止まらなかった憎しみ
ロボットの攻撃を掻い潜りながら、フィアネリスは交戦を続ける。
「しつっこいですね! そう言うの、嫌われますよ!」
フィアネリスはビットをソードモードに変更すると、飛ばして装甲を切り破る。分厚い装甲が剥げ、ロボットの中身が出てきた。
「そこです!」
ロボットに組みつくと、槍を突き刺し、光子バルカンを存分に叩き込んだ。内部から破壊され、ロボットの脚部は破損し、その場に立ち往生する。だが、組みついたフィアネリスを振り払うと、レーザーを撃ってきた。
「ふっ!」
レーザーを華麗にステップを決めながら回避し、今度は波動砲を撃つ。通常威力の波動砲がロボットの片腕を破壊し、壁に叩きつけられる。
「トドメ、参ります!」
波動砲からパイルバンカーに変更し、真っ直ぐにロボットに飛ぶ、もう片腕の接合部分に盾でタックルすると、装甲に杭を突き立て、パイルバンカーを撃った。それは装甲ごと肩を貫き、肩を粉砕した。同時に壁からロボットが外へと落ちていき、フィアネリスが杭を引き抜いて下がると、ロボットは沈黙した。
「大型目標撃破、他の方は?」
敵を倒したフィアネリスは他の状況がどうなってるか様子を見る。
「今絶賛応戦中っすよ!」
「潰しても潰してもアリのように湧いてきますねぇ…儚いですねぇ…」
「非殺傷弾の弾がもう切れる! エイル先輩、サブマシンガンください!」
「はいっ」
桐枝とエイルがそれぞれ剣とバトルアックスで斬りかかる中、コリーはエイルからサブマシンガンを受け取ると、撃ちまくって敵を倒していく
「敵の装備が固くて倒し切れない! このままじゃジリ貧だよ!」
なんだかんだで爆弾が防護ベストがわりになってるのか、なかなか一人一人を倒し切れない。そこでとエイルは腰のポーチからスタングレネードを取り出した。
「目を隠して…!」
ピンを抜いて投げた途端、四課と三課は一斉に目を隠す。瞬間、閃光に包まれ、暴徒達の動きが止まった。
「なんでもいいから頭を殴打してください…! 気絶させるんです!」
そう言うとエイルはバトルアックスを横に持って振り回し、暴徒を気絶させる。コリーもサブマシンガンを頭部に狙って撃ち、桐枝は聖剣エルメイルで叩いた。
そうして対処していくと、あっという間に暴徒達は制圧される。
「ゾンビか何かっすか……意地でもこの暴動を成功させたかったなんて」
「でもこれで……ひとまず仕事は終わりですね」
「ありがとう、四課のみんな、後始末は三課がする、君達は客をホテルの出口まで案内するんだ、だが、入り口では今そっちの指揮官が戦っている、従業員用の裏口へ誘導するように」
「永戸先輩が?」
レイモンドから話を聞いて桐枝達は向こうが心配になる。だが、考えていても仕方ない、今は客を逃すことが先決だと思うと、四課のメンバーは客をホテルの外へ誘導していった。
ーーー
永戸とヒカルの戦いは熾烈を極めていた。高速の斬撃の応酬で、神癒奈は、ひたすらそれを見守った。
「なんで、なんで倒せないの!」
ヒカルは素早い太刀筋で永戸に対して致命傷を狙う。対する永戸はその一撃を全て弾き返していた。
「当たり前だ! 剣の振り方しか学んでこなかった奴に、大戦帰りの実戦戦闘技術が劣ってたまるか!」
ヒカルが剣で下から突き刺そうとしてくるが、永戸はそれを踏みつけて押さえた、そこから飛び上がると、リヴァンジェンスⅡのブースターを点火させて回転斬りを決める。
徐々にヒカルにダメージが蓄積されていく、だが、永戸の方も体力を使うのか、息が荒げてきた。
「こんなの…すぐに治るわ!」
自動回復の能力もあるのか、ヒカルの傷はすぐに治癒される。永戸は再び剣を構えるが、そうしているうちに、ヒカルに懐まで入り込まれた。
「はぁああっ!」
「くそっ!」
ギリギリで片手の剣を逆手に持って剣を弾くも、斬撃が頬を掠める。永戸は思う、このまま致命傷を与えてはいけないと言う制約の中、自動回復の能力まであるヒカルを相手にしては、先に自分が力尽きると。しかし、彼女相手に白銀弾は使えない、強い一撃を与えたくない、そんな甘い考えが彼を迷わせていた。
(甘いのは、どっちなんだろうな!)
永戸はリヴァンジェンスⅡのブーストでヒカルを斬ると、勢いよく壁に叩きつける、そのまま聖剣の光を拡散させると、ヒカルを上から叩き潰した。
「げほっ!」
倒れそうなほどのダメージを与えても彼女は立ち上がる、なんという執念だ。よほど永戸が憎いのか彼女は剣をずっと握り、歯を食いしばって立ち上がる。
永戸も、息が上がった状態で剣を構えるが、ここで彼は彼女に問いかけた。
「なんでお前はそこまでして俺を殺そうとする!」
「兄さんを殺された仇だから!」
「それが違ったとしても、それでもまだ戦うのか!」
「そうよ! だって…!」
するとヒカルは、崩れ落ちそうな身体を震わせ…涙を流しながら剣を永戸に向けた。
「もう、どこに怒りを向ければいいのか…分からないの……! 戦争で兄を殺されて、ひとりぼっちになって、残ったのはこんな偽物の聖剣で……誰を恨めばいいのか…分からなかったの!」
その言葉に、永戸は剣を下ろす。神癒奈も…見ているだけじゃなく、永戸のそばに近づいた。
「兄さんにまた会いたかった! 一言くらい、言葉が欲しかった! なのに…なのに…戻ってきたのは、死んだと言う手紙だけ! ……こんなのって…あんまりよ…!」
彼女は床に崩れ落ちると、泣きじゃくる。
「兄さんに親友がいて、最後を看取った人がいたって聞いた時、…貴方を恨む事しかできなかった!! 兄さんの親友だった貴方を! 遺志を受け継いだ貴方を! のこのこと生き残った卑怯者、仲間すらも見殺しにする英雄殺しだって、そう捉える事しかできなかったの!」
剣が落ち、彼女はその場でただ慟哭する。永戸達はそれをただ聞き続けた。
「もう、どうしていいか…わからないの……貴方を殺すために勇者になって、その為にいっぱい身体を能力で改造して、無茶苦茶になって暴れて……恨むのを、止められないの」
永戸はゆっくりとヒカルに近づく。すると彼は、彼女を抱きしめた。
「……お前が、俺を恨みたくなる気持ちはわかる……けど、その憎しみは…俺に向けたってどうしようもない。仮に俺を殺したとしても、虚しさが残るだけだ」
泣き続ける彼女を優しく抱くと、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「悪いのは……大戦という大きな絶望の根源だ。どこを恨めばいいか分からない、胸糞悪い戦いだ」
永戸も思い出す、大戦時の記憶を。沢山の仲間が死に、沢山の敵を殺し、憎み、憎まれ、止まらない負の連鎖をただひたすら繰り返したあの時のことを。
それを思い出すと永戸はヒカルを宥める。
「ごめんな……俺からはこんな言葉しか言えない。大戦でできた犠牲は、俺たちの責任でもある。兄貴を守ってやれなくて…すまなかった」
「うん………!」
ヒカルから殺意の圧が消えたのを確認すると、永戸は立ち上がり、彼女に手を伸ばす。
「……いつか、俺たちが、その憎しみの根源を断つ剣になる。お前が兄について苦しまない世界を俺たちが作る。だから……それまで待っててくれ」
「…分かった……」
ぐすんと泣いて、泣き止むと、彼女は永戸の手を取ろうとした。その時だった。彼女が急に剣を手に取って切り掛かってきた。
「っ! お前…どうした⁉︎ そんなに俺が憎かったか!」
「違う! 違うの! 今のは身体が勝手に! あ…あぁああっ!」
彼女が剣を離そうとするも、身体があちこち糸で繋がれたように動き、苦しんだ。
「何か、様子が変です!」
「見りゃわかる! なんなんだこれは…!」
彼女を吊るす糸の先を見る。すると、そこには、深く暗い闇が広がっていた。この感覚には覚えがある。
「アズウル! お前なのか!!」
「くっくくく、あっははは! 久しぶりだね、永戸」
そこに現れたのは、飄々とした笑顔で見下すアズウルだった。
「…なるほどな、どうして彼女が俺を憎んでいたかなんとなく分かった。お前だな! お前が彼女に俺が仇だって吹き込んだんだろ!」
「大正解! いやぁ、人間って本当に動かしやすいよね、仇討ちって言葉を使えば容易く信じてこうやって意のままに動いてくれるんだからさ!」
「痛いっ! やだっ! やめてぇええっ!」
そう言うとアズウルは手から伸びるピアノ線でヒカルを動かす。身体が動かしてはいけない方向に動かされてるのか、彼女の骨はあちこちが折れ、ヨレヨレの人形のようになっていた。
「やめろ! 彼女は関係ないだろ!」
「関係ない? いや、あるだろ、この子はキミの親友の妹、キミだってこの子を大切にしたいはずだ、今その子は僕の手中にある。その気になれば、この子をぐちゃぐちゃの肉人形にしてやってもいいんだけど、だけど、それだけじゃつまらないと思うんだ」
「何を…!」
何をする気だと聞くと、アズウルは笑顔で答えた。
「キミとこの子を戦わせる。どちらかが死ぬまでね、簡単な話だ、キミが死んだらこの子は解放される。あぁでも、この子に与えた勇者の力は僕のだから、仮に解放されても、待っているのは異形と化して都市を滅ぼす魔物になるだけだけどね」
そう言ってはアズウルは悪魔の笑みを浮かべる。それを永戸と神癒奈の二人は睨みつけた。
「この…畜生が……!」
「貴方の行いを…許しません!」
「あっはははは! 抗うのかい? 止める手段はただ一つ、彼女を殺すしかないんだよ?キミたちに果たしてそれができるかな? ふっふははははは!」
ケタケタと笑うと、アズウルは指を鳴らしホテルのロビーのシャッターを全て下ろし、外界から遮断する。
「さぁ、楽しませてくれよ、僕の目の前で、踊ってみせてよ」
そう言ってアズウルは消える、残ったのは、体をぐちゃぐちゃに捻じ曲げられ、無理やり剣を持たされたヒカルだった。
「嫌……死にたくない…!」
「…止めるぞ、奴の思い通りにはさせない」
「はい!」
そうして永戸達はヒカルと相対する。今度は、絶望の操り人形と化した彼女を止める為に。




