藤原さん 4
藤原さん 4
試験の結果。それが掲示板に貼り出される、なんてこともなく、かといってメールで個別に届くというほどの最新技術もない。全部の点数が載っている薄い紙きれを一枚渡されるだけだ。個人情報のせいか、名前さえもない。あるのは学生番号だけだ。
僕はもらってざっと見て、しまう。ちなみに藤原は学生番号だけ確認して、しまった。以前のこと。
「見ないの?」
「終わったものを見てどうするの?」
と、あっさり言われてしまったことがある。それは確かにその通り。それに彼女の場合はほぼ満点なのが確かに見ても意味がないのかもしれない。
藤原は勉強はできるし、たぶん美人の部類に入るのだが、無表情が多くて、ひそかに能面じゃないか、なんて陰口が(ほとんどは嫉妬だろう)あるのだが、それ聞いた嬉しそうに彼女はちょっと笑った。
「そんなに端麗な顔かしら?」
やっぱり天才なのか、馬鹿なのか考える。
外に出ると雨上がりの今日の空は青い。
「あぶなっ!」
「う。」
つるっと、靴で滑った藤原を僕は慌てて掴んだ。間に合った!とりあえず、立たせた。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう。あ。」
「あ?」
「今日の空、なかなかいい青をしているわよ。」
藤原はのんきに言った。僕は空を見上げて、聞く。
「藤原は、空の青さと海の青さとどっちが好み?」
「今日は空ね。青ってくくりなら、分厚いガラスの青も綺麗よね。」
こういうところが藤原は面白い。
「今日、昼飯は?」
「カレーを食べに行くわ。知ってる?青いサングラスをかけて、カレーを見ると青く見えて、食欲が落ちてダイエットになるんですって。」
「藤原は、ダイエットなんか必要ないだろ。」
「ないわよ。だけど、青いカレーには興味があるのよ。」
藤原は平然と言った。こういうところが僕は気に入っているのだ。