「異世界にお邪魔します」
最後までお付き合い、ありがとうございます(^O^)長らくお待たせしてすみません(ノД`)・゜・。作者よ、春休みおぬしは何をしておった(-_-)/~~~ピシー!ピシー!あうっ。それでは、おたのしみください。
何かに揺られている。ふっと肌寒さを感じで、目を開ける。蛍光灯の光が目に居たい。視界をずらした先には、どこか懐かしさを感じさせる電車の椅子やつり革。流れるテロップが、次が目的地だと告げる。
「戻ってきた……あれは」
思わずトンネルのせいで鏡に似た効果を発揮する窓ガラスをのぞき込む。少し伸びた髪、その首下にあるすっかりと慣れてしまった首輪。服は、リリアーノさんに着せられたフリルの付いた甘いワンピース。
「夢じゃない」
首下にはうように伸ばした手が首輪に触れるとシャンという澄んだ音ともに砕け散った。声は、音にならずパクパクと口をしている間に、向こうの名残が次々と光の粒に代わっていく。ワンピースは、シャンという音共にもともと来ていた服へ変わる。
「いやだ」
今まであった出来事をすべてなかったことへ変えてたまるか。だって、確かに私は彼らと触れ合った。熱も匂いもすべてこの身で感じた確かなもののはずなのに……ぼろぼろと座席にシミを作る。
「カル、エド、リリアーノ、アリア……」
壁に寄り掛かったとき、後頭部に違和感があった。伸ばした指先が、冷たい石に触れる。目がゆっくりと見開かれる。そっと、髪から外したそれは、カルのお土産。赤とローズピンク、紫の煌めく石が、ダイヤモンド・リリーのようになった髪留め。葉の部分は銀細工でできている。髪留めは、パラパラと首輪と同じく溶けて消えたりせずにしっかりと存在感を維持したままに手の中に落ちた。
「くふっ。普通、薔薇とが、ダリアとか、ガーベラでしょうに……なんで、ネリネなのよ、カル」
きっとこれを選んだ時、カルは「箱入り娘」という意味で選んだのだろう。だけど、世界を隔てた今、「また会う日を楽しみに」という意味を持つこの花がどうしようもなくピッタリで、胸の中に熱いものが駆け巡った。
エピローグ
季節は巡り巡る。私の学年は一つ上に上がった。帰って来てから、辛くてくじけそうなことがある度に、「絶対迎えに行く」という言葉を信じて、縋って踏ん張った。カルは有言実行の人だから、絶対に迎えに来てくれる。現に、前回はそうしてくれたから。
「ユエ!」
ふと背後を振り向くも、誰もいない。ただ、大学の校門がそびえたつだけだ。ずっと求めていたせいでついにあの人の幻聴まで聞こえてくるとは……。今でも、あの出来事が夢なのではないかと疑ってしまう。けれど、手のひらの中の存在が確かに向こうにいたのだと証明してくれる。たとえ誰に笑われたって私はあの日々が確かにあったと信じ続けるだろう。
「ユヅキ」
あぁ、まただ。こんなにリアルにあのテノールの声が聞こえるなんて……末期だ。
ぐいと誰かに強く腕をつかまれ、たたらを踏む。いったい、誰なんだと再び背後を振り向くと、そこには空間を切り裂いたかのような大きな亀裂があった。唖然とした私を前にして亀裂の向こうの男は、初めて会ったときと同じように怒った顔をしていた。
「俺を、無視するとはいい度胸だな」
「か、カル!」
一番、逢いたかった人は、待ち望んでいた言葉をくれる。
「ったく、とっととこっちに戻ってこい。ちびっ子。もう、あそこはお前の居場所だろ」
そして再び強引に引き寄せられる。今度はその手に逆らわなかった。力強くあったかい腕に身をまかせ、私はもう一度あの花香る自然と竜のいる世界へ足を踏み出す。
あぁ、あの家に一番に彼と共に行こう。こちらの世界の娯楽知識を土産に帰ろう。
そして、「おかえり」と温かく迎えてくれるだろう人たちの前で、こういうのだ。
「引き続き、異世界にお邪魔します」って。
「異世界にお邪魔します」最後すごく悩みました。それでこの終わり方を√Aの最終話として、別ばーしょんを書いてみようかと悩んでます。√Bの雰囲気のみ伝えたい時ってどうすればいいのでしょうか。「異世界にお邪魔します」√Bってかんじで、いいのかな。次の話はそんな√Bになります。