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√B 男子禁制? エメラルドの洞窟

評価2000PT……はじめての数に驚いています。すごぉくうれしいです(*^▽^*)リアルも、小説もがんばろうっておもえます(*´▽`*)ありがとうございます。みなさまのおかげで、週間文学ランキング一位になりました。日々、おせわになっております。

 ぴちゃん、ぴちゃんと水滴が滴る音が反響し、ごぉー、ごぉーと風が唸り声を上げる。目の前に広がるのは、エメラルドの光を放つどこか清浄なる雰囲気を感じさせる洞窟。足元には、足を踏み入れることを恐れされる、鏡のような水。ところどころに陽光がなくとも咲く、はちみつ色の花。

 見る者の魂を奪う一枚の絵画のような光景の様子に、喉が鳴った。


「この先に、シビュラ殿はいらっしゃいます。緊張なさらなくとも、大丈夫です。シビュラ殿は、なんというかそのお優しい方ですから」


 シビュラ―――それが、フレイヤさんたち巫女の頭である大巫女の名。私が召喚されたあの場所にいた大神官と同等かそれ以上の力を持つ人物。そして、あの場所にいなかった人物。フレイヤさんの歯切れの悪さが気になったものの、初対面な人、それも偉いらしい人に会うのはやはり、緊張する。


「っ、つめたくない?」


 フレイヤさんに続いて、洞窟に足を踏み入れるとくるぶしほどの高さまで、水につかった。靴が水分を吸って重くなり、一歩足を運ぶごとに水面が乱れる。あぁ、大雨の日に普通の靴を履いていった時のように、靴下が水を吸ってぐんにゃりとした感触が気持ち悪い。なんで、こんなとこ歩いているんだろう。

 食事を運んできた下級巫女さんが突然、「シビュラ様からの伝言があります。『召喚されちゃった勇者ちゃんの適性でもちょっと見ておこうか。来ちゃったもんは仕方がないし、顔合わせしとこうかねぇ~』以上です。時間の方はそちらにお任せするそうです」と言い出したことから始まる。それにしてもあの巫女さん、伝言の部分だけ器用に声色を変えていていたので、ちょっとした芸を見た気分になってしまった。まさか、それがこんな洞窟の奥にいかなければならないとは思わなかったけど。


「あ」


 どこか間の抜けた声が洞窟に響く。まるで、見たくないものを見ようとでもするようにひどく緩慢な動きで、フレイヤさんは振り返る。その視線は、すっかりと水に浸っている私の足に釘づけになった。


「ぎゃあああああああああ、すみません。すみません。すみません、すっかり忘れていました。あまりにも私にとって当たり前のことでしたからすみません」


 一瞬誰が、その声を挙げたのかわからなかった。私の中でフレイヤさんはちょっと頭が固そうだけど、しっかりして頼りになるかっこいい女の人だったから、こんなふうに取り乱すところが全然想像できなかった。綺麗な髪をかきむしり、下が水面だというのに土下座をし始めたとき、ようやくフリーズが溶けた。


「ふ、ふれいや。もういいから。おねがいだから、やめて。それ」


 フレイヤさんの上司であるシビュラさんに、招待されて公式的に訪問することになっただけなのに、どうしてこんなことになってるのだろうか。


「ゆ、許していただけるのですか」

「許す、何を?」

「やはりぃ~、お許しにならないのですね」


 いや待て、勘違いすんなよ。こっちは、会話が円滑にできるほど豊富な語彙をまだ持っていないんだよ。微妙なニュアンスの伝え方まで、習得していないの。


「ふれいや、もういいから、行こう。早く。待つ、悪い」

「は、はい。その前に……それでは少々失礼します」


 ふわりとした浮遊感が襲う。思わず目をぱちくりとしてしまう。自分が持ち上げられているということに気が付いたのは視界の位置が明らかにさっきまでと変わっていたからである。お姫様抱っこというものにあこがれはあったけど、同性にされてもトキメクものだとは知らなかった。危うく、ちょいとかわった道につながっている扉を開きそうになってしまった。恐るべし、フレイヤさん。


「ふれいや? えっと、これ、どういう?」

「ユエ殿の御足が濡れてしまわれるので、こうしております」


 そういうことを聞きたかったわけではないというか、っていうかこの人があんなに取り乱した理由が、足が水にぬれたからっていったいどういう思考回路をしているのだろうか。異世界の人の思考回路は時にしてすごく謎を含んでいる。


「あの、歩けるよ?」

「いえ、お気になさらず。ユエ殿のお生まれになられた世界に、魔法や神術の類がないと昨晩伺っておりましたのに、このような失態を」


 なんとなく、フレイヤさんの足元を見てみるとまるで忍者のように水面に浮いていた。あぁ、こういう常識離れしたことが平気で行われるのが異世界だということすっかり忘れていた。そうだよね、竜の背中にのってあっちこっち飛び回る人もいるんだよね。


「水、どうして」

「この水は、警備用と巫女の訓練用に神術で出現させているのです。この先は、男子禁制のため、許可のない男性が足を踏み入れるとこの水がこうぐにゃりと『ぎやぁああああ』ちょうど、あんなふうに曲がって侵入者を捕縛します。この水を作るのも、水面には面を広げずに歩行するのも巫女の修行の一環です」


 フレイヤさんの説明のちょうどいいタイミングで後ろから悲鳴が上がった。その先には、無残にも水にとらわれて外に押し出されている装飾過多の若い男性がいた。


「巫女となる女性はたいそう美しいという噂がそとでは流れているみたいで、このような不埒ものがたびたび足を踏み入れるのです。昔は、男子禁制ではなかったのですが、一時期ふざけた遊び―――あれが遊びだって? ふざけんじゃねぇ―――ごほん、が外で流行したらしく、このような処置をとることを王に認めさせました」


フレイヤさんは背後悲鳴を何でもないことのように、スルーして説明を続ける。さっきあれほど取り乱していたのがまるで夢か幻のようだ。それよか、フレイヤさんって、お姫様の割にもしかして実はかなり口が悪い?


「ふざけた遊び、どんな?」

「ユエ殿のお耳汚しになるような内容ですので、私からは口にできません。今でも、それを信じた馬鹿者度どもがああやって来るので、警備に手は抜けません」

「そうなんだ」

「はい。まぁ、逆に女子禁制の場所も王宮にはありますよ。ですので、お互い様です。むこうは、肉食系お嬢様方に恐れを抱いた殿方が、そのように王に申し立てしたようですよ」


それっていったいどちらも何があったのだろうかと悶々と考えている間に、扉の前にたどり着いてしまった。さっきまで、どこか遠くへ逃亡していたはずの、緊張が舞い戻ってきてしまった。


「大巫女候補フレイヤただいま戻りました」


 あ、ちょっとまって。まだ心の準備ができてないのって叫ぶ暇もなく、空気が震え、風の流れが変わりゆく。そして、大きな扉が、ゆっくりと開かれる。暗闇に慣れた目に強い光が差し込み、ちくりとした痛みを訴えた。









√Bまだまだつづきます。そのうち、別視点いれようとおもうので、おまちくださいね(^^♪ 

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