6.恐怖、再び
日刊ランキング1桁inありがとうございます!まだ書き始めて間もないのにたくさんの人に読んでいただいており、感謝です!
眩い朝日が差し込むある一日の朝。俺は1人の美少女から無視を決め込まれていた。ん、何?それはご褒美なのかって?そんな人の道を外れたような一部の変態は帰りなさい!
「つ、月見?」
「......」
「お、おーい、月見さーん?」
「......」
ちらりと冷たい目線を頂いてから、またふいと顔を前に向けられる。中学校の頃を思い出すなぁ......いかんいかん泣けてきた。昨日に引き続き不機嫌MAXな月見さん。もう勘弁してくれよ......
眩い朝日が差し込むある一日の朝。どうしてこんな事になっているのかを思い出してみよう。時は昨日の夜に遡る。
「いやー、毎日悪いねぇ!」
「そう思ってるなら毎日来るなよ」
「何それハルの癖に冷たいんだけど!」
もはや寝る前の日課でルーティンになっているような頻度で窓から侵入してくる楓。流石にそんなに毎日来られるとめんどくs......大変だからやめて欲しい。
「口ではそんな冷たい事言ってるのに、私の目の前にお菓子が置かれてるのはなんでなのかにゃー?」
「......食べないなら片付けるわ」
「うそうそ!ごめんって!」
取られまいとするように両手でお菓子を覆い隠している。かく言う俺も楓用にお菓子を買い置きしてあるのは、甘いと言うべきか。
「楓って......小動物みたいだな」
国民的人気を誇る棒状の、最後までチョコたっぷりなお菓子をポリポリと美味しそうに食べている楓の姿が何故かハムスターと被り、つい頭にふわりと手を置いてしまった。
「ちょ、ちょっと照れるよ.....えへへ」
「おっとごめん......ってなんでそんなに照れてるんだよ。子供の時からそんな事数え切れないほどして来てるだろ」
「もうっ!ハルはもっと乙女を理解して!」
「乙女......」
「残念だね......ハルの人生がたった17年で終わる事になるなんて......」
「すみませんでしたぁっ!」
旧知の仲である2人だけの空間が、心地良い。俺が生きているのは楓のおかけだと言うと大袈裟かもしれないが、本当に楓からは助けられてきたな。
また可愛らしくお菓子をはむはむと食べる楓を見てほっこりしていると、ベッドから小さな振動を感じた。
「んー、ハルのスマホの着信......え、「このは」ってあの!?」
「楓の言っているあのがどれなのかは分からないが多分そうだと思うぞ」
楓が某リアクション芸人のような大袈裟な驚き方をしている。まぁ仕方ないよな......桜花3大美女が俺みたいな陰キャに電話かけてきてるんだもん。
それにしても月見から電話とは初めての事。俺の方が驚きたいくらいだ。何かあったのか?
「......勝手に出ちゃお」
「あっ、おい!」
「もう出ちゃった!もしもしー?」
ピッと着信に応答したことを知らせる電子音が短く鳴る。
「もしもし......あれ、暁君じゃない......?」
「は、初めまして!ハルの幼馴染の桜庭 楓と申しま......あ、ちょっ!」
「おい楓、人の電話に勝手に出てんじゃねぇ!あ、もしもし月見?ど、どうかしたか?」
耳元からスマホを取り上げられた楓が不満げな顔で俺の事を睨んでいるが、この際楓は無視の方向で進めよう。2人まとめて学園の女神様との通話にどもってるの気持ち悪いな。
「暁君.....用の前に......」
「前に?」
「その女......誰?」
スピーカー越しに聞こえた声は至って普通の声色だったが、なぜか背筋が凍るような感覚がした。思わず壊れたブリキ人形かのように首だけ回し、楓と目を合わせる。
「ん、ハルどうしたの?」
「ナンカ......メッチャ、オコッテルッポイ」
「え、なんで!?」
「ワカンナイ......」
耳に当てているスマホは一言たりとも言葉を発さない。この前のカフェで見た月見の表情が一瞬にして甦ってくる。美人の真顔は怖いのだ。
そしてしばらく冷や汗だらだらで固まっていた俺に、次の一言が投げかけられた。
「......1人になったら掛け直して」
ディスプレイには、通話終了の文字が刻まれていた。月見って割と怒りっぽいんじゃね?とかいう失礼な事を考えてしまったのは秘密な?
ずっと目を合わせていた俺と楓は焦りと恐怖でしばらく何も言葉を発する事ができなかった。楓が恐ろしいほどの瞬きをしていて、ドライアイなのかと思った。我ながらアホなのかと。
「......何か申し訳ないが今日は帰ってもらっても?」
「......お菓子食べた後ね」
「帰れ」
無理矢理部屋から出そうとしたところ、俺以外誰もいないんだから素直に玄関から出ればいいものを頑なに窓から帰って行った。窓型のタイムマシン的な物がついてたりするのかな。しないか。
震える指を頑張って動かし、まず月見に1人になったという旨のメッセージを送る。するとすぐに電話をかけていいかと聞かれたので、OKサインを出した。いや、出すしかなかったというのが正しいかもしれない。
すぐに着信音が端末から流れてきた。正直あんまり出たくないところはある。
震えるスマホのディスプレイをタッチして通話に応答する。通話とは名ばかりの沈黙が続く。俺から話し始めるべきかと意を決したその時だった。
「あの......」
「ずるい」
ん、ずるい?狡い、ズルい、ズルイ?いかん緊張が半端なくて意味が頭に入ってこない。
「.....あの子と付き合ってるの?」
「いや、通話でも言ってたけど幼馴染だぞ」
「......それなら、もっとずるい」
......いやいや分からん。我ながら全く分からん。普通に考えても分からん。ずるいって何だ?というか何が?
「ずるいって一体、何のことを言っているんだ?申し訳ないが全くわからん」
「暁君は......私以外の女の子とは仲良くする......おうちにまで入れて.....,」
やばい......こんな時に不謹慎かも知れないけどヤキモチ妬いてる彼女みたいでめっちゃキュンってしたんだけど!?
「ち、違うからな!?月見みたいなその......かわいい子に遠慮してるだけで嫌いとか、そーゆー訳じゃないし、とにかく!月見のことは大切な友達とおもってるから!」
「か、かわいいって......そ、そんな事言っても誤魔化されない!」
「本当だって!友達だって言ったろ?」
「それなら.......」
この会話......何だか既視感があるんだけど気のせいじゃないよな?気のせいじゃないならこの次に来るのはきっと......
「......私にも同じ事、できる?」
「お、同じ事って......?」
「あの子......かえでって、呼ばれてた」
「......?」
楓って呼ばれてたって......そりゃ名前が楓なんだから仕方が無い。どういう事だ?
「わ、私の事も......名前で呼んで欲しい、な?」
はいズッキュン1発ノックダウン。なんだこの天使。明日会ったら背中に羽とか生えてないか確認してこないと。と言うか、いきなり名前呼びとか陰キャ男子にはハードル高すぎるんだが!?
なかなか声を発送としない俺に痺れを切らしたのか、月見は追い打ちをかけてきた。
「......名前で呼んでくれるまで、返事しないもん」
もんって何だ!もんって!いくらなんでも可愛すぎるだろうが!恥を知れい!恥を!
「お、おいちょっと月見?」
「.......」
「くっ......」
よく歌詞とかで大好きの4文字が言えないとかそんな訳あるかとか思っててごめんなさい!このはの3文字が言えないです!JPOP最高!
「こ、こ......」
「......」
「こ......の、は?」
「......はっきりと」
「っ......好春。これでいいよな?」
何だこの美少女。天使だって言ったけどとんだ堕天使だったぜ!ちょっとSっ気入ってんじゃねぇか!
「〜〜〜〜〜〜っ!!ご、ごうかく!」
「さいですか、それはありがたいわ......」
急に通話の声が大きくなる。俺最近このSっ気堕天使様に振り回されっぱなしだな......かわいいから役得ではあるんだけど。
「も、もっかい!」
「何でだよ!はずかしいだろ!」
「むー......」
なんだろう、いつもより更に語彙力が無くなって幼児退行したかのような話し方だ。声もいつものような無機質な声じゃなくて甘えたような声で......クる。何とは言わないが。
そして月見は、少しの間考えるような素振りをして、思い立ったかのように決意表明をした。
「じゃ、じゃあ、明日からもなまえじゃなかったら、返事しないっ!」
「えええええええぇぇ!?」
「可憐とは......仲良くしてる......私はダメなんて、言わないよね?」
「それとこれとは話が......」
それだけは思い留まり、撤回してもらおうと踏ん張ったが、
「やっぱり私は、ダメ......?」
そんな事を言われてしまっては、まともな男子であればもう何も反論なんてする事はできないだろう。俺は頭を垂れてこう思った。
(こんなの反則だろ......)
と、前置きがウルトラ長くなりすぎたが、時は今に戻る。
「なぁ、月見?」
「......なまえじゃきゃ、や」
「う......こ、好春......」
「ん、なぁに?」
顔全体に笑顔を貼り付けて振り向いてくる月見。あ、ぁ、俺何度この美少女に意識刈り取られそうになるんだろう。
「か、勘弁してくれよ......」
「......暁君が、ひいき者なのが原因」
「はぁ......もう諦めるしかないのか」
「そ......そんなにいや?」
「嫌じゃないが......恥ずかしくなる」
半歩後ろを歩く俺を、月見が心配そうにちらりと見てくる。そんな顔をさせてしまった俺を簀巻きにして流刑に処したい。
「じゃあそろそろここで......じゃあな、月見」
「......」
いつも通り学校の少し前で月見に別れを告げるが、返事を返してくれない。じとっと冷たい目線をこちらに向けて、小さく呟いた。
「......ちがう」
「あぁっ、もう!じゃあな、好春!」
「......またね」
誰かこの堕天使から俺を救い出してくれ!金はいくらでも出す!500円までなら!
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