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√B 白馬の王子様ならぬ美人な王女様が助けに来てくれました。

おためし投稿です。√Bどうでしょうか。12話の続きになります。カルの腕から掻き消えたその後の展開です。もし、12話のあの時のが、変えるために発動した魔法ではなく、勇者召喚魔法だったらというお話です。

 ぼうっとまだ頭がする。ぼやけた視界が明確な輪郭を結ぶまでしばらくの時間がかかる。一体何が起こったのだろうか。なんで急に、ああなったのだろうか。疑問がぐるぐると目まぐるしく回るけれどその疑問に答えてくれる存在はいるのだろうか。今はっきりとわかるのはただ、まぶしいことと、たくさんの人の気配がすること。ざわざわと空気が震え、鼓膜が音を拾う。

「……いこうだ」

「……ゅうせいしゅ」

 その音が確かな意味を持つ言語として認識した途端、ぞわりと全身の産毛が逆立った。私は、今囲まれている。それも、たぶんものすごく嫌な人たちに。胸の内に浮かぶ言葉は顔を上げたくないという一言のみ。


「皆の者、かの大魔術師シュバイツが、あの失われた勇者召喚に無事に成功した。この者が今代の勇者だ。我、ルーロ王国の繁栄はこれで約束されたも同然だ」


 野太い男のいやらしい声が、つむぐ言葉が否が応でも私の今の状況を説明してくれる。ここは、地球なんかじゃない。ましてや、あの温かな場所でもない。ここは、オルフェス商会があるエドやカルたちの世界。だけど、国は違う。

 私は、この王様が口にした国の名前を知識として知っている。伊達にこの数か月オルフェス商会で働いていたわけではないのだ。


「さぁ、勇者。我が国を救いたまえ。我が国は今未曽有の危機に陥っているのだ」


 地球にいたときに呼んだり遊んだりしていっそ聞き飽きたお決まりのフレーズ。さて、どう反応するのが一番、私の身の安全につながるのだろうか。聞きかじりの情報で、人を判断するのは良くないことだとは知っているけれど、それでも商会という、ある意味最も情報を大事にする場所で得てきた情報が一概に間違っているとは言い切れない。


「勇者殿?」


 顔を上げなくても、この豪奢な磨き抜かれた床に反射する世界からここがおそらく国の重要な場であることは明白だ。ふぅ、落ちつけ私。ここが、カルたちの世界なら、再会することができる。カルは竜騎士だっていってた。特別な存在だ。そして、エドは、日々大きくなっていくオルフェス商会のトップ。リリアーノさんは、結婚したとはいえ、元貴族。その伝手はいまだに有効。むしろ、広がっているともいえる。

 ここに、私がいるということに気づいてもらえれば、助けてもらえるかもしれない。他力本願だと笑いたければ笑えばいい。お腹を抱えて笑われたって、見下されてさげすまれて笑われたって構わない。誰だって自分の命はかわいい。それに私は知っている。私の命が私だけものではないことを、私は今も昔もそれから未来も常にだれかによって生かされ続けているのだ。人は一人で生きていけない存在だと痛いほど私はもう知っている。

 ダイジョブ。まだこの体には、カルに抱かれたぬくもりが残っている。あの強くて優しい人の残滓が残っている。さぁ、胸を張れ。この数か月で磨き上げたど根性はどこに行ったの!


「だぁれ?」


 あどけない口調で、なるべく幼く、比護欲を湧かせるように意識して。この世界の人から見て、私は凄く幼くみられることをいやというほど知ってきたから、使えるものは何でも使ってやる。生きていれば、何とかなる。カルなら、王城だろうと乗り込んでこれるだけの身分と力を持っているから大丈夫。あとは、この首輪がみられるとまずいかもしれない。この世界の住人だという証拠になる。服は、たまたま似ているで済ますことができるはず。でも、魔法のかかったこの首輪は誰かに見られてまずい。この国の人たちにとって勇者が奴隷であるという事実は嫌なはず。


 幸い、この服は、首まで覆って首輪が見えないようなデザインだ。それにこの首輪、一見首輪とは言えないようなデザインに、改造されてどっからどう見てもただのおしゃれよと、リリアーノさんが見事なウィンク付きで言っていた。改造の際、私の趣味も反映してもらっている。和風の龍と桜がちりばめられたデザインは結構気に入っている。それでも、念には念を入れよだ。万が一、気づかれてはまずい。


「む、存外幼いな。おい、シュバルツ。この者が本当に勇者殿であっておられるのか」


 言外にお前の腕が悪いとののしるような、その言葉に冷静にその魔導師は返す。


「知らん。料金分は、すでに働いた。私の仕事は、その陣を発動すること。その陣を製作したのは私ではない。なぜ、その娘が召喚されたのかは、そこにいる大神官どのがよくご存じであろうよ」


 淡々と無機質に紡がれた声音に、どこかせせら笑うような感じがしたのは気のせいだろうか。その言葉に一番反応したのは荘厳という言葉が合いそうな装いをしている白と金の衣服を身に纏ったおじさん。


「どうなのだ。ワンジュ大神官」

「っ……その娘で間違いないでしょう」


 なんとなく、今この場で一番偉そうなのが、あのだみ声のおじさんで、その次が大神官という地位の人だ。そして、直接的に召喚したともいえる魔導師はおそらく金で雇われたんだ。そして、雇われ魔導師に今大神官は何か弱みを握られた? 


「そうか。お前がそういうのなら問題ないな。それでは、勇者殿にはしばらく王宮に滞在してもらって、それからこちらの世界について知っていただきたい」


 さて、どうするべきか。完全に私を置き去りにしている。私の意思はどこにもはさむ余地がなくさっきからこの王様みたいな人は、あらかじめ決めておいたことを周囲の者に確認するように話している。侮られている? でも、排除しようとする動きよりも、囲い込もうとする動きかな。それなら、このままの流れでも平気かな。うん、少し不安。


「あのぉ、ここどこ?」


 忘れられてはたまらないので、なるべく不安な子供の姿に見えるように声を震わす。まぁ、半分は本気なんだけどね。っていうか、さっきの質問にだって私答えてもらってないよ。無視すんなよ、勇者なんだよね。私。

 それにしてもこの場所に話が通じる人いるのだろうか。なんか、金で雇われたらしい魔導師が一番まともな気がするのは気のせいかな。だって、王様もどきの言葉を聞いてほかの人たち勝手に盛り上がっているし。私、別にいるだけ幸運をよぶような座敷童ちゃうし。まぁ、ただぼうっとしているだけで許してくれるような国ではなさそう。最悪、人間兵器扱いされるか。それも、きちんと私の実力をわかったうえでそうするのかどうかもわからない。一番嫌な展開は、魔法も何も使えない私にいきなり竜や魔王を討伐させに行かせる展開だ。


 はぁ、と心お腹で大きなため息を吐きかけたとき、凛とした声が空気を震わせた。


「この国は、勇者殿のお生まれになった世界とは違う世界で、ここの国ルーロ王国の王宮にある神殿です。勇者様、私の名はフレイヤと申します」


 一体どこから声がしたのだろうか、そんな疑問を解消するように人ごみから最近美形に見慣れ始めた私でも綺麗って思う男装した女の人が前に出た。


「勇者殿、長旅お疲れではありませんか。お部屋を用意しております。まずは、ゆっくりとおくつろぎください。これからのお話は、そのあとでも十分でしょう。こちらの事情で勝手にお招きしたうえ、おかまいもできず申し訳なく思います。どうか、お許しください」


 ひとつひとつの動作がすごく綺麗な人だ。それに、一瞬でこの場の空気が変わった。場の支配者が、あの王様っぽい人からこの女の人に変わった。この人どんな身分なのかな。たぶん、そう低くない身分だと思う。だってきらびやかな服着た人たちが、一気に彼女の登場で、押し黙った。


「ふ、フレイヤ。お前、一体なぜここが」

「叔父上こそ、巫女殿の許可なく何を勝手なことをなさっているのですか。このような大儀式に、なぜ巫女殿にお話を通さずに、強引に進めてしまったのですか。叔父上、このようなこと王がお許しなられても神はおゆるしになりません。大神官も大神官です。ふぅ、勇者殿。大変お見苦しいさまをお見せしました。私は、この国の王女にして、時期巫女筆頭フレイヤ・ジュマン・ナッツモンドと申します。後ほどいかようにも咎を負いましょう。しかし、この場は……」

 この女の人ーーーフレイヤにとっての勇者っていう立場は尊いものみたい。口だけじゃないっていうんが全身から伝わってくる。商会で少しは人を見る目が磨かれたはずだ。

「ふれいや? ねぇ、ふれいや。あなたは、わたしに痛いことする人? 怖いことする人?」

「いいえ。そのようなこと、考えるだけでおぞましい」

 決して大げさではなく心の底から思っているように私の目には見えるこれが演技だっていうおなら大した役者だと思う。それはそれで、素直に尊敬する。

「ふらいや、私の味方?」

「はい。勇者様。女神さまがお使いになられた異世界のものにどうしてそのような無体なまねができましょう。勇者様さえ、お許しになるのならばこのフレイヤ、貴方様の味方という立場謹んでお受けいたします」

 王女だというのにこの人、腰が低い……。フレイヤさんは少なくとも、私の質問にちゃんと答えてくれた。あの人たちより話が通りそうだ。

「うん、おねがい。あんない、おねがい。ここ、いや」

「かしこまりました」

 背後のざわめきを無視して、風を切るように、颯爽にこの場からさることがかなうようだ。うん、王女様ナイス。



いかがでしょう。評価や感想などの反応見てこの後考えようかなって思ったりしてます。

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