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レベルアップ、ならぬステップアップ! からのー?



 それから一月後。


「えっ、『相談役』?」

「そうだ、貴女には私の相談相手になって欲しいんだ」


 王城に来てみると、いつもの部屋ではなく執務室のような場所に通された。

 何かと思ったら、どうやらプライベートではなく仕事としての話がしたかったらしい。


「先日の『多数決』の案が実に斬新かつ画期的だったから」

「え……」


 そんなに褒められるような案だったか?

 そう尋ねれば、王子は深く頷いた。


「議会という場所は、今までは『それぞれの意見を俺に聞かせるための場所』でしかなかった。最終決定権はあくまでも王にあり、王の一存で全ては決まっていたのだ」


 しかし『多数決』が導入された事で、周りの不満が目に見えて減った。

 そう、王子は言う。


「勿論依然として最終決定権は王にある。しかし臣下たちの本音に近い支持の割合が目に見えるようになり、王も周りに配慮しやすくなった」


 ふむ、そういうものなのか。

 というか、そういえば確か『多数決決議』って確か民主主義。

 王政とかとは相容れない考え方だったのかもしれない。


「という訳で、とても助かったから今後もその柔軟な思考によるアドバイスが欲しいんだ」


 それによる役職付き、という事らしい。

 

 しかし、それには問題が1つ。


「でも俺、今後も役に立てる事を言えるかどうかは分かんないよ?」


 これである。


 

 『多数決』の事にしたって、そもそも俺は思ったことを言っただけだ。

 現代世界に沿った知識を元にして。


 しかもその知識だって、うろ覚えのものである。


 そもそも、俺が人並み以上に出来るのは、精々家事全般くらいなものだ。

 学校の成績だって決して良くは無かったし、そもそも一般学生の知識量なんてたかが知れている。


 頼られても成果を出せないかもしれない。



 困ったようにそう言った俺に、王子はフッと笑みを浮かべた。


「それについては大丈夫、この役職はいわゆる名誉職に近い」


 君の言葉を王である父上に上げるかどうかの判断は俺がするし、上げた案を採用するかは父が決める。

 彼はそう、俺に話す。


「これは『俺と懇意にしてる貴方には王族が後ろ盾がついている』という事を示す意味合いが強い」


 お前は男爵家の令嬢だからな。


 そう言われ、俺は「なるほど」と納得した。


 確かにたかが一男爵家の娘が王子に助言をしてるなんて、不満が出て然るべきだ。

 つまりはそういう不満への防波堤、という事なんだろう。


(俺、目立ちたくないんだけどなぁ……)


 心中でそう呟くが、そもそも王子の『友人』になってしまった時点で多少出遅れな感じはある。


 だから結局。


「……まぁ、成果を俺に求めないんなら」


 そう伝えると、王子ははにかむ様にして笑った。


「ではよろしく頼もむぞ、シンデレラ相談役」

「あぁ」


 こうして2人は『協力者』としての握手を交わしたのだった。



***



 それから2年後。


「ふぅ」


 俺は今、『シンデレラ』の物語軸の延長でゆっくり湯船に浸かっている。



 「思いつきをただ口にするだけ」という俺の仕事は、思いの外順調だった。


 それこそ、その功績から子爵位を賜るくらいに。



 今では子爵としての屋敷を新しく建て、そこに1人で暮らしている。

 未婚女子爵という事もあり周りが少しばかり騒がしいが、気にしなければ大した実害もない。


「それに、王子も無事に結婚したしな」


 相手は侯爵家の御令嬢だ。

 ちょっと良い感じな雰囲気になっていたので、従者の彼と一緒に背中を押してやって見事にゴールイン。

 

 これで俺の危機は完全に去った。


(まぁそれと同時に俺の帰還の目も無くなった訳だけど)


 これについてはこの2年で踏ん切りがついた。


 せっかく築き上げてきた今のポジションを捨てるのは惜しいし、女扱いされる事にも大分慣れてきたのが大きいか。

 

(まぁ、周りにどういう容姿で見られていようと俺は男なので、恋愛対象は依然として女性なのだが)


 しかし、周りが片付き仕事も順調。


 となれば次に俺が考えるべきは……自分の幸せである。



 俺は、未だにあの時の初恋を拗らせている。


「家を出たせいで、あんまりオネエサマに会える機会が無いのがなぁ……」


 地位を得ても、流石に住む家がある義理の姉を何の理由もなくこちらに引き取る訳にはいかない。


 お陰で彼女との接点など、今では俺自身が爵位持ちになった事によって出なければならなくなった社交の場くらいなものである。


「……まぁ仕方がないけどさ」


 それだって、陰キャの俺にはあまりに煌びやかすぎる社交界に顔を出す為の大きなモチベーションになってるんだから、悪い事ばかりじゃないのかもしれない。

 

(もしオネエサマが居なかったら、俺は絶対にあんな場所になんて行かんわ)


 そう思いながら、俺は深いため息をつく。


「それにしてもオネエサマ、最近目に見えて綺麗になっちゃって」


 そのお陰で俺の手作りで着飾る彼女を見る楽しさも嬉しさも倍増だが、それ以上に不安も増えた。



 オネエサマも立派な結婚適齢期だし、いつ縁談が来てもおかしくない状態だ。


(あぁ、せめて俺がきちんと男だったらなぁ)


 ……否、きちんと男なんだけど。

 その証拠に、俺の視界には今正に俺の男たる所以がきちんと入ってる。



 もしも周りにも俺が男に見えたら、それこそ何のしがらみも無いのだ。


 地位を得て彼女を迎えに行く。

 何というシンデレラストーリー。


 しかし如何せん、俺は女に見えている。


「あー、俺が男に見えるなら、勇気を出して告白するのにー!」


 と、誰に言うでもなく叫んだ。


 その声は浴室内に反響してーー。


「じゃぁ男に戻ってみる?」


 突然聞こえたその声に、俺は思わず振り返った。


 するとそこには。


「っ! 神!」

「やっほー、2年ぶり」


 相変わらずの黒いローブに身を包んだ神が居たのだった。



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