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偽善と正義

下着泥棒は捕まえる事は出来なかった。自分のやっていた事、こんな事をしてまで票集めをしても意味がない…そう考えながら学校から帰る事にした。


「こんな無駄な事に付き合わせてしまってすまないな秀太郎…」

「いや…そんな事ないさ……今回の事で考え直す事が出来た。無駄なんかじゃないさ」


明は悪くない。ただ俺を助けたい一心でここまで考えてくれたんだ。明には罪は無い。


「それにしても明日はどうするんだ。このままじゃボロ負けするぜ」

「それでいいさ。自分の為だ、それでいいんだ」

「お前がそれでいいならそうすればいい。俺は何も追求をしない」


優しく語りかけてくれてちょっと嬉しかった。

明とは学校の校門前で別れた。

なんか色々と吹っ切れて、無性に走りたくなってきた。下着泥棒捕獲の時もかなり走ったが、まだまだ体力が有り余ってる。

家からそう遠くはない。20分も走れば家に着くはずだ。

そして俺は走りだした。

数分後小さな公園に通りかかった。草が生い茂っている。すると草むらの奥からドスの効いた声が聞こえてきた。

不良達が何か揉めているのか?と思い中をチラッと見ると夜桜高校の生徒が同じく夜桜高校の生徒に制服の胸ぐらを掴まれている。しかも相手は2人いる。

よく見ると昼間の不良に絡まれていた同じクラスの工藤だった。工藤は今にも泣きそうな顔をして小声で不良達に訴えている。


「お金はもうないって言っているでしょ…」

「なら親に嘘をつくなり、なんなりしろや!」

「そんな事出来ない…よ…」

「なら俺達がお前ん家に行ってもいいんだぜ」

「それはダっ…!」


抵抗しようとした工藤に不良は腹に一発蹴りを入れた。工藤は倒れこみ、腹を抑え丸くなる。

不良は工藤を起こし、胸ぐらを掴み再び脅しをかける。



「もう一発やられたくなければ、金をよこしな」

「僕は絶対に渡さない!!」

「ほぉぉ…」

「いい度胸じゃねえか」


工藤は涙ぐんだ顔で必死に訴える。

俺はこの光景を見ていられなくなる。いじめは今の社会の問題点であり、学校ではいじめを認めない事もある。学校の自分勝手な判断で…そうやって一人また一人と自ら命を落とす子が増える。悔やんでからでは遅い、その子はもういない。あの時助ければよかったと……でも、後で悔やむくらいなら…

心臓がバクバクと鼓動し、緊張が高ぶる。歯を食いばって行くぞ!


「今度は顔を殴ってやる!」


不良の力一杯握りしめた手が工藤の左頬へとフルスイングする。工藤は覚悟して目を思いっきり瞑る。

間に合え!俺は草むらから全力疾走で工藤へと走る。草むらから出た音に気づき、こっちを見る不良。その一瞬の隙に、工藤へとタックルして不良の手から離した。


「あぁん?確かお前は昼の!」


やはり怖い……目の前には自分よりも大きい上級生2人がこちらを睨みつけている。工藤を庇うように手を広げているが、手足がブルブルと震えてしまう。


「こんな奴助けてどうするつもりだ?偽善者のつもりかぁ??」

「何とでも言え!偽善者だろうが何だろうが!見てないフリが一番嫌なんだよ!!」

「秀太郎君…僕なんかの為に…こんなことを…」

「これから3年間も一緒にいる者どおし困ってる時はお互い様だ!」


思いっきり言ったがやはり怖い…だけどこうでもしないと工藤は助けられない。

草の靡く音が響く公園だが今は自分の心臓の音しか聞こえない。


「ならまずお前からぶっ飛ばしてやる!」

「来い!正々堂々受け止めてやる!!」


しびれを切らした不良は右手を俺の頬へとフルスイングする。当たる…そう確信した


「お前ら何やってんダァァァ!!!」


俺がさっき飛び出してきた方角から鬼の様な叫び声が響き渡る。それと同時に不良の手も止まる。

一体誰なのかその時は分からなかった。


「何だ今の声は……お前!まさか人を呼んできたのか⁉︎」

「おい、まずいんじゃねぇのか…」


謎の声に怯む不良、俺も唖然としている。そして空かさず草むらから声が響き渡る。


「そこの2人止まれェェェェ!!!!」

「ちっ……命拾いしたな。行くぞ」

「お前の事は絶対忘れないからな」

「俺は皇秀太郎だ!!!忘れるんじゃねぇぞ!!」


不良達は何処かへ立ち去った。よかった……一気に気が抜けて尻餅をついた。


「だ、大丈夫?秀太郎君?」

「あぁ……何とか…」


息をつくと、草むらから人が歩いてくる。助けてくれた人かな?そう思った。


「もういらないと思ったらこんな所で役に立つなんてな……微力ながら加勢しに参った…ってね」

「明⁉︎」


意外にもさっき別れたはずの明だった。でも声も明のとは全然違う声のはず…一体……


「体育教師のうるさい声だよ」


下着泥棒捕獲する時に、明は録画していた中に体育教師の声が入っていたようで、それを急遽使用したようだ。


「何でこんな所にいるんだ」

「お前にアンパン代払わせようと追いかけて来たら、お前が不良の前にいるからびっくりしたぜ。見て見ぬふりは嫌いだろ?」

「あぁ…」


明は手を伸ばし俺を引っ張り立たせてくれた。体を全く動かしていなかったのにこんなに疲れるなんて……初めてかも…

工藤が下を向きながらこちらを向く。


「あ、ありがとう……こんな僕を、助けてくれて…」

「ふっ…何度言わなくて良いって…当然の事をしたまでさ」

「でも僕のせいで君もあいつらの標的に…」

「そん時はそん時さ。大丈夫、またなんかあったら俺に相談してくれよ!」

「俺、証拠映像録画したが先生に突き出すか?」


先ほどの不良が突っかかったいる所を動画に撮っていた模様。途中からだが十分に証拠となる映像だ。


「工藤、お前が判断しろ…」

「い、今はまだ良い……かな…」

「ほんとにかよ!これ言えばあいつらなんて…」

「仕返しが怖くて……」

「…そうか、ならこの動画は今は取っておこう。お前の判決断しだいでこの動画は先生に報告する」


仕返しが怖い……だがそれを工藤が言うなら俺は止めない。とりあえずこの動画は取っておく事に決めた。

あいつの決断を待つ事にした。俺達のいらないお節介がまた新たな事件へと発展するかもしれない。だから敢えて俺達は手を出さない。

その後工藤とは別れ、明にはアンパン代を払い、濃い1日は終わった。

公園の外に1人の人影……髪が長い事から多分女性だろう……

そして次の日が訪れた…

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