走り出せ! その前に、ちゃんと服を着て!
「君の事はずっと見てたからね、目覚ましい活躍何よりだよ。っていう事で、ご褒美あげようと思って」
「えっ?!」
俺の驚きをよそに、神は星のついたあの『いかにも』なステッキを振る。
そして。
「はい、これで名実共に立派な男だよ! これでもう、何のしがらみも無いね!」
そう言われ、俺は思わず自身の手のひらを見つめた。
感触と確かめる様に、何度か手をグーパーとして。
「本当に解けたのか?」
実感が湧かずに思わず尋ねる。
すると、神は「解けたよ?」と軽い口調で頷いた。
そして「ねぇそれよりも」と口を開く。
「こんな所で悠長に湯船になんか浸かってて良いの? 君のオネエサマ、あの継母のせいで金持ち老人の所に嫁がされそうになってるけど」
「はぁっ?!」
神の爆弾発言に、俺は思わず湯船からザバッと立ち上がる。
「本当なのか、それ!」
「うん、早くしないと手遅れになっちゃうよ?」
その言葉に、俺はマッパのまま慌てて走り出した。
しかし途中で「いくら急いでても流石にマッパはマズイか」と思い直し、その辺の服を急いで着る。
結婚を申し込むなら服装とかシチュエーションとか、そういうのにもっと色々気を遣わないといけないのかもしれないが、今そんな余裕は無い。
「オネエサマーっ!」
俺が男になっている事の説明も、その後の事も。
何も全く考えてない。
けど取り敢えず今の想いを伝えるために、俺は想いのままにひた走る。
陰キャの俺だからいざとなったら尻込みするかと思ったが、切羽詰まればこんなもんだ。
一世一代の勇気を出して、俺はあの家に突入するのだ。
『明日』を迎えに行くために。
〜〜FIn.




