表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

未来に向ける最後の手紙

評価はお手柔らかにお願いします!

面白ければ、感想を是非とも。ブクマもよろしければ。

 終焉は、この未来に向けられた一通の手紙をもって開始された。


『 拝啓、これを読んでくれる優しき君へ


僕の名は、グラス・ラビット。そう、タダの野良兎さ。


ゴホン。つまらない冗談はさておき、少し僕の話をしょうかと思う。どうして、いきなりそんな話を?まあ、細かい話はいいじゃないか!ささ、座って。コレを読みなよ!


さて、始めるね。


僕の生まれは非常にありふれたものだった。農民の長男としてこの世に生を受けた僕は、自然と戯れ、動物と共に育った。


特筆すべき能力と言えば、言語を覚えるのが得意だったことと、やたらと動物に懐かれていたことぐらいかな。あ、アップルパイも結構自信があってね、村中を配り歩いたこともあって。評判も中々に良かったんだよ?


正直、それ以外は特に無いかな。名前も壊れ物みたいな響きだし、自慢も出来やしない。というよりも、張り切って名乗れない。『やあやあ、我こそはグラス・ラビット!』とか、締まりがないでしょ?


もっと勇猛な響きだったらなァ、と夢想した事も一度じゃあ収まらない。ほら、英雄らしい名前。分かるだろ?アルフォンスとか、ルシウスとか。


でもね、こんな僕にも誇れるモノが沢山できた。一緒に戦う仲間もいるし、僕のために悲しむ人々だっている。そして何よりも、僕の帰りを待ってくれている人がいる。


あ、すまない!僕としたことか、何故農家の長男如きが、戦うとかふざけたことをぬかしているのか説明していなかったね。


今、戦時中なんだ。もし、この本を手に取り、ここまで懲りずに読んでくれたのなら。もう戦争はきっと終わっているのだろう。なにせ、戦時中でこんなモノを読む人なんざいるハズもないし。


君は人間?それとも、エルフや精霊に連なる方?はたまた、高貴な竜の血を引く竜人?あ、もしかしたら、魔人や不死者の類いかな!?


違っていたらゴメンね。僕は、これを読む君が善人であることを信じ、コレをまっとうな方法で入手したと信じて、願いを託したい。


僕の通り名は、『百獣の奏者』。ここら最近でかなり有名になっちゃったから、廃れるまで時間がかかるだろう。自惚れじゃなきゃいいけどね、あはは!


うん、本題に入るよ。これは『百獣の奏者』としての僕ではなく、グラス・ラビットとしての僕の願いだ。だから、引き受けなくても構わないし、君にそんな義務があるとも思えない。


そもそも、これから()()()()()にできる唯一のことは、こい願うことだけだけどね。


僕の仲間、『太陽の勇者』クリス・フレア・ソラ―ル、『常闇の巫女』ヴィクトリア・クロウ・リリス、『万武の覇者』ギル・エライン・ミカエル、『千里眼の魔女』フェン・ホウ。この四人がまだ生きているのならば、彼らを探し出して、一言だけ伝えて欲しい。


『ゴメンね。約束を破ってしまったよ』、と。そして、『みんなありがとう』


どうか、伝えて欲しい。


   グラス・ラビット 『暁の守護者』副隊長より

  これを読む君の征く道に、幸多からんことを願って。

                           』


 封筒に上質な紙を丁寧にしまい、祝福の施された蝋で封をする。これでいいんだ。これで正しい、と僕は僕に語り掛ける。


 震える手を押さえつけ、こぼれ出そうな涙を懸命に呑み込む。傍で僕を見守ってくれている最初の相棒、白き月兎のムーンくんを手招く。


「ムーン、おいで。この手紙を、善き心を持つ人に渡すんだよ。いいね?」


 子供のサイズがあるムーンは、月兎と呼ばれる精霊の一種で、最高位のテイマーである僕が使役する友の一匹だ。彼は魂の『色』が視えるらしく、『ものを見る眼』がどんな存在よりも優れている。


 だからこそ、僕は彼にこの手紙を託そう。明日、大いなる邪神を討ちに行く、そんな僕の『遺書』を託そう。


「今までありがとう。またね」


 僕たちの間に、これ以上の言葉は不要だ。ムーンは薔薇の色を持つ双玉で僕を見上げると、一回だけその鼻を僕の手に押し付けた。


 これは、別れの挨拶。そして、僕の門出を尊重する友としての挨拶でもある。そのことが、痛いぐらいに嬉しい。


 白き銀の粉末として姿を消すムーンを横目に、僕は箱蛙のボックスくんを召喚した。名前の通り、胃の中に異空間の『箱』が存在する凄い奴なんだ。一部の地域では魔物扱いされることもあるけど、こいつも僕の友だ。


「お願い」


 手短に頼むと、心得たとばかりにボックスは僕の『切り札』を吐き出す。大いなる古き神を、()()()()()()()()()『切り札』。


 意気地なしの僕でも、やっと別れの覚悟ができた。


 みんなに甘えるのもここまで。


 さあ、大いなる善のために、禁忌を犯そうじゃあないか。



勘違いは第三話から! 

愛のブクマ、憐憫の評価、激励の感想をお待ちしております。(五体投地)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ