6月30日「雨の中」
電車から降りると、今朝の雨が酷くなっているように見えた。
仕事終わりの私には、この雨の中、帰り道を歩いてゆく気力はない。
そう断言したところで、雨が止むわけでもなければ、家が迎えにくるわけでもない。それどころか時間が経てば経つほど歩く気力も体力もなくなって行くのは目に見えていた。
こうなると歩くしかない。
私はゆっくりと前を見据えながら、踏み出していく。
帰路に着くとは、本当はウキウキするものだと思うのだが......
ここまでで、自分に向かって否定形を使いすぎたせいか、「私にはなにもない」と思うぐらいには疲れ果てていた。
この年になって、何故こんなことを思うのだろう。
そう考えるぐらいには、仕事と家庭と趣味と人付き合いと、多くの予定を抱えている。そして、そのどれもが人から否定されてるように思える。しまいには、好きで始めたことが好きじゃなくなってしまい、毎日をこなすことだけが、私の頭を支配する。
「もう良いだろうか?」
頭にそれが過ぎった時に、やっと自分の意思を思い出すことが出来、踏み出した一歩によって、その意思を手放すことになる。
最後の私の顔はひどく幸せな表情だったと思いたい。