表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

詩書き達の言葉

或る詩書きの漫ろ言

作者: 渋音符


 日常生活で、突然、神秘的なフレーズが思い浮かぶことがないだろうか。ふと目に映ったものや、ぼうっとして考えていたことを何気なく一つの文章にしてみると、なんと、とても頭に残る響きではないか。思いついたそれを、私はできる限りメモ帳やチラシの裏に書き留めることにしているが、それでも仕事中や会食中など、手を離せない事柄の最中にある時だっていくらでもある。そのような時、私はそれを、後で書き留めよう、と思うのだが、その時を過ぎ、私が疲労とともに布団に深く沈み込む時には、既にそのようなことなど忘れてしまっているのだ。

 書き留めていなかったフレーズを思い出そうとしても、上手く引き出すことが出来ない。頭に靄がかかったような、水で溶かした絵の具をいくつも混ぜたような、そんな感じ。大抵の場合、こうなると、当時考えていたことは、いくら唸っても思い出すことがない。

 こういう文章を、私は、“死んだ詩”、と呼んでいる。それが小説の案だったとしても、短文の案だったとしても、もしくは何の纏まりもない、ただのフレーズだったとしても、それらは全て死んでしまって、もう蘇ることはない。つまり、思い出すことは出来ないのだ。


「かなしいな」


 かなしい。

 ただ、かなしい。

 折角思いついたものを、形に出来ずに、なくなり、忘れてしまうことが、かなしい。

 文章が死ぬと、そこに委託されていた思想も、感情も、残らずに消えてしまう。

 私はそれが、かなしい。

 だから私は、出来るだけ詩を殺さないようにする。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ