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内包的リリーオブヴァレー  作者: COVID-19
-SAW-
5/20

走-①

 あ、死んだな……。

 鈴花がそう悟った瞬間、視界の端に黒い布がちらりとあらわれた。

 路地の先で、黒いベールの女が道端で眠っている野良猫をみつめて立っている。さっきまで追われていたことを忘れているかのように、ただそのもふもふした球体に心を奪われている。


「腕時計!」


 鈴花が叫ぶ。目の前の男がぎょっとする。


「あれ、お前……」

「ごっ、ゴメンナサイ!」

「え? おい、コラ逃げんな!」


 鈴花が走り出す。

 その後ろを、男が追いかける。


「待てって、スズカ!」


 何故か、男が鈴花の名を呼んだ。


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