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4.見えないという不便

オンライン授業が始まるかもしれない......


そして次の日の朝のこと。まだ太陽が姿を現してから間もないような時間だったが、俺は目を覚ましていた。人肌程度まで温くなったコーヒーとトーストを胃の中に流し込み、空腹を満たした俺は、特に理由はないが今日は早く家を出ることにした。


「遅刻ギリギリじゃない時間に家出たのは久しぶりだな......」


いつも俺はギリギリの時間までベッドに身をうずめて幸せに浸っている。べ、別にぐうたらしてる訳じゃないんだからね!?


いつもと違いゆっくりとした歩幅で進む風景はより多くの物を目を写すことが出来た。空にかかる飛行機雲、道端をのんびりと歩く猫、野に咲く可憐な花に、こちらに走ってくる美少女。......美少女!?


「暁君......おはよう、昨日ぶり?眼鏡かけてたから一瞬誰か分からなかった.....」


相変わらずの言葉っ足らずな感じで満面の笑みを浮かべている美少女......そう、月見好春と朝から遭遇したのだ。ちなみに俺は目が極端に悪く通学中は眼鏡で登校している。学校でつけてない理由は透と大和に死ぬほど馬鹿にされたからだ。あいらぶコンタクトレンズ。


「おはよう月見。ちょっと驚いたぞ」

「暁君って......この辺りに住んでるの?」

「え?あぁ、そうだぞ」

「割と近くに住んでた......」


こんな場所で会うって事は月見もこの辺に住んでいるという事だろう。女神の近所に住んでいたという驚愕の事実を知りつつ、折角会ったんだからと一緒に登校する事なった。


「暁君......ぽてくんの出てた新曲聞いた?」

「もちろん聞いたぞ。あのハイトーンボイスはマジで聞いてて飽きないよなぁ」

「同意。今作も最高だった......」


ぽてくんというのは、ネットで活動する歌い手のうちの一人で、プライドポテトをヘッダーの画像にしていた事から、ぽてくんと呼ばれるようになったそうだ。月見とは歌い手関連の話がめちゃくちゃ合うので、とても話しやすい。


「暁君とは話が合う......明日からも一緒......?」

「話が合うのは分かるけど......一緒に登校は不味いだろ。男子共に何を言われるか分かったもんじゃない」

「私は全く気にしない......」


月見が気にしなくても俺が困るんだよ。学校の3大美女と一緒に登校するとか公開処刑すぎる。マジで何されるか分かったもんじゃない。


「あのなぁ......俺みたいな男と月見が一緒に歩いてるだけでも色々言われるんだぞ」

「暁君は自己評価が低すぎるだけ......それに、昨日言ったマスクと髪を変えるだけでも違う......」

「俺は自分を変える気は今の所無いからな」

「なら、他の人にバレないように途中まででも......?」


月見が悪戯がバレた子供のような悲しい表情で俺の顔を覗き込んできたから、断りきれずにそれを了承することになった。


そして俺と月見は少し時間をずらして教室に入った。




「おはよっ」

「おはよー!」


朝から俺に声をかけてきたイケメン透と美人水瀬。二人が一緒にいるだけでも十分美術作品になるだろう。


「朝から熟年離婚した夫みたいな雰囲気醸し出してるけどどうしたの?」

「どういう例えだよ.......」


まるで経験したことがあるような水瀬の例えに呆れを感じながら自分の席に着く。透を通して水瀬ともかなり話す機会が増えただろう。それに比例して刺すような殺意が背中から襲ってくるのだが。


「んで、結局どうしたの?月見さん絡み?」

「ん、まぁそうだな」


からかうようにニヤニヤしながら聞いてきた透につい素で返してしまった。ニヤニヤしながらしばらくの間固まっていた透は気持ち悪かった。


「いやまぁそうだなって......何淡々と答えてるの!?詳しく説明してよ!」

「うおっ、急に大声出すなよ......別に透が期待してるような大したことはねぇよ」


なんだかんだ言って透も三大美女には興味があるらしい。こんな取り乱した透は久しぶりに見た気がする。俺は周りに聞こえないように小さな声で透に昨日あったことを説明した。


「陽斗......君1回この世から移住した方がいいと思うよ......」

「遠回しに死ねって言ってんじゃねぇか」

「しょうがないじゃないか!喫茶店デートに、一緒に登校に、連絡先交換?展開が早すぎるよ!」

「だからデートなんかじゃないって。趣味が偶然合ったから話し相手に選ばれただけだろ。あと透、声がデカい」


どうやったら俺が月見とデートなんてぶっとんだ考えになるんだよ......。透にはそれがデートって言うんだよ!って言われたけど、そんな捉え方をした暁にはあだ名がナルシスト暁とかいう売れてないピン芸人みたいな物に変えられること間違いなしだろう。


「おはよっ、陽斗に透。朝からどうしたんだ?」


始業の鐘が鳴る5分程前、眠そうな顔を隠そうともせず大和が登校してきた。透がいちいち大袈裟に説明するものだから、3分前に見た透と同じような反応をまた見ることになった。


「陽斗......焼きそばパン2個な」

「いやなんでだよ!」


2人の無言の圧力に負けて結局昼休みに焼きそばパンを奢る約束を半ば強制的に交わされた。




そして時は少し進み、昼休み。昼食を買いに購買に行こうと廊下に出た時だった。もちろん透と大和は焼きそばパンをせびるために着いてきている。


「痛ッ......」

「ん、どうした?大丈夫か?」


不意に目の奥に飛び込んできた不快感。恐らく目の奥に何かが入ってきたのだろう。


「悪いけど目洗ってくるから先に購買行っててくれ」

「ん、了解。何か陽斗の分買って来た方が良い?」

「あー、適当に買ってきて。ありがとな」

「馬鹿、焼きそばパンのためだわ」


目を擦って見ても取れる気配が無かったので、心配してくれた透と大和に大丈夫とだけ告げ、目を洗いに行くことにした。あいつらにパンを奢るために金渡すのもちょっとシャクだったが。



「お、おかえり。陽斗の分ここ置いといたからな」

「ただいま。ぼやけて何も見えねぇわ」


目を洗った後、コンタクトに違和感が残ってたから外して洗浄液に浸しておいたため、至近距離の物以外ぼやけて見えない。幸い声で透や大和は分かるが、その他の人は何も分からないだろう。


「陽斗から頂いた焼きそばパン、すっごく美味!」

「何だこのイケメン埋めていいか」

「あれ、眼鏡はかけないのか?ぐふふ。」

「何だこのフツメン埋めていいか」

「おい泣くぞ」


優しい声の透がパンを頬張りながら煽りを入れてくる。視界がぼやけててよかった。見えてたら絶対殴ってる。大和は嫌味ったらしい思い出し笑いをこらえながら眼鏡を勧めてくる。例え月見にかわいくお願いされたとしても眼鏡はもうかけねぇ。......やっぱちょっと揺らぐかも。



「あれあれー?盛り上がってるじゃん!何の話してんの?」


昼飯を食べていると、何やら女子の声が聞こえる。俺にそんな親しげに話しかけてくる女子はいないから透か大和の友達か?......自分で言ってて悲しくなってきたわ。


「あー、陽斗に眼鏡が似合わなすぎるって話。コンタクト外してるから何も見えてないんだよ」

「何と!暁君が私の美しい顔を見られないと申すか!なんともったいない......」


そんな調子付いた事を言って俺の方に近づいてくる女子。そんな事本気で言ってるとしたら痛いにも程があるんだが......


「すまん、マジで誰か分からんからちょっと失礼するぞ?」

「えっ......ちょっ、ッ......!?」


うざったい前髪を捲りあげて正体不明の女子に顔を近づけると......あぁ、何だ水瀬か。心なしか顔が赤くなってる気がするし何より固まってしまって動かない。もしかして体調でも悪いのか?


「お、おい水瀬?大丈夫か?」

「......はっ!ご、ごめん!大丈夫だから......!」


俺が頬に手を伸ばすと、距離を取るように離れられた。突然触れようとしたのが悪いとはいえ、そんなに露骨に嫌がられると少し傷つくな.....


流石にこのまま見えないままだと不便すぎるので仕方なくコンタクトを付けると、透と水瀬が何やら小声で言い合っている。美男美女は顔を寄せて話しているだけでも様になるのな。


「ちょっと誰あのイケメン!?俳優って言われても違和感ないレベルだよ!?」

「いつもそうやって本人に言ってるんだけど......自覚ないみたいだね。僕達は見慣れちゃったけど初見は驚くのも無理ないよ......」

「うぅ......顔すごく熱いんだけど......」


何の話をしてたのか聞こうとしたら俺には関係ない話だって突っぱねられた。1歩水瀬に近づく度に1歩ずつ距離を取られるんだがこれ完全に嫌われたよな......


「また陽斗の虜になった女子が増えてしまったな」

「そんなの1人たりともいねぇわ。あの態度見ろ。むしろ嫌われただろ」

「お前ってやつは......」


水瀬近づいていた事によって動かなくなっていた大和がいつの間にか俺の横でニヤニヤしていた。ガチで落ち込んでるんだからからかいに来ないでくれよ。


「俺に仲のいい女子がいないってことは知ってるだろ。それどころか話してくれる女子すらいるか怪しいのに......ん?」


ネガティブオーラマックスで大和に愚痴っていると不意に肩を叩かれた。


「ん、なんだ......って月見!?」

「......」


振り返ってみるとそこにはいかにも不機嫌そうな顔で俺の方を見つめていた月見がいた。水瀬と一緒に教室に帰ってきていたんだろう。月見の名前を呼んでしまったせいで更にクラスメイトからの視線が痛くなったんだが。


「つ、月見さん?ど、どうなさったんですか?」

「......ふんっ!」


おっとつい目上の人に対する敬語が出てしまった。腕を組んで顔を背けて、いかにも怒ってますよと体で表現している女神様が女神様しすぎていて、大和が悶絶していた。なんだこのフツメンキモい。


「え、かわいい......じゃなくて!なんで怒ってるんだ!?」

「......ひいき者の暁君なんて知らない」

「えええええええ!?」


透と水瀬はわたわたしてるし、拗ねている月見はかわいいし、クラスメイトの視線は痛すぎるしもうめちゃくちゃだ!











読んでいただきありがとうございます!少しでも面白い、続きが読みたいと感じたらブックマークや評価などお願いします!


矛盾の報告、ありがとうございます。細かいところまで読んでいただき、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒頭の「3日後」ってのは喫茶店で月見と会ってから3日後ってこと? その後の会話では「昨日」喫茶店で会ったって風に話してるから、時系列がよくわからん。 あと眼鏡は登下校の時は付けてて、…
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