廃墟へ
「裏山にすごく大きい廃墟があったんだ~」
私の前でこたつに足をつっこんで顔を溶けさせているのは鈴木 優。私の唯一の親友。私よりちょっと長身でちょっとイケメンな男の子。
「今度、そこに遊びに行ってみない?」
今は私とユウは私に家にいる。今は...っていうか、私はいつもなんだけど。
「いや...そんなところ入っていいの?」
「大丈夫だって!しかもせっかくこんな田舎に住んでるんだからいっぱい自然を味わわないと!いつまでも家にいるのも退屈でしょ?」
彼は結構心配性で、いつも私の面倒を見に、学校が終わったらうちに来る。
「でも、外っていってもわざわざ裏山まで行かなくていいよ。疲れそうだし」
「大丈夫!疲れたら俺がおぶってやるよ」
「えー。また他の人にカレカノと勘違いされちゃうー」
私は事情があって学校に行ってない。なので友達も少ない。ってか、ユウ意外、同年代と喋った事がない。
「学校の時間帯に行くから大丈夫だよ!」
「えっ、じゃあユウは学校は?」
「休む」
「ただサボりたいだけでしょー笑」
「たまにはサボりも大切だよ!笑」
彼も結構お調子者。でもすごく優しい面もあって、私はユウじゃなかったらこんなに親しくできなかったのかもしれない。それに...
「それに...私いきなり倒れたら...ユウに迷惑かけるかもしれないし...」
私は病気をもっている。でも病名はだれも教えてくれない。私は何も気にしなくていいと言われるだけ。
「ま、まあそのための俺だろ?安心して行こうよ!」
「うん、まぁそこまで言うなら...行こうかな...」
「よし!じゃあ明後日の金曜日行こう!」
「わかった...」
ちょっと強引な誘いだったけど、断る理由もすべての許容範囲内だから大丈夫のようだったので、行く事にした。
ピンポーン
チャイムがなった。ユウだろう。祖母が玄関の扉を開けた音がした。
「あ、こんにちは、さちおばあちゃん。カエデー、来たよー!」
私は祖母のサチコの家で二人で暮らしている。両親は、私が小学校高学年の時に亡くしたらしい。でもその出来事とその前の生まれてからの記憶は一切ない。覚えていない。
「準備するからあがってまっててー!」
私はその時から、病気にかかったらしい。発作か何かかなと自分では思っているが、実際のところどうなのかはわからない。聞いても答えてくれないのでもう諦めた。記憶喪失+発作持ちとか最悪だなぁ、と自分でもよく思う。
タオル、水筒、ティッシュ、ひざ掛け、雨具、ケータイ、懐中電灯。必要なものをお気に入りのリュックに入れて下に降りると、ユウが居間でおにぎりをリュックに詰めていた。
「カエデ、おにぎりを作っといたから持っておいき」
「ありがとーおばあちゃん」
私もリュックにおにぎりを詰めながら、おばあちゃんが台所に戻っていくのを確認した。足音が消えると、ユウに
「どうして裏山でそんなところ見つけたの?」
と聞いた。ちょっと気になっていた。ユウは一人で裏山なんかに行くタイプではないと思ったからだ。
「友達と遊びに行った時に見つけたんだよ。多少綺麗だったし、その時は入れなかったから行きたいな~って思って。カエデも多分、気に入ると思うよ。」
「そうなんだー」
ユウから自分以外の友達の話をされたのが初めてだったのでちょっと複雑な気持ちになった。
二人とも詰め終えたので、玄関へと向かった。
「おばあちゃーん、行ってくるねー!」
「はいはい、行ってらっしゃい。何かあったら電話するのよ」
奥から出てきながら、そう言った。私はリュックの中にケータイがある事を確認し、頷いた。
「ユウくんもカエデのことよろしくね」
「はーい」
「じゃあ、気をつけて行ってらっしゃいね」
『行ってきまーす』
ドアが閉まりきるまでおばあちゃんは手を振ってくれた。私は久々に外に出た。まず最初に引きこもりのカエデを襲ったのは、
「寒...!!!」
秋とは言えないほどの尋常ではない寒さだった。
「いったい何度なのよ~。寒すぎ!本当に11月?」
「いやいや、そこまで言うほど寒くないよー。ほら、見てみ?」
そう言って歩きながら、スマホを見せてきた。
「16度!?寒っ!」
「まぁ、いつもこたつに入ってごろごろしてるカエデにとっては寒いかもね~」
「い、一応勉強してるし!」
そう、勉強は、してる...。してる...一応...。
「ほほーん?じゃあ今度、数学のテスト作ってやるよ。」
「だめ!数学だけは本当にダメ!」
大の苦手教科を知っているユウは、カエデにとっては鬼だ。
「まあ、嘘だけど(笑)そこ右ね。」
裏山の入り口までは自転車で行くほど遠くはない。いつも外に出ないから、ユウは、カエデが道がわかってないと思っているらしい。
「流石に道ぐらいはわかりますぅー!」
そう言いながらほっぺを膨らまして見せた。ユウは微笑した。
そうこうしてるうちに、裏山の入り口についた。
「ここからは危ないからちゃんとついてきてね」
「わかってますよー」
「ならいいんだけど(笑)」
ちょっとバカにしたような言い方をしてきたのでカエデは少し怒った。
この会話を聞いて近くを通りかかった農家の人がカレカノと勘違いして、農家のじいちゃんばあちゃんたちに広まったのは、また別の話。
「じゃあ行こうか」
私たちは裏山に入っていった。
裏山に入ってから、散々雑談をして二十分弱経ったあたりで、道に変化が訪れた。
「ここを右にまたまっすぐ行けば、着くよ」
「わかったー」
「疲れた?大丈夫?」
こういう時に優しい言葉をかけれるユウは本当に優しいんだなって思う。
「ちょ、ちょっと疲れたけど、着いてからから休むことにするー」
「わかった。地味に体力あって正直ビビってる俺」
「ふふーん。あんまり私をなめるなよー?」
そんな会話をしながら歩いていた。まだカエデとユウはこの後に起こる事を察しもできなかった。
こんにちは!淺波洸です。ゲームの題材が、どういうわけか小説になっちゃいました!DINAIALとは「拒否」っという意味です。なぜでしょーう??それはのちのちわかりますw はじめは読んでて、「どういうこと??」「意味不」とか思うかもですが、最後の最後で、あ!!そういうことだったのか!ってなりますのでご安心ください。ではでは良いDINIALをお浮かべくださいな!