カラメリゼ・ドロップ
キャラメルは、あまり好きじゃない。
甘すぎる優しさを受け付けない、つまらない大人になってしまった。
私は貴方の真似をする。
同じお菓子。同じデザート。同じ飲み物。
貴方と同じ物を手に入れては、貴方を想いながらそれらを楽しむ。
「甘いものばかりだね」なんて、妄想の貴方をからかいながら。
その日、貴方が選んだのは、キャラメル風味のカフェラテ。
甘い甘いキャラメル、貴方は好きなのね。
貴方を真似する、私の密かな楽しみ。
今日は遠慮しようかな、なんて思ったりもした。
キャラメルも好む、甘いもの好きな貴方。
……やっぱり、同じ物にしようかな。
少し口に含んで、優しく広がる甘さ。
思ったより、甘すぎなかった。
ほろ苦いカフェラテと混ざりあって、優しすぎないキャラメルの味。
……どうしてだろう。
貴方も同じものを選んだと思うと、その想いは余計に――
――どうして、こんなに泣けてくるの。
控えめな甘さの、キャラメル風味のカフェラテ。
その優しい味に、貴方は何を想うだろう。
ふとした時に、また飲みたいと思った。
もう一度貴方が、これを選ばなかった日でも。
貴方に会えなかった日でも。
貴方を近くに感じられる、そんな気がするから。
キャラメル味の涙は、貴方が教えてくれた。
いつでも貴方に会える、仮初めの喜びとともに。
「貴方」って一体誰のことやねん、と思った方は、不定期更新の当方のエッセイ「ツナギとメガネとカレーパン」をご覧ください。後々その呼称が「ツナメさん」で定着することになる男性が今作の「貴方」であり、存分にストーカー気質を発揮する「私」が筆者です。
別に本当に泣いたわけじゃないんだから。そんな強がりに「ツンデレ乙」とツッコんでくれるのは、ツナメさんに似ているあの人だけで十分です。