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赤錆の剣を手に笑う  作者: 十十世
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三年前


三年前、学校まるごと異世界に飛ばされた俺たちは、武装した人間に包囲されて追い立てられるように国王の元に連れ出された。その国王曰く、俺たちは英雄足りうる器を持つ異邦人であり、その力を持って国に与するならば相応の待遇でもてなす用意がある、と。


そして発言を許された一部の学生や教師と、国王やそのそばに控える人物等で議論を交わした結果、俺たちに残されたのは三つの選択肢だった。


一つ目、英雄足りうる器を十全に発揮し、そのギフトを持ってして国の敵を屠る一騎当千の英雄になるために研鑽すること。


二つ目、ギフトが戦闘向きでなかった者は英雄となることは出来ずとも、国の役人として能力を使い働くこと。


三つ目、国に与することを嫌うならばこの国に仇なさぬと誓いを立てることで、これから国として関与することはない。その際には、一般的な生活を一月出来る額を与える。


どれも国益を一番に置いた一方的な条件設定だったが、これでも議論の末にいくぶんかマシになったものだった。その事実に気が付いた者がその時いったいどれだけの数居たかは定かではないが、かなりの人数が一つ目の条件を飲み込んだのを見ると随分と自分の都合のよくなる未来を想像する者が多かったのは確かだろう。


結果、一つ目を選んだ者は半数が死亡。生き残った半数のさらに半分は負傷等で再起不能に陥り、今もなお前線に立ち続けることの出来ているのは僅かだという。


一番マシなのは二つ目を選んだ奴等で、今日もせこせこ上役の指示で働いているのだろう。国からすればギフトの能力を度外視しても、安定して高水準な教育を施された日本の学生はそれだけで優秀な文官になりうる優秀な人材だったのだ。

中には貴族に見初められて玉の輿に載っかったやつもいたそうだが、こっちで生活してきて貴族のいい話は聞かないのでどうなったのかは知らないが、ロクな目に遭わないんじゃあないかと内心思っている。


そして、三つ目を選んだ奴等だが……俺も含めてそう良いもんじゃあなかったっていうのが本当のところだった。


ほとんどのやつらは一つ目を選んだ奴等ほど悲惨な目にはあっていない筈だ。自分の目の届く範囲ではそういった話は無かった。


けど、辛いのはそこからで、そもそも最初に貰った金では一月どころか一週間程度しかまともな生活を送ることはできなかったのだ。最初の議論で得た"一月は暮らせる金"は、一般市民がそれなりに慎ましく暮らした場合の金額であり、もともとの生活基盤が無く、かつ今まで日本の高い生活水準を経験していた俺たちではとても足りない額だった。


結果として、それぞれが適当な職を見つけて働かなくてはならなくなる。


例えば農夫、例えば雑貨屋の使いっぱしり、馬屋の小僧にエトセトラエトセトラ……


そんな中で俺が選んだのは傭兵団への入団だった。

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