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7.おひるごはん

日刊ランキング3位、ありがとうございます!本当に嬉しいです!


「はい、それでは今日の授業はここまでとする。皆それぞれ今回の授業の内容をしっかりと理解し、予習復習に励むように」

「起立、礼」

「「ありがとうございました」」


基本的に宿題を出さないことで有名な先生の授業が、終業の鐘の音と共に終わりを迎えた。後は板書の筆圧がべらぼうに強いところだけ直してくれればいい先生だと思うんだが。黒板に親戚でも殺されてるのかってくらいガシガシ書いてる。


そんな昼休みの開始と共に、教室はざわめきと活気を取り戻した。会話と会話が重なり合って不協和音と化すが、それが不快だと言う人は少ないだろう。


「いやー!全くわかんなかったね!」

「開口一番それは色々とまずいよな?」


今話しかけてきたのは楓。相変わらず勉強は全くしていないようで、1度目の定期テストでは赤点ギリギリのラインを攻めている。


「おっ、桜庭がいる。今日の授業全くわかんなかったんだけど!まぁでもどうせ桜庭は俺と同類で赤点スレスレの民か」


次に会話に入ってきたのが大和。えらく楽観的だが、そこがいい所でもあると思っている。悪い所がほとんどだけど。


「うるさいなぁ川上!いいもん私はハルに教えてもらえるから大丈夫だもん!」

「あっ、ずりぃ!たまには陽斗貸せよ!」

「お前ら少しは自分でやるという気持ちは無いのか......」


何で俺がどちらかの家庭教師になる見たいな体で話が進んでるんだよ。そもそも俺はそんなに勉強が出来る訳でもないし。


「あっ、そうだハル。今日一緒にお昼ごはん食べたいなって思ってるんだけどどう?」

「いつもは友達と食べてるだろ?どうしたんだ?」

「んー......気分?」

「相変わらずだな......」


そんな会話を交わしつつ、一応了承の返事だけしておく。


「鈴ー!OKもらったからこっちおいでー!」

「えっ......本当にそっちで食べるの......?」


えっ、楓のやつ友達をこっちに呼ぼうとしてるのか?


おずおずと遠慮している風にこちらに寄ってくる。......俺の方を訝しげに見ているな。いや確かに俺って客観的に見たら気持ち悪いやつだからね?仕方ないけどさ......


「それじゃあ......お邪魔します?糸田 りんです。まぁ同じクラスだし知ってるか」

「おう、よろしく。楓が申し訳ない事したな。クラスメイトなんだし敬語はいらんぞ」

「あ、そう?なら私もそっちの方がありがたいよ」


彼女の名前は自己紹介の通り糸田 鈴。楓とは似たようで少し違う性格で、思った事をすっぱりと言い切ってしまう。敵と味方がはっきり分かれるタイプかもしれない。


「あれ、新しい子が増えてるね。よろしく」

「あ、入谷くん。なんと言うか、いつ見てもイケメンだよねぇ」

「あはは......ありがとう、と言うべきなのかな?」


いきなり精神的な距離を詰めてくる糸田に珍しくたじたじしてる透。まぁそれでも他の女子みたいな下心は全く感じられないから透も嫌がっているという訳では無いだろう。


「あれ、ハル今日は弁当もってきてるじゃん!」

「まぁ中身パンだけどな」

「なんだ、たまには体にいいもの食べなよ?」

「おっ、珍しく心配してくれてんのか?」


なんだかんだ言っても楓は良い奴だな。俺の事も一応考えてくれているみたいだ。


「それでついでに私にちょーだいっ!」

「前言撤回、それついでじゃなくてメインだろ」

「えー、いいじゃん!ハル料理上手いんだし」


......まぁそんな事はありませんでしたと。ええ、わかってましたよ。そんな優しさを俺に対して向けてくれる事なんて無いってことは。


「それにしても......」


今日も今日とて視線が痛いな。楓は言わずもがな美人だし、周りの男子はなんで俺みたいなのが構われてるのかが不思議で仕方が無いのだろう。「なんであいつばっかり.......」とか「陰キャの方がモテるのか?」とか聞こえてるからな。あいつらの家の郵便受けの口が無くなればいいのに。


そんな不謹慎な事を考えていたその時、最近になっては聞き慣れてしまった声が後ろから聞こえてきた。


「やほー!暁君、川上君、入谷君。相変わらずいつも変わらないメンツだねぇ。今日は新人さんも居るみたいだけど」

「......私達も一緒......いい?」


教室の喧騒がざわっと、一際大きくなる。そりゃそうだ。男子を寄せつけないと言われている月見と水瀬が自分からお昼を一緒しようと提案したんだから。また注目集めてるし勘弁してくれよ.......


「い、今入谷を誘ったよな?」

「俺達の耳が全員分集団ストライキでもしてない限りは、そうだな」

「やっぱり世の中顔なのかああっ!」


......全然俺は注目集めてなかった。なんなら認識すらされてないレベルで透のことしか話されていないな。喜ばしいことなんだが何か腹立つよな。大和、そんな顔をしなくても考えている事は同じだ。多分。


「入谷君に月見さんに水瀬さんに......何このメンツ恐ろしいんだけど!?」

「んー、まぁ私はハルがいれば何でもいいんだけど......」


糸田が面白いくらいにあわあわしていて、楓は面白いくらいにいつも通り。透に到ってはもう勝手に昼飯食べ始めてるし。図太さだけで言えばこのクラスの大黒柱だな。


「まぁまぁ参加していいって事で良いんだよね?それじゃあ早くお弁当食べよ!」

「透はもう食べてるぞ」

「え、早っ!」


いいともダメともまだ言ってないんだけどな。そんな事言った暁には放課後調理室に呼び出されてそこで謎の火事が起き、1つの焼死体が出ることであろう。

隣の席の田中君だったか中田君だったかにお願いし席を借り、即席のテーブルを作る。


「えーと、ありがとう、田中君」

「いや杉田だよ!」


......ごめんね。いや本当に。


そしてその後、楓と大和が俺の隣を陣取りその前に好春と水瀬が固まって食べていた。特に何も起きることなく終わるならそれでいいんだが......


ふと隣に目をやると可愛らしい弁当箱に入ったおかずを幸せそうに食べている楓が目に入る。


「ん、今日の弁当は真希さん作?」

「あ、そ、そうだよ?」


真希さんとは楓のお母さんのことで俺が小さい頃からずっとお世話になってきた人である。おおらかで世話好きで、保育園の先生のような雰囲気を感じさせる。


「ふーん......何かくれよ。パン1個あげるから」

「ん......じゃあこの卵焼き食べる?」


そう言っておずおずと箸で掴んだ卵焼きを差し出してくる。俺はいつもの癖で何も考えずにそれを食べてしまっていた。それを見ていた一部のクラスメイトがざわつく。

当然そんなことに気づくはずもない俺はそのまま楓と話し始める。


「ん、やっぱ美味いな。でも......」

「で、でも?」

「これ楓の料理だろ?何でそんな嘘ついたのか知らねぇけど......」

「な、なんで分かったの!?そ、その......不味いって言われたくなくて......」

「こちとら何年お前の幼馴染やってると思ってんだ。それくらい分かるわ」


少し頬を赤く染めてちらりと上目遣いでこちらを見てくる楓。いや今の会話に頬を赤く染めるような要素あったか?女子ってのはよく分からんもんだな.....


「おいおい......」

「出たね無自覚コンビ」


透と大和が聞き分けのない子供を見るような、諦めたような目で見てくる。はっとなって周りを見てみると、刺すような視線が何本も俺の事を狙っている。おい男子陣、楓もダメなのか!?


それに加えて男子のそれよりきつい2本の視線。水瀬と好春だ。こいつらに至っては何でなのか見当もつかない。その中で糸田だけはほんわかとした目線でニコニコしている......というよりは、ニヤニヤの方が正しいかも知れない。


「......1番の、ライバル?」

「桜庭さんいいな......」


美少女が二人揃って何かを呟いている。何言ってるのか分からないけど俺は悪くないよな?だよな?


「あ、暁君パンだけじゃ食べ足りないでしょ?私のも食べていいよ?」

「は!?」


そう言って水瀬が自分の弁当箱からハンバーグを取り出して目の前に近づけてくる。俺みたいな陰キャにこれを食べろと!?ハードル高すぎるわ!天空の花嫁か!

もはや視線だけで人を殺せるんじゃないかと言うくらいに男子の目線がやばい(語彙力)。あいつとか歯ぎしりで歯が欠けそうだ。


「......食べないなら、あることない事言いふらしちゃうよ?」

「水瀬はどこでそんな事覚えてきたんだ!」

「いいから食べて!はい!」

「分かりましたよ......じゃあそこ置いて?」


流石に友達と思われてるかも怪しい人に間接キスさせるのはちょっとな......しかも超絶美少女だし。しかし、水瀬はおかずを置く素振りすら見せない。ニコニコしながらこっちを見ているだけだ。笑顔のはずなのだが、心臓を掴まれたかのような重圧にたじろいでしまう。すると、痺れを切らしたのか水瀬がぷんすかと怒り始めた。


「はーやーくー!」

「いやだからここ置いてって!」

「タレ落ちちゃうから!」

「話聞けよ!あぁ!もう食べるぞ!」


何をしているんだ俺は......男子からは嫉妬や絶望の声が、女子からは黄色い声が飛ぶ。


「.......美味いな」

「本当!?やったねー!」

「おう、毎日でも食べれるくらいだ」


花が咲くような笑顔を見せた水瀬に、性別問わず皆心を奪われている。


「暁君がお願いするんなら毎日でも作ってあげるよー?」

「バカ、命とハンバーグ天秤にかけられるか」


水瀬のハンバーグは本当に美味しかった。高校生にこんなもん作れるのかって言うくらいに。男子共の凍てつくような視線のおまけ付きじゃなきゃ、本当に頼むかもしれない。お金は払うけど。


そうなると教室の中のざわつきが止まらない。別のクラスからも見物に来ているやつがいるくらいだ。おらっ!見物料払えぃ!


それを見た好春が不服そうな顔をして黙々と自分のお弁当を食べている。

不機嫌なのはいつもと同じかも知れないが、いつもとなにか違ったので声をかけてみた。


「むぅ......」

「ん、どうかしたか、好春」


そう言った瞬間、あれだけざわついていた教室が、水を打ったように静かになった。大和も透も、楓も水瀬も口をだらしなく開けて、俺の事を見てくる。


「おい、どうしたんだ?透?大和?」

「......」

「おーい?」


なんだこいつら。全員揃って無視か。たった今俺は集団いじめの現場を目撃してしまったのかもしれない。それにしても、休み時間なのに授業中より静かだぞ?すると、ギャラリーのうちの一人がぽつりと零す。


「............好春?」


.......あ。
















読んで頂きありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと感じたら、ブックマークや評価などお願いします!


感想での意見もありがとうございます。可憐との絡みを増やして欲しいとのことで、小話など挟んでいきたいと思います。他にも○○との話が読みたい!などあれば、感想でお願いします!

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