そもそも俺は『シンデレラ向き』じゃないんだって!
そして。
「女の子? ……俺が?」
コテンと首を傾げてみせる。
「あんた以外に誰がいるのよ!」
「えっ、俺、女の子に見えるの?」
「何当たり前の事言ってんのよ! あっ、馬鹿にしてるんでしょ腹立つわねっ!」
「っ! だから違うって!」
俺はただ純粋に聞いてるんだってば。
「俺が女に見えるのか」って。
だっておかしいだろ?
窓に映る俺は、明らかに男なんだから。
(でも彼女のこの怒り様を見るに、嘘をついているかんじでもないし……)
という事は、つまり何だ?
俺は、俺には男に見えるけど、他の人からは女に見えてるって事なのか?
えっ、何ソレ超コワイ。
「え、因みにオネエサマには俺がどんな風に見えて……?」
「はぁ? アンタなんかただの薄汚れたボロ雑巾よっ!『灰かぶり』がお似合いね!」
そう言ってフンッと鼻を鳴らした彼女に、俺は思わず「ソレじゃまったく参考にならないんだけど」と応じた。
すると「『灰かぶり』のくせに、どうも最近生意気ね!」と怒られた。
すみません。
きっとそれ、俺が転移してきちゃったせいです。
まぁ、転移してきたのは俺のせいじゃない……と思うんだけど。
なんて、心の中で言い訳をした時だ。
「そんな事より、シンデレラ! アンタちゃんと仕事やってるんでしょうね!」
おっと。
何だか義姉が、俺の知る『シンデレラ』寄りの言葉を言い始めた。
しかし俺、残念ながら『シンデレラ』のヒロインには向いていないと思うんだ。
何故ってーー。
「床を拭いた後は棚やテーブルの掃除。そして最後に窓の掃除よ! さっさと終わらせなさいよね!」
「あっ、オネエサ……」
「フンッ」
それだけ言い置いて、俺の声なんてまるで無視して去っていく。
そんな彼女の耳には届かない。
「もう終わったんだけど……」
尻すぼみになったそんな声なんて。
無理難題を突きつけられ、虐げられる生活を送る。
ちょっとうろ覚えではあるが、確かそれが『シンデレラ』の物語の、ヒロインの日常だった筈である。
そしてもしそれが合っているなら、やっぱり俺は向いてない。
だって。
「そもそも俺、『家事全般なら何でもこなせる系陰キャ』だしなぁ……」
玲二だった頃の俺は、共働き家庭に育った。
だから小学校の頃から自分の事は勿論、家の家事全般を仕切っていたのだ。
俺にとってはそれが日常で、それを「嫌だ」と思った事なんて一度も無い。
(家の中でほぼ完結する家事全般は、もしかしたらインドアな俺の性に合っていたのかもしれないなぁ)
まぁつまり、そんな俺だから継母達から押し付けられる家事も特に苦には思えない。
だから。
「俺はそもそも『シンデレラ向き』じゃないんだって……」
という事なのである。




