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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第十章 白竜の女王と最硬の盾
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いつもと違う活動

「…」


リオーネが視察に来て、最初に行われた作業は事務仕事だった。


「何やってるの?」

「各世界の状況の整理だよ、と言っても、他の調査隊からのデータをまとめてるだけだけどね、私達はこれらの情報をもとに、何か起きたら異世界に派遣されるんだよ」


ライはそう説明すると、試しにリオーネに資料を見せる。そこには、各世界の生物や国家情勢、転生者のリストなんかが挙げられていた。


「へぇ…ここの情報部ってなかなかやるのね、いろんな情報が載ってるわ」

「もっと深掘りすると外部の人には見せられない情報になるけど、これくらいの小さな資料なら見せられるからね」


リオーネから資料を返してもらい、ライは資料整理を続ける。そんな中、コリーが飲み物を用意してきた。


「皆さん、飲み物を用意しました!」


そう言ってはコリーが一人一人に飲み物を渡していくが、リオーネには紅茶が渡された。


「ありがと、気が効くじゃない」

「えへへ、どうもです」

「紅茶も美味しいし、気に入ったわ、ウチの執事のエイザークと変えてあげたいくらいよ」

「女王様、お言葉ですが、私は代々貴方の血筋に支えてきた竜、簡単に変えるなどとおっしゃらないで頂きたい」


あーうっさいうっさい! と執事のエイザークに向けて威嚇するリオーネを見るコリー、ちょっと可愛い猫みたいと思ったが、それを言ったら何されるかわからないものなので言わないことにした。


「けどアンタ達特殊部隊なんでしょ? 武器を持って戦ったりはしないの?」

「勿論戦う、が、そうそうそんな依頼なんてこない。四課は何せ異常事象の処理部隊だからね、滅多な事では動く事はないんだよ」

「あんなバカでかい武器を持ってるのに?」


リオーネは壁に立てかけてある全員の武器を指差しライに聞く。それを見たライは頷いた。


「あぁ、基本的にはイストリアの便利屋、あんな大層な武器を戦いで振るうのは依頼が来たときだけだ」

「イストリアでも恐怖される死神部隊とは聞いていたけど、意外と下働きしてるのね」


ふむふむとリオーネは頷いて周りを見渡す。みんな資料やEフォンのデータを眺めては情報をまとめていた。ふと、神癒奈の見ていた資料を見かけると、彼女は動きを止める。


「ん、ここのデータ、ちょっと違うわよ」

「あっ本当です。ありがとうございます」

「しっかりなさい、アンタ達のデータが現地民の命の行方を定める事になるのだから」

「そうですね、すみません」


どう言うことかリオーネが資料に口を出すことができた。


「ふむ…どこでそのような情報を仕入れたのかい?」


ユリウスが疑問に思い、リオーネに聞く。外部の者がイストリアの資料について知ってるのは意外に思えた。


「どこって、ここの辺りはアタシの国の自治区に近いからデータもある程度は知ってるのよ」

「とはいえ、イストリアの専門の資料を読み解くとは、いやはや恐れ入るね」

「当然よ、竜族の女王として、自治する国々やいずれ関わる国に対しては知っておかないと」


ふふんと胸を張りながらリオーネはそう答える。それを見た神癒奈はちょっと頼もしいかもと思った。

ふと、リオーネは四課の者達が処理している資料の量を見ると嘆く。


「…にしても、この課にこれだけの資料の処理はいくらなんでも無茶よ、窓際仕事にも程があるわ」

「ほっほっほ、でも我々は普段何もする事はないからね、こういう雑務も押し付けられがちなのだよ」

「だからと言って他の部隊の仕事を押し付けられるのは理不尽よ、ある程度関係のある仕事だけに改善した方がいいわ」


リオーネの発言に四課のメンバーはおおーっと感心する。小さな体格の割にしっかりしている、竜の女王様を伊達にしている訳ではなさそうだと感じられた。


「分かった、上にそう申請しておこう、他でもない協力者の意見なら上層部も首を縦に振ってくれるだろう」


にっこりとユリウスは笑う。彼にとっても仕事が減る事は嬉しい事らしく、どこか気分良さそうに紅茶を飲んでいた。

そんな風に、オフィスでの事務仕事は進んでいった。


ーーー


いつもの仕事の一つでもあるボランティア、それにもリオーネはついてきた。

今日も炊き出しの仕事で、四課の隊員全員が炊事をしながらあちこちで住民達と接触するのを、リオーネは見守る


「アンタ達ってこんな小さなこともやるのね」

「これも仕事のうちさ、ただのボランティアに見えても、現地住民から情報を得たり、周辺の地帯の捜査も絡んでるからね」


ライがスープを作ってるのを、リオーネは横目で見ると、周りを見渡す。


「狐のお姉ちゃんだ! お姉ちゃん! 遊ぼ遊ぼ!」

「はい、でも、もう少ししたらご飯ができますから、その時までですよ」

『はーい!』


住民の子供達と仲良く接する神癒奈、あれじゃ完全にマスコットねとリオーネは思う。

だが、それぞれの隊員は役目を全うしていた。永戸達人間組は料理をし、神癒奈とエイルは二人で子供の相手、フィアネリスは現地住民からの悩みを聞いていた。


「そこのお姉ちゃんも遊ぼ!」


リオーネが振り向けば、神癒奈達と遊んでいた子供が手を引っ張っていた。どうしたらいいかとリオーネは困惑するが、はぁっとため息を吐くとその手を取った。


「しょうがないわね、アンタ達の遊びに付き合ってあげるわ、ちょっとだけよ」


優しい笑みを見せ、子供達と遊ぶリオーネ、それを見た課長のユリウスは、お目付け役のエイザークに聞いた。


「よいのですか? 女王様をあのようにしてあげて」

「それが女王の意思ならば我々は構うことなどございませぬ。あのように寛大な態度で庶民と遊ぶ事も、女王としての責務でもありますゆえ」

「しっかりした女王であるのですね」


子供達と遊んで笑顔を見せるリオーネを見ると、エイザークはどこか誇らしく、ユリウスはうんうんと納得したように頷いた。


ーーー


ボランティアの活動も終え、四課は帰路にたった。いつもより狭く感じる装甲車に全員が乗り、ミズガルズへの道を走る。


「今日は有意義な時間を過ごせたわ、アンタ達の活動も、少しだけわかったわ、でも、支援金に関してはまだ決めちゃいないわ」

「決めるのはゆっくりで構わないよ、こちらとしては、我々の活動を見守ってくれる方々がいるだけで願ったり叶ったりだからね」


揺れる車内で、リオーネは落ち着いた様子で答える。ユリウスも流石にこの程度の活動では頷かないのはわかっていたのか、窓の外を見ながら答えた。


「にしても狭い車ね、アンタ達ってほんっとうに貧乏な活動をしてるのね」

「個人のスペックに頼りきりだから仕方ないさ、元々存在が秘匿された部隊でもあるし」


ライがそう言うとリオーネはまたため息をついた。これは課の方針に関わる問題ねと内心思ったその時だった。


「……? 何よアレ、なんかこっちに向いているけども」

「アレ? アレとは一体…?」


リオーネが指差した先を見て、ライが見たその時だった。見えたのは何かをこちらに構えた複数の人。天体望遠鏡みたいな巨大な筒のようなものをこちらに向けていて、まるでこちらを狙っているような…。


「アレはロケットランチャーだ! 課長! 私達は今狙われてます!」


ライがそう言った瞬間だった。数人が構えたロケットランチャーから砲弾が放たれ、四課の装甲車に命中、強烈な爆風で車が転がった。


「くそっ! なんなんだ!」

「め…目が回りました!」


ひっくり返って天地が逆さまになって中のメンバーは大混乱。ライはシートベルトをすぐに外し、リオーネを抱えて窓の外を見る。ロケットランチャーの次の砲弾が装填されつつあるのが見えた。


「全員、この車から退避するんだ! まずはリオーネ女王と使者エイザークの安全を第一に考えなさい!」


ユリウスの一言でメンバー全員が慌てて車から出ようとする。


「シートベルトが外れませんっ⁉︎」

「だーくそっ! 何やってんだ!」


神癒奈がシートベルトを外せずにわちゃわちゃしてると、先に降りた永戸がナイフでシートベルトを無理矢理断ち切り、神癒奈を連れて外に出た。その直後、再び飛んできたロケットランチャーで車は炎を上げながら吹っ飛ぶ。


「一体どうしてこんなことに⁉︎」

「分かるかよ! 戦闘準備!」


各々が武器を取り出して近くの岩場に隠れる。すると、砲弾が飛んできた方から人が武器を持って走り込んできた。


「エイル君とコリー君は援護射撃! ライ君は2人の護衛を! 永戸君と神癒奈君とフィアネリス君、桐枝君は私と共に前衛を務めてくれ!」

『了解!』


戦闘開始の合図がされ、ユリウスの指示と共に全員が動き出した。

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