。

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