魔王1
ワシ、大国アルズシナハの国王。
息子のオースティンが勇者として旅立ち、道中で仲間も見つけて、パーティーを結成。
瞬く間に魔王軍幹部を撃滅し、ついには魔王城までたどり着いた。
そして対決の結果、見事魔王を下し勝利をつかんだとの報告が届いたのが先日で、今日はオースティンが帰還する日であった。
そして息子は無事な姿を見せてくれたのじゃが……。
「……おい、息子よ。その、禍々しい魔力を放つ、大蛇の下半身を持つ女子は、いったいなんじゃ」
「え、魔王ご本人だけど?」
「じゃから、なんで魔王がここにおるんじゃと言っておるんじゃ! 魔王を下したのでは無かったのか!?」
「うん、平和的に事を収めたんだ。倒したとは言ってないから、嘘は付いてないよ」
「どういう事じゃ、説明せい!」
「『世界の半分』をくれるって言うから、アルズシナハ以外の人間界を貰う代わりに、彼女――アジ・ダハーカが支配する領土以外の魔界をアルズシナハ領としてもらったんだ! 魔界も一枚岩じゃなくて、複数の国家に分かれていたんだって! 驚きだよね!」
「なんじゃと!? なんてことをしてくれたんじゃ、この馬鹿者が!?」
「じゃあオレ、これから彼女の軍と同盟組んで、一緒に魔界を統一しに行くから連合国の相手はよろしく! アルズシナハに栄光あれ!」
「またんか、この、売界奴がぁあぁあぁぁっ!!」
その年、アルズシナハ以外の人間国家は、すべて滅亡した。
そして翌年、ダハーカ国以外の魔界国家は、すべて滅亡した。
かくして、二大国家による支配により、人間界および魔界は平和的に統治される事になったのであった。
「本国は平和そのものなんだから、問題ないよね!」
「問題大有りじゃ、この愚か者がっ!」