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13.お久しぶりです

本当にお久しぶりです。アドレスとパスワードを忘れてログインできなくなって2年が過ぎたアカウントに何故かログインできたので書き溜めしてあったのをひっそり投稿します。


「......ふんふふーん」


そんな明くる日の朝、何やらご機嫌そうに鼻歌を歌う月見。珍しくニコニコしながら歩いており注意して見たらピンクのオーラが見えてきそう。うん。かわゆい。かわいいではない。かわゆい。


「......どうしたんだ?」


あまりにも気になったのでどうもなげに聞いてみると、月見は少し立ち止まってこちらを向き、笑顔を崩さずに言った。


「暁君と、何も気にせずに登校できるから」

「んふぉっ!?」


破壊力抜群なセリフに吹き出す俺を横目に月見は何事も無かったかのようにまた前を向き上機嫌に歩き出す。......何だよんふぉって。お茶と注いであったビール間違えて飲んだ時の俺か。恥ずかしいわ。


「......さすがにその間違いは恥ずかしい」

「やだこの学校エスパータイプしかいない」


みんなミュウツー。



「そういえば昨日、メッセージ返してくれなかった......寂しい」

「あー、昨日は楓がいたからなぁ。申し訳ない」

「むぅ......わたしも、いく!」


出ました。伝家の宝刀「むぅ」。少し唇を突き出して不服そうな顔をするだけであら不思議。あらゆる男の子は言うことを聞いちゃいます。でもここでいいよって言うと本当に来そうな予感がするから普通に断った。


そんな感じで困ったようにへらりと笑っていると、それに合わせて月見もまたふわりと微笑んだ。


「私が思ってるだけかもしれないけど......暁君が私にあんまり遠慮しなくなってる......から、少し嬉しい」

「なんだそりゃ。まぁあんだけ情けない所見せちゃったらもうこれ以上遠慮する事なんてねぇよ」


照れ隠しに両手を頭の後ろに回して応える。すると月見ははっとした表情で首を傾げる。


「......プロポーズ?」

「思考回路がスクランブル交差点」


スクランブル交差点。



時は移り正午。終業の鐘と先生の号令が授業の終わりを示すと、生徒達は友達同士で集まったりして自由に昼時を過ごす。


「透、大和。今日は俺もう飯買ってきてる」

「お、奇遇だな。俺もだ」

「僕も今日はお弁当だから食べれるよ」


それはまた陰キャである俺も例外ではない。実は生粋のマザコンである透はママ作のお弁当をいち早く食べ始めている。俺達三人の中の一番のイケメンの中身は一番残念なのである。そのことにみんなが気付くのはいつになるのだろうか。


 「自慢のママの弁当はおいしいか」

 「そんなの当たり前でしょ。聞くまでもないよ」


 大和がマザコン弄りをするも当の本人はそこの事に気づいてないみたいだ。大和は諦めたようにため息をついておとなしく自分の弁当を食べ始めた。俺は俺で持参した菓子パンの封を破る。ギザギザのところから開けがちだよね。菓子パンとかポテチとか。


 「この魔性のギザギザ考えた人天才だと思うわ」

 「俺の次にな」

 「死ね」

 「直球!?」


 球速150kmドストレート。



 「ところで陽斗。昨日生徒会から呼び出し食らってたけどあれ結局何だったの?」

 「……いや、別に大したことじゃなかったから」

 「あ、そう?陽斗が何かやらかすとかありえないからそうだと思ったけど」


 実は生徒会長と昔から関わりがあって絡まれてたとか言えないよな。俺からしたら面倒見つつ見られつつの面倒くさい腐れ縁だとしても、他人から見たら全校生徒からの憧れの的の生徒会長だからな。


 「生徒会と言ったら、あの人だよな!月城生徒会長!面倒見の良さそうな美人とかすげーよくない!?二人きりで勉強教えてもらったり、料理作ってもらったりとか憧れるよな!?」


 噂をすれば凛さんの話。大和が興奮した様子で熱く語っているので幻想を壊したりはしないであげよう。……あの人が料理作ってる姿とか想像すらできないな。何ができるか分からん。そんな失礼な想像をしている間にも大和の話は止まらなかった。


 「スーパー美少女の手作りオムライス、食べてみてぇ!」

 「まぁ、料理ができる女の子っていいよね」

 「その点に関しては俺も完全に同意だな。料理上手い人と結婚したい。結婚できるかできないかは別として」

 

 それが凛さんであるとは一言も言っていないが。そうやって肯定の意思を俺と透が示した瞬間、教室がざわり、騒然とした。話に夢中で気づいていなかったが何故か教室がめちゃくちゃ静かになっていたみたいだ。……え、俺また何か失言してた?


 「私料理なんかできないよ~!」

 「嫌々でもママのお手伝いしててよかった!」

 「決めた!絶対料理上手くなる!」


 透は元よりで、陽斗も突然現れたイケメンで人気を伸ばしてきている有望株の一人、大和は目立ったイケメンではないがそれなりに見た目がよく性格はまっすぐで隠れて人気があるのだ。そもそも陽斗は誰にでも分け隔てなく優しく、素顔を出す前はそれがマイナスポイントだったが今となっては人気を増長させる要因の一つとなっている。当然そんな人気者三人のグループの昼休みの会話は、最近の女子の注目するべき一大イベントとなっている。


 最も、もっと情報を聞かせて!と言わんばかりの女子達の視線に晒されていることに透以外の二人は全く気づいておらず、透も何か見られているな、程度にしか認識していないのだが。


 「……私も、ぜったい!」


 そして誰も知らないところで一人の美少女が料理をする決意をしていた事にも、また三人は気づいていなかった。この前に月見だけ弁当を陽斗に渡さなかったのは、渡さなかったのではなく渡せなかったのだ。水瀬も桜庭も料理を小さな頃から教えられてきたが、月見はそうではなかった。学校に持ってきている弁当もまたお母さんの作ったものだった。


 「……月見さん、何してるんだろな」

 「知らん。けど、かわいい」

 「それな」


 小さくガッツポーズをしていた月見を見て後ろの席で昼食を食べていた男子三人組はまた彼女の魅力に絡め取られていた。


 


 無事午後の授業を終えた俺は帰路についていた。しっかり整備されているとは言い難い道路を歩きながらちょっと暑くなってきたな、みたいなことを考えていた。家の鍵を取り出し鍵を開け、靴を揃えて外で待つ美少女に入るように促し……


 「……え、なんでいんの?」

 「陽斗が来てくれないから遊びに来たんだぞ!」

 

 それは昨日ぶり、凛さんだった。茶色がかった長めの髪を耳にかけながら、満面の笑みで家に上がろうとする。楓といい凛さんといい、俺の家にプライバシーなんてものは無いようだ。


 「楓は自由に出入りしていると聞いたぞ!お姉さんとも遊んでくれていいだろ!」

 「一応言っておくと、楓は入り口からは入って来ませんからね」


 しばらく目を合わせて固まっているとむくれたような顔をしながら抗議してくる。仕方がないので同じように笑顔で入ってくる明るい幼馴染の事を思い出しながら、来客用のスリッパを凛さんに渡した。仕方がないので。


 「やっぱりかわいいお姉さんには陽斗も優しくなるんだな!」

 「帰りたいのなら帰ってもいいんですよ?」

 「うそうそうそ!ごめんって!」


 振り返って入り口のドアをもう一度開けて手でしっしっと出ていくように促すと凛さんは片目を閉じてあざとくお願いをしてくる。昔から知っているとは言えど道行く男子が振り向くほどの美少女なのだから自重してほしい。何が言いたいって?かわいいんだよ!


 「それで、本当は何の用なんですか?」

 「え、本当に遊びに来ただけだぞ?」

 「え」


 え。


 そんなこと言ってええんか!暁 陽斗の中の暁 陽斗が滅びのバー〇トストリームしてこの辺一帯吹き飛ばしてまうぞ!日本一大きい湖が琵琶湖じゃなくなるぞ!ええんか!


 「ええんやで!」

 「この学校軽くミュウツーするやつばっかだな!」

 「ミュウツー……?」

 「いやそこまでは読めないのかよ!どうせなら全部読めや!」


 あらやだ、エスパータイプも万能じゃないみたい。

 

 

  

 










この小説を読んでいただきありがとうございます。

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