第一章 四月その7
一通り滑り方、そして転び方を教った後、今度は石を投げる練習となった。
「石の投げる(デリバリー)練習ね?」
「…」
野山先輩にまたしても心を読まれる。
「まずはブラシを持ってフォームやろうか」
旭先輩の真似をして僕らは陸上選手がスタートするような格好で両手を氷につく。
『最初はストーンは持たないんだな…』
「甘い。カーリングはスウィープ三年、フォーム四年と言ってな。七年間は基礎練習ぢゃ。初めからストーンを持つなどもっての他」
「ハナちゃんのは冗談だから気にしないでね」
野山先輩がボケるとすかさず旭先輩が突っ込んだ。
野山先輩の冗談はともかく、この体勢で滑るのはとても難しかった。
「最初は足を下げてから前に出すだけでもいいよ。キミは体幹あるから、すぐバランスとれるはず」
そんな練習を長峰友利と僕は何度も繰り返した。
その後は実際にストーンを持ち、離す(リリース)までやってみる。
が、とても反対側にある円までは届かない。
「届かなくても、いい。今は変に手でリリースしないこと。それよりはフォームを、しっかり」
こういった基礎を大事にするという言葉はとても分かりやすく、剣道をやっていた僕には理解しやすいものだった。
「小手先でやらないってことですね」
「そゆこと(^^)d」
野山先輩が親指をびっと立てる。
『何故か…いま顔文字が見えたような??』
不可思議な先輩との初日はカルチャーショック(?)の連続だった。