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葬-④
「うわ」
路地を抜けた瞬間、鈴花の体はサンドバッグのような感触をもつ何かに衝突した。
ゆっくりと後ずさると、逆光の中にひとつの大きな人影があり、その顔がゆっくりと鈴花を振り返るのがみえた。
「んだ、テメー」
ギラリと反射する金属製のピアスをした金髪の男が、鈴花を見下ろしていた。
「あ、あの……」
「人にぶつかったらアイムソーリーだろ?」
男の口の中に、キバのような歯がずらりと並ぶのが見えた。鈴花は己の顔から血の気が引いてゆくのを感じ、思わずその場で後退りをする。
その瞬間、鈴花は男の上半身が裸であり、何も着ていないことに気がついた。
(……刺青……?)
なぜすぐ気がつかなかったのか? 鈴花は男の体をもう一度観察する。男の上半身にはそれ自体が服であるかのように無数の刺青が刻まれており、まともな肌色は二の腕と首の一部にしか確認できなかった。
そうまるで、タトゥーのTシャツを着ているみたいだ。それぞれは細かい英文のようなものの集合体で、密度を増して男の肌を包んでいる。