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最後まで、Yes。  作者: 上之下 皐月
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第三章 六月その7

六月中旬。

引き続き機嫌の悪い天気にうんざりしながら、僕は祖母のいる介護施設に向かった。

別居中の母とは連絡を取っていないので、施設で顔を合わせるかどうかもその時次第。

今日は母は来ていなかった。

「…天気悪いけど外に行く?」

「…そうねぇ。梅雨の時期は梅雨の時期でいいものだから。行こうかしら」

…そういうものだろうか、と思いながらも車椅子を押して歩く。

廊下を通り抜けテラスに出る。

空は相変わらず灰色で肌寒さを感じた。

「…寒くない?」

「お部屋が暑いから。ちょうどいいわねぇ」

確かに介護施設というのは本当に暖かいからそうかもしれない。

それに、祖母は一人で自由に外の空気も吸うことが出来ないのだ。

自分なら気が滅入ってしまうかもしれない。

しばらく灰色の空と景色を祖母と眺める。

「…部屋に戻ろうか。やっぱり寒いよ」

「…そうね」

せめて晴れ間でも出てくれれば良いのだが、そのような様子もない。

そんな空でも祖母は名残惜しそうにもう一度見て、部屋に戻ることを了解してくれた。

テラスから部屋に戻る途中、僕は思いがけず見知った顔を見付けてしばし立ち止まる。

向こうも車椅子を押しながら廊下を歩いてくる…リューリさんだった。

そう言えば五月にここに来たときに、入り口で擦れ違った…気がする。

お祖父さんだろうか?

楽しそうに話ながら向かって来る。

こちらに気付いてにこり、と笑いかけてくる。

祖母にも。僕にも。

「こんにちは」

「ええと、はい、こんにちは」

「じめじめと困るわね。洗濯物も乾かないわ」

「ほんと。こんな視界が悪いと良い写真も撮れないな」

軽く皮肉を飛ばし合う。

「後で。ラウンジで、どう?」

「ああ、楽しみに待ってるよ」

彼女とすれ違い、部屋に戻る。

「お友達?仲が良いのね」

「いや、カーリングの知り合いだよ」

祖母を部屋に戻し、担当の介護士さんにお願いし、ラウンジへ移動する。

自動販売機で何にするか迷ったが結局いつぞや野山先輩と飲んだトマトジュースを見付け買う。

さて、今日は何を話すか。

僕はえいやっと缶を開けた。

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