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痛いっ! 痛すぎる!



 俺の名前は白洲 玲二。


 『玲二』なんてちょっとかっこよさげな響きの名前ではあるが、ただの1人の陰キャでしかない。



 学校の教室ではいつだって日陰者で、目立つ事は大嫌い。


 アウトドアよりもインドア派。

 バラエティーよりもアニメ派。

 純愛小説よりも異世界ファンタジー。


 そんな俺だから、この状況下にもピンと来た。

 「あ、これ多分異世界転移ってやつだ」って。



 因みに、何故転生じゃなくて転移だと分かるのかというと。


「……はぁ」


 綺麗に磨かれた窓ガラスに目をやって、俺は深いため息を吐いた。


(痛い。本当に、痛い。)


 それもその筈、窓に映るのはボサボサの黒髪に三白眼の、青白い顔をした地味な男。

 つまり、俺の姿である。


 今ソレが、裾にフリルのついたスカートを着て目の前に立っているのだから、感想なんて「痛い」意外にある筈がない。


(まぁ、縫繕った跡が幾つもある、ボロ雑巾みたいな一着ではあるけどさ)


 しかしどちらにしろ、俺がフリル付きスカートに足を通している事は変わらないわけで。


「……こんなの、一体誰に需要があるんだ」


 そんな自身の有様に、俺は思わずそんな言葉を溢した。



 まぁしかし、それは一旦置いておくとして。


(多分「異世界転移した」って事で間違いないんだろうけど)


 それにしても何で『シンデレラ』、もっと他にあっただろ。


 ラノベやファンタジー系ネット小説を好んで読む俺の転移先が、よりにもよって童話なんて。

 しかも恋愛ものとか。

 管轄外だよまったく!


 そして、何より。


(何で俺が主人公ポジ。どう見ても男だろ、俺!)


 心の底で、そう叫ぶ。

 

 という訳で、疑問という名の不満は尽きないのだが。


「シンデレラ! 聞いてるのっ?!」


 その声に、俺は思考の海から浮上した。

 目の前にいるのは、不機嫌顔の義姉だ。



 腰に手を当てて、ズイッと顔を近づけてくる彼女は、今日も相変わらず顔が近い。


(……パーソナルスペースが近いんだよなぁ、この人)


 居るよね、そういう無自覚系女子。


 でも。


(俺ら陰キャにとって、ソレって凶器でしかないんだよ! 俺達の免疫の無さっぷりを甘く見るなよ!)


 そもそも初恋さえまだの、心まっさらチェリーな俺である。

 女子に免疫なんて、ある筈ない。

 

 しかし、そんな悲痛な心の内は、ちょっと抑えて。


「だからね、オネエサマ。俺は『シンデレラ』じゃなくて……」


 俺は弁解すべく口を開く。

 すると、彼女は。


「またそうやって仕事から逃げようとして…

…でも、私は絶対に騙されないんだからね!」


 プンッという擬音がよく似合う風体で、彼女が胸を張る。

 今日も相変わらず、とりつく島はない様だ。



 因みにこの義姉、シンデレラの父の再婚相手の連れ子の内の1人である。


 彼女たちはこの家にやってくると、継母を筆頭に贅沢三昧し始めた。


 しかし所詮は男爵家、使える金にも限度がある。


 その為継母は、今度は自分にとって必要ない支出をカットし始めた。

 その内の一つが、屋敷内の掃除全般だ。


 どうやら継母は「そんな仕事はシンデレラにでもやらせておけばいい」というスタンスの様だった。

 そしてこの義姉は、どうやらそのお鉢が自分に回ってくることを危惧いている様である。


 しかし。


「仕事はちゃんとやるけどさ……」


 俺は別に、仕事から逃げたい訳ではないのだ。


 ただ目立ちたくない系陰キャの俺には『物語のヒロイン』なんて大役、無理だと思っているだけなのだ。


 あと……俺、そもそも男だし。



 でもまぁそれは、今は割とどうでもいい。

 というか、言ったところで相手にしてもらえないで諦めた。


 ただ一つだけ。

 

「取り敢えずこの服、どうにかならない?」


 これだけは譲れない。



 そんな気持ちを言葉にした俺に、キッと眉を釣り上げた義姉が言う。


「そんな事を言って、新しい服を買ってもらおうとしてるんでしょ! なんて浅ましい!」

「いやだから俺は別にーー」

「そもそも『俺』だなんて、そんな言葉遣いして恥ずかしくないの?!」


 ちょっとヒステリック気味な義姉をどうにか抑えようとしていると、何だか斜め上の指摘が飛んできた。


 その指摘に、俺は思わず頭を捻る。


「……へ?」


 一体『俺』のどこが恥ずかしいというのか。


 そんな疑問を乗せた声は、どうやら彼女にはとぼけている様に聞こえた様だ。


「『へ?』じゃないわよ! 女の子のくせにそんな言葉遣い、恥ずかしくないのかって言ってるのよ!」

「……へ?」

「あんたはっ!」

「あっ、ちょっと待って違う違う!」


 反射的に漏れた声が相手を挑発する物だったと気付いたのは、彼女が見事に挑発されてしまった後である。


 慌てて「そういう意図はなかったんだ」と弁解してから、俺は少し考えを巡らせた。


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