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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第九章 復讐の勇者と英雄達の晩餐
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復讐者達

 悠々と立つヒカルを前に永戸は彼女に銃口を向ける。


「ヒカル……お前、どうしてこのパーティを襲撃しようとした」

「…許せなかったからよ、英雄の存在が」

「何故?」


 永戸は質問を重ねながらブレイズエッジのハンマーを下ろす。


「ここにいる英雄達は皆、他人の想いを犠牲にして戦った人殺しよ! 私は、そんな英雄達が許せない!」

「それはこじつけだ、生きる以上、他人に迷惑をかけることはあるし、誰かの想いを踏み潰して立ち上がる事だってある」


 永戸は冷静にそう言いながらヒカルに近づく、神癒奈も、階段から降りてヒカルに近寄っていく。


「戦争で英雄達が戦って活躍したせいで、大勢の人が苦しむ事になった! 英雄なんて悪同然よ! 貴方のような人殺しは特に!」

「違います! 確かに戦った結果、大勢の人が苦しむ結果があったのかもしれません! でも、英雄達はそれでも人々のために戦ったんです!」

「貴方に何が分かるの! 悪を断罪するという意志を掲げて、人を殺して生きていく英雄なんかに夢を見て!」


 神癒奈が叫ぶのを見たら永戸はヒカルに言い返した。


「…英雄に夢を見ているのはお前の方だ。俺たちは、争いながら生きている。この世に完璧な聖人なんていない、俺たちは、幸せを奪いながら生きてるんだ」

「黙れ! 私から兄さんを奪っておいて、よくもそんな口を…!」


 ヒカルは腰のポーチからあるものを取り出す。それは、転移魔法を仕込んだ魔法石だった。


「これは復讐よ…私と、私達を虐げた英雄達への!」


 魔法石が砕かれると、建物の各所に転移魔法の門が現れ、大勢の人間がパーティー会場に押し寄せていった。


「まずい…ライ、エイル! お前らもパーティー会場に向かえ!」

「了解した」

「はい…!」


 永戸の指示を受けてライとエイルも暴徒を止めるべくパーティー会場へと走り出す。その中には三課の人、レイモンド達がいた。


「私達が、力に溺れた英雄達を断罪するのよ! 永戸、貴方もね!」


 そう言ってヒカルが剣を抜くと、剣に光が宿された。永戸は背中から、三課で使われている非殺傷武器の棍棒"ショックバンパー"を抜く。


「フィーネ、聖剣とその他の武装…頼むぞ」

『かしこまりました!」


 フィアネリスに指示を出すと、永戸はヒカルに棍棒を構えた。


「正義の名の下に…殺すっ!!」


 ヒカルはそう叫び、永戸に向かって剣を振った。永戸はそれを受け止めると、片手に持ったブレイズエッジでヒカルの腹部を撃った。


「くっ…」


 非殺傷の弾が当たり、ヒカルは体を震わせる。そのまま彼は剣を押し返すと棍棒で今度は脇腹を叩いた。


「…その程度で、私は止まらない!」


 勇者の能力の恩恵か、ダメージは受けても痛みは少ないようで、ヒカルは横なぎで剣を振り、光波を飛ばした。


「ふっ!」


 その光波を永戸は飛んでかわし、勢いをつけて棍棒をヒカルの背中に叩きつけた。


(複写でどうだ!)


 背中に攻撃を命中させると、零の力でその攻撃の十倍の量にして繰り返し、ヒカルの背中に甚大なダメージを与える。


「げほっ!」


 流石に十倍の威力で放たれた棍棒の一撃は重たかったようで、ヒカルは吐血しながら吹き飛ぶ。だがしかし、それまでも耐え、ヒカルは永戸に向けて剣から光を振り放ってきた。


「っ!」


 光で棍棒が焼き切れ、使い物にならなくなる、彼はそれを捨てると、腰からもう一丁ブレイズエッジを取り出し、二丁構えた。


「豆鉄砲同然の銃で何ができるっていうの!」


 ホテルのフロントを走り回りながら永戸は光を避けて銃弾を撃つ。しかし現在使用可能なのは非殺傷の弾丸、先程同様ヒカルにダメージを与えるには至らない。


(フィーネ…まだか!)


 フィアネリスがあらかじめ考えておいた策が使えるようになるまで、永戸は凌ぎ続ける。


 ーーー


「なんだ何事だ⁉︎」


 貴族の1人がそんな声を上げる中、大勢の暴徒が武器を持ってパーティー会場にやってきた。


「やっば…団体客じゃないっすか!」


 桐枝がブレイズエッジを取り出し、入り口の方向を見る。入り口には二階、三階両方から暴徒が溢れかえって出てきた。


「動くな! イストリアの護衛があるのはわかっている! 少しでも動けば、一人ずつ殺していく」

「そんなことできるっていうのかよ!」


 英雄達が各々武器を構えるが、暴徒が一人のホテルマンに向けて銃を撃つと、弾丸が肉体内部に突き刺さり、内側から槍が突き出てホテルマンが殺害された。


「俺たちの銃に装填されてる弾は、どんな英雄でも殺すことに特化した儀礼弾"断罪"だ、少しでも擦ればそこから内部を侵食して血の槍がお前達を貫く、変な事は考えるなよ!」

「なんか相手ヤバい武器持ってるっすよ! あんなもの撃たれたらいくらきりちゃん達でもヤバいっす!」

『動かないでください、今外にいるメンバーがこちらに増援として来ています。なんとか包囲して話し合いまで持ち込みたいのですが…』


 桐枝は人の隙間から入り口の方を見渡す。どの暴徒も、暴徒にしては過剰な装備を持っていた。


『変ですね?』

「変って、何がっすか?

『あれほどの装備、その辺のチンピラ程度ではとても手に入ることはないものですね、儀礼弾だって簡単に手に入るものではありません』

「それってつまり…?」


 小声で桐枝が聞くと、フィアネリスは答えた。


『裏に何かがある、それも、これだけの装備を用意できる何かが』


 フィアネリスは何が絡んでいるのか考えるが、ここで暴徒達に動きが出た。


「全員座れ! 武器などを出そうとは考えるんじゃないぞ」

「っ! 助けて!」


 そう言うと暴徒は貴族の子供を人質にし、全員に座るよう求めた。


『…従った方がいいね』

「わかったっすよ…」


 一度ブレイズエッジを腰の裏に隠し、桐枝は膝をつく。


「お前ら…! 子供を人質にとって恥ずかしくないのか!」


 英雄の一人がそう言う。


「恥? お前らが俺たちにしたことの方がよっぽど恥だ! お前らが戦争で勝って、俺たちは住む場所を失ってしまった! 大切な子供までいたんだ! なのにいじめや差別、迫害によって、俺たちは居場所を失った。子供まで殺された奴がいるんだ! 全部お前らのせいでな! だから俺たちは、復讐する! この行いも、全てお前らが招いた事だ!」


 子供の頬にぐりぐりと銃口を押し付け、暴徒の1人は言う。その時だった。


「止まれ!」


 外の警備からやってきたメンバーが、入口を取り押さえた。これで暴徒は挟み込まれ、逃げ場所がなくなる。


「下手な気は起こさない方がいいぞ。少しでも動けば、タダでは済まない」


 外の警備にあたっていたレイモンドがそう言うと、三課の兵士達が銃を構えた


「…はっ、今更おさえて何になる。俺たちは死ぬ覚悟でここにきたんだ。これを見ろ!」


 そうして暴徒達が服を脱ぐと、身体に大量の爆弾が巻き付けられていた


「一人でも撃ってみろ、その瞬間、仲間の誰かがスイッチを押して起爆させる。これだけの爆弾だ、このホテルを潰すくらいの威力はあるぞ」


 そう言って暴徒達は手にスイッチを持って答えた。流石に不味いと思ったのか、レイモンドも動けなくなる。


「これは正義だ……俺たちを迫害した者達を断罪する、正義の行いだ!」

「…正義…」


 正義と聞いてその場の全員が息を呑む。そんな中、一人立ち上がる者がいた。


「きりちゃんには…そんなことはわかんないっす、正義とか復讐とか、正直うまく言えないっす、けど…」

「何をしてる、座れと言ったはずだ!」

『桐枝ちゃん! 相手を刺激しちゃダメ…!』


 暴徒やコリーが座れと言う中、桐枝は立ち上がった。


「いくら誰かに悪いことをされたからって、自分たちを踏み潰されたからって、やる事がこれで本当にいいのか! 悪いことをされたからと言ってそれを誰かを殺す理由にして、弱い子供を人質にとって、自分たちの命すら全て台無しにする気で来て、挙句それらの責任を全部私たちに押し付けて、ふざけた事を抜かすんじゃないっすよ!!」

「なっ……子供のお前に何が分かるって言うんだ!」

「わかんねぇっすよ!! あんた達の気持ちなんか!!! あんた達がどんな辛い想いをしたのかなんて子供の私には想像がつかない。でも!!! こんな事をして死んでいった家族や苦しんでいる仲間が報われるだなんて、そんな事絶対にありえない!!」


 そう言うと桐枝はブレイズエッジを構えた。それを見た暴徒は一瞬怯えるが子供に銃口を突きつける。


「う、動くな! この子供がどうなってもいいのか!!」

「撃ちたきゃ撃てばいい!! けど、あんた達は勝手に正義を掲げて何の関係もないそこのホテルの人を殺してるんすよ! そこの子供だって、まだ何も知らない何も関係もない子供じゃないっすか!!! やってる事は、あんた達が受けた迫害と全く同じ、負の連鎖っすよ!」

「黙れぇえええっ!」


 バンッと音が聞こえ、桐枝に向けて銃が撃たれた。だが、桐枝に到達する前に、弾丸は光の幕によって弾かれる。


「…な……あぁ…!」

「……あんた達は、都合のいい解釈だけをして、たまたまそこにいた都合のいい人を生贄にして、自分達の暴論を突き通そうとする……悪っす!」

「よく言った、桐枝!」


 その声が聞こえると、三階の吹き抜けからライとエイルが飛び降りてきて、エイルが人質を抱えた男を捕まえると、男を殴って人質の子供を奪い返した。


「何⁉︎ お前ら……撃て! あいつらを皆殺しにしろ!」

「させるか!」


 ライが盾を構えると、目の前に巨大なバリアが展開され、特殊な儀礼弾を全て防いだ。同時に、内側からもシャットアウトできるバリアも展開し、暴徒達を閉じ込める。


「四課…! 来てくれたのか!」

「あーもしもし、トーマス課長、少し宜しいですか?」

「なっ⁉︎ いつのまに⁉︎」


 トーマスが座っているところに、フィアネリスが紙とペンを持って現れる。


「今、この状況は緊急事態でございますよね? 誰一人として英雄達を死なせたくないですよね?」

「そ、そうだが……何の用だ⁉︎」

「一つ提案があるのですが、四課で使われている武器の使用許可のサインをいただけないでしょうか?」

「ダメに決まっとるだろう! 殺傷能力が高すぎて周りに余波が出るぞ!」


 トーマスはそう言って拒否しようとするが、フィアネリスはうーんと考えるフリをしてこう答えた。


「しかし、このままでは暴徒達が暴れて死傷者が出かねません、非殺傷武器もできる限り使いますが…相手が本気な以上、こちらも相応の武力をちらつかせないと引かないと思うのです。あーライ様の防御、あと少しで突破されますね、大変ですどういたしましょー?」

「ええいわかった! 武器の使用を許可する! ただし誰も死なせるな!」

「ご協力感謝しますっ」


 にっこり笑顔で紙にペンでサインをすると、トーマスにそれを渡し、フィアネリスは消えた。

 その直後、パリンとライの防御壁が破られ、暴徒達が一斉に襲い掛かろうとしてきた。


「あぁああっ!」


 トーマスは驚き膝どころか尻餅をついて怯えるが、ここで上から、波動砲の砲撃が飛んできて、暴徒達の動きを止めた。


「あー全く、正義とかどうとか語りますが、ここまでくるとエゴの塊ですねぇ、貴方達の信じる正義は正直興味はございませんが…」


 速攻で着替えてきたのか、空中からふわりとフィアネリスがラストダンサーの装備をして降りてくる。


「これ以上おいたが過ぎるのであれば、ここで消し去るしかないようです。皆様、お待たせしました、ショーの幕開けですよ」


 そう言うとフィアネリスは転移魔法で装甲車の内部の武器ケースを開き、各々に専用の武器を渡した


「ここからは私たちとお話をしましょうか、お嬢様方」


 次の瞬間、完全フル装備の四課が、暴徒達の前に立ち塞がった。

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