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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第九章 復讐の勇者と英雄達の晩餐
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パーティー当日

 様々な懸念がある中で、パーティーの当日を迎えた。四課は手持ちの武装を用意するべく、武器庫から非殺傷の武器を取り出していく。


「桐枝ちゃん、貴方に新しく武器が用意されたから持ってって」

「おっ、新武器! なんすか?」

「これ、永戸先輩が使ってる銃、ブレイズエッジの桐枝ちゃん用カスタム、握ってみて?」


 桐枝は言われた通り、自分専用にカスタマイズされたブレイズエッジを握る。手の感覚がぴったりで、とても扱いやすそうに思えた。


「どんなカスタムが施されてるんすか?」

「火力は能力で補えるから、扱いやすくなるように銃身が少し切り詰められて軽くされてるの、グリップも握りやすいように調整してあるから、手に馴染むはずだよ」

「こんなかっこいいものを…ありがとっす!」


 目をキラキラさせながら桐枝は腰のホルスターにブレイズエッジをしまう。


「全員、準備はいいかな?」

『はい!』


 オフィスの椅子に座るユリウスは実働隊となる永戸達に点呼を取る。全員の準備はできたようだ。確認を終えると実働隊は全員部屋から出て、格納庫にある装甲車に乗る。

 そして車は走り出すが、ここで今回の依頼の確認が始まった。


『では改めて、今回の任務は三課と合同でパーティーの警護に回ってもらう。今回は三課の指揮下に入る為、各員はそちらの言う事を聞くように、武装や能力は非殺傷を徹底、ただしフィアネリス君の予測通りなら襲撃が起きるはずなので、いざとなれば能力の使用も許可する。いいね?』

『了解!』


 四課のメンバーは装甲車の中で、武器のチェックをすると同時に作戦も練り始めた。


「今回のパーティーは大型ホテルの二階と三階にあるフロアで行われることになってる。フィーネ、コリーはフロアの外周から全体の観察を、神癒奈と桐枝は偽装装備を着用してパーティーの内部で警護にあたってくれ、俺、ライ、エイルは外で警護、これでいいな?」

「はい!」

「異議はありません」


 それぞれの役割が決まったところで、Eフォンから連絡が入って来た、永戸達は端末を開き、通信をオンにする。すると、そこに出て来たのは、髭を蓄えた太った男だった。


『四課のエリート諸君、私は、三課の課長のトーマス・マクガイアーだ。今回は我々三課の手伝いをしてくれる事を光栄に思う』


 ふぅんとタバコを吸いながらトーマスは言う。どうやら当人はパーティー会場にいるらしく、周りに人だかりがあった。


『普段の君達は殺しの仕事を行っていると思うが、三課の活動は本来は護衛だが、裏では政治への干渉もしている。護衛対象を的確に守りつつも私が政治に手を出し、君達の給料を賄っているってことだ。今回のパーティーは大きなビジネスになる。君達の活躍次第で莫大な利益を生む可能性がある。そこは重々承知しておくように、では、頑張りたまえ』


 そう言うとトーマスは通信を切った。


「なんか、いかにも政治屋って人でしたね?」

「こんなおっさんの下では働きたくないっすねぇ、金だけを求めてそうで」

「そうでもないぞ、トーマス課長は他の課長と比べて戦闘能力はないが政治に関しては強い影響力を持ってる。それも、各団体の政治家に金を動かさせるレベルにはな。これも特査の課長たる所以なんだ」


 話しているうちに、目的のホテルの前までついた。業務用の駐車場に装甲車を停めると、永戸達は三課と合流する


「来たな、特査四課」

「あ、貴方は試験の時の!」


 そこにいたのは、以前神癒奈が入隊試験の時に相手したレイモンド・アールマンだった。


「あぁ、久しいな、よく来てくれた、四課の諸君、今回も仕事を頼むぞ」

「あぁ、よろしくな」


 レイモンドと永戸が握手をすると、永戸は指示を出して四課のメンバーを配置させる。


『外周組、配置につきました』

『どこからでも見下ろせるよ!』

「了解、フィーネはできれば外周だけではなくホテルの内部の動きも調べてくれ、下の階だけでなく上の階もだ、念には念を入れてな、コリー、いざとなったら狙撃銃で射撃を許可する」


 外周からの観察を担当するフィアネリスとコリーは、パーティーを上の階から眺める。


『パーティー内部組、準備大丈夫です!』

『こっちもオッケーっすよ、ところでここで出されてるご飯、食べていいっすか?』

「内部組了解、二人とも、程々に楽しんでいいが目立つなよ、後トラブルが起きた際は1番先に動くのはお前らだからな、その時は客を守るんだ」


 神癒奈と桐枝がそれぞれドレスとスーツを着て配置が終わる。神癒奈は念の為尻尾と耳を隠して人間の姿になってもらった。


「そして…私達は外で警護ですね」

「私達はここでやってくる奴らを止めるんだな」

「客か一般人かどうかの識別は三課がやってくれる、俺達は有事に備えるだけだ」

「そうだ、君たちの活躍に期待してるぞ」


 レイモンドが手袋をつけて立つ。永戸達もピシッとしたスーツを着て入り口から動きを見張る。


「そう言えば、神癒奈君は試験を終えてからどうだ?」

「四課に馴染んでるよ、辛い仕事ばっかだけど、あいつはあいつなりの正義を貫いてる」

「そうか、それはよかった、彼女には期待してたんだ、試験の時のあの強さを味わってからな」


 レイモンドがそういうと、ホテルの方に振り向いた。


「…何事も、起きなければいいが…」


 ーーー


 一方、ホテルのフロア内部で警備にあたる神癒奈と桐枝は、パーティーを楽しんでいた。


「このチキン…味が染み込んでて美味しい…」

「あ、ずるいっす! それきりちゃんが食べようと思ってたのに!」

「他のがあるじゃないですか、早い者勝ちですよ」

「ぐぬぬ…じゃあきりちゃんはこっちのローストビーフをもらうっす」


 神癒奈と桐枝は二人でもぐもぐとホテルで出される食事を食べる。


『二人とも、これが警備の仕事であること忘れないでくださいね?』

『そうだよー、私だって食べたかったなー、ローストビーフ』


 外周のフィアネリス達からガヤガヤ言われるも、神癒奈と桐枝は食事を食べながら周囲を警戒する、今の所特に気になる事はなさそうだ。


「フィアネリスさん、襲撃するタイミングは分かりますか?」

「それが見えないのですよ」

「全知があるのに?」

「侵攻してくるルートがありすぎて、どの未来が本当に来るのかわからないのです。未来予知に関してはまだ未正確と捉えていいでしょう」


 フィアネリスは頭のなかに流れる情報を一つ一つ丁寧に調べていくが、どれが正確な未来なのか見当がつけずにいた。


『ただ、大勢の暴徒がここに来るのは把握済みです。いつでも対処可能なように準備はしておいてください』

「じゃあ、手当たり次第に調べるしかなさそうっすね」

『そうだね、二人とも、顔識別機能付きのメガネはつけてる?』

「これのことです?」


 神癒奈はメガネを触り、縁の部分をトントンと押す。すると、パーティー参加者やホテルの関係者の顔が表示され、誰が誰なのか分かるようになった。


「スパイ映画みたいな道具っすね」

『それがあれば敵か護衛対象か分かるから、今このホテルには私達イストリアの兵士とパーティーの参加者、それと従業員しかいないからね、もし識別に該当しない人が出たら調べて』

「はい」


 二人はパーティー会場を歩き回り、参加者をチェックしていく。すると、一人だけ、該当しない人物が出た。


「一人、識別に当てはまらない人物を確認しました」

『容姿と場所は?』

「女性…ですかね? 茶髪で若い女の子がいます。場所は、二階の…三課の課長さんの近くです」

『どれかなー? どれどれ…』


 コリーがEフォンの端末から神癒奈のメガネについたカメラを見て、識別情報を確認する。


『確かにその女の子、該当データがないね、捕まえて』

「分かりました」


 神癒奈はコリーの指示を聞き、その少女の捕縛に動く。すると少女は三課の課長、トーマスに近づくと、懐からダガーを出した。


『不味い…止めて!』

「はい!」


 神癒奈は少女がダガーを構えたその瞬間、彼女を背中から取り押さえた。


「不審者を確保!」

「くっ…!」


 神癒奈は手錠を取り、手にかけようとするが、その時、彼女が手から何かをゴロンと床に落とした。


「手榴弾⁉︎」


 神癒奈は停止の力場を発生させて手榴弾を丸めて爆発を抑え込む。だが、手榴弾に気を取られて少女を取り逃してしまった。


『神癒奈さん!』

「追いかけます!」


 フィアネリスが叫ぶと神癒奈は追いかける。


『敵は一階の方へ逃げて行きました!』

「はい!」


 フィアネリスの指示通りに走り、神癒奈は少女を追い込む。


『マスター! 敵がそちらにきます!』

「わかった、対処する」


 永戸は一人建物の中に入り、上からやってくる少女を確認する。


「止まれ」


 そうして声をかけて銃口を向けると、少女は止まった。


「ヒカル……お前だな?」

「…ええ、そうよ」


 永戸の目の前に現れたのは、三日前、彼に襲いかかってきたヒカルだった。

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