俺の人生は一体
第一プロローグ
ゴールデンウィークが始まる前の週末のことだ。
ふと、部屋の棚に掛けられている一枚の写真が目に入った。碧い海をバックに男女六人がそこにいた。彼らの顔は、とても嬉しそうだ。まるで、掛け替えのない親友たちのようだ。実際にはそうなのかもしれない。
写真を見ていると、思わず笑みが溢れた。人間が、意味もなく笑うものなのか。もし、笑わない生き物だったのなら今は愉しげに笑っているのだと喝破するだろう。
窓を突き抜け、ポカポカとした陽射しが全身に帯びる。フローリングの床を素足で、踏みしめ写真を手に取ろうと手を伸ばす。
思い出す。今日みたいな天気だった。今日みたいな陽射しが全身に刺さった。今日みたいに笑った。
純白のカーテンが風に揺らされている。衣擦れ音が一つもない静寂しきった部屋。
家の中に、いるのは自分だけだ。
誰もいないから、恥ずかしいことだって多少は言える。そして呟いた。曝け出したい言葉を。
「本当に、いい友たちに巡り合えて、幸せだ!」
ソファーに寝転んだ。寝転ぶ瞬間に、写真を胸に抱き大きく息を吐いた。
目を星のように、光らせる。
来週に控えているゴールデンウィークには、ベタだが親友の家でお泊まり会をする予定だ。
「楽しみだ」
木製の天井に言葉を投げると、自然に記憶が蘇る。
俺には、一切の幸せが来ないと思っていた。恋愛にしろ、友達関係にしろ、人生にしろ。恵まれない存在だと考えていた。
別に親が虐待を振るっていたわけでもない。クラスでイジメられているわけでもない。
何故、そんなことを思い始めてかと言うと、平凡だからだ。凡人には、人一倍以上の幸せが来るはずがないと固定観念を抱いていた。ただ、それだけであった。
だが、そんな考えを裏切るかのような出来事が起きた。全ては、あの賭けから始まった。