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よろしくお願いします

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。新キャラ? 名前だけは前の方にも出ていたのですが、リリアーノさん登場です。

「ユエです。よろしくお願いし」

「きゃあかわいい。何この子。え、エドの愛人。いやん、でもこの子なら許せちゃうわ。でも、正妻の座は譲れないわ」

 意気込んだ挨拶は、無難なものになり、ハイテンションな美人さんに抱き付かれることで幕を落とした。ゆるりとまかれたたっぷりとある銀色の髪に蒼い目、雪のように白い肌をもつ見るからにお姫様っぽい人。おそらくこの美人さんが、エドの未来の奥さんリリアーノさん。リリアーノさんは、私の首元の紅い石を数秒じっと見て、何やらうれしそうに愛人発言をかました。

「はじめまして。私、愛人、違う。エド、居候、主」

「わたくしは、リリアーノ・チェルニー。リリアと呼んでくれてかまいませんわ。ふふふ、事情は知っていますわ。さぁ、上がってくださいまし。貴女には、普段のエドの様子とかたくさん聞きたいわ」

 リリアーノさんのテンションに飲まれながら、促されるままに一屋に通された。おそらくリリアーノさんの私室だろう。天蓋付きのベッドとか初めて見た。

「今日からここが、貴方の部屋よ。好きに使ってちょうだい」

「は」

 思わず両目を見開いて間抜けた顔をさらしてしまった。それから、唖然としている私を放置し、メイドさんにてきぱきと指示してお茶の準備を始めた。気づいたら紅茶を口に含みのんびりとお話をしていた。

「事情は聴いていたけど、そんなことがあったのね」

「はい。あ……これ、美味しい」

 甘酸っぱいムースケーキには、沈んでいた気分を浮上させる。甘いものは正義だ。

「エドったら、あれほど急ぐなって言い含めましたのに……全くわたくしたち何時になればお父様に許され、籍を入れられるのかしらね、ふぅ」

 甘やかなため息は、とても色っぽく大人の魅力が含まれいる。言葉の端々に含まれるエドさんへの想いに胸が詰まる。ほんの少し悲しげに伏せられたまつ毛に、罪悪感が増す。心臓の鼓動が早くなる。お父さんに、反対されているんだ結婚。

「ごめんなさい。私、原因」

「気にしないでっていっても、貴方みたいな人は気にするでしょうね。ふふふ、わたくしはね、あの方が愛してくれることを知っているから、多少待つくらいはいいと思っているのよ」

 それも一つの恋の楽しみ方と余裕の笑みを口元に乗せる。なんでここの人たちは責めないのだろう。その方が効率的に心にダメージを与えられるからだろうか。それなら、効果は覿面だ。

「そうね、気にしているのなら、その損失分を補うことしてみない?」

「損失を補う?」

 唐突な誘いに、首をかしげる。

「そうよ。貴女にできる範囲で精一杯努力するの」

 この世界の常識ですら危うい私に一体何ができるのだろうか。今私が持っているほとんどの物は、エドに与えられたものだ。何がしてあげられるのだろう。思わず視線を落とす。

「まぁ、今回はエドが焦ったのが原因よ。普段なら航路付近の貴族に根回しするのに、わたくしに求婚する馬鹿な男が出てきたから焦ったのよ。準備を怠ったからちょっとのことで揺らぐのよ」

 身分に興味があるのなら、社交界にデビューしたときにさっさと婚約までこぎつけるわと、どこか腹立たしげにリリアーノさんは付け足す。どうやら、他の男に感嘆に靡く軽い女だと思われたようでむかついていたのらしい。

「あら、ごめんなさい。わたくしばかり話しているわ。雨がふっているとお買い物もお散歩もできないし嫌になるわね。雨の時の娯楽って、全然ないから退屈していたの。おしゃべり相手ができてうれしいわ。そういえば、ユエはどこの生まれなのかしら」

「私、遠く。名前、日本」

「ニホン? ごめんなさい。せっかく尋ねたのに、わたくしその国の事詳しく知らないわ」

「みんな、言う。気にしないで」

 むしろ知っているといわれた方が驚きだ。私の故郷は竜のいない科学の時代の小さな島国だ。

「そう。ねぇ、ユエ」

 いいこと思いついたとばかりに、リリアーノさんは目を輝かせる。

「貴方の国では、こんな雨の日どうやって時間をつぶすの。ここでもできることあるかしら。必要なものがあるのなら、できる範囲で取り寄せるわ」

 雨の日……家の中で遊戯はたくさん向こうの世界にはあった。テレビやラジオ、漫画に本を読んで時間をつぶすほかには、ゲームだろうか。テレビゲームや携帯ゲーム、ボードゲームにカードゲームとその種類は幅広い。そういえば酒場なのにポーカーとかやってなかったけど、もしかしてこの世界にはそういうのないのかな。カードゲームって、こっちでなんていうのかな。語彙力低いんだよね。よし、こうなったらそれっぽく見えるを作って、こんなのって聞けばいいかも。

「作る。遊ぶもの。成功、不明。手伝う?」

「まぁ、なんておもしろそうなの。わたくしにも手伝わせてくださいませ」

 ぱぁっと背景に花が飛んでいてもおかしくないくらいにうれしそうな笑顔だ。部屋に来るときにさりげなく没収された鞄を部屋の隅に発見し、その中からカルはこの前くれたお道具箱セットを開く。すると、リリアーノさんも、同じものを持ってくるようにすかさずメイドに指示を飛ばしていた。

 とりあえずトランプを作ることに決めた。あれならいろんな遊び方があるのできっとリリアーノさんに楽しんでもらえるだろう。

 お道具箱にあった色紙をハサミで手に収まるかおさまらないかくらいの長方形に一つ切り、片面がなるべく白でこういうのをたくさんほしいと告げる。

「うぅ~ん、それくらいの大きさならいいのよね」

「はい」

「それなら、メッセージカードがいいかもしれないわ。あれなら片面にうちの家紋があるけどもう片面は無地のもあったはずだわ」

 そういって用意されたのは、これに本当にハートとかひし形とか落書きしていいのかとためらってしまいそうな装飾のされた代物だった。

「いいの」

「かまいませんわ」

 持ち主から許可をいただいてようやく恐る恐る赤いインクを含ませた筆を走らせることができた。初めに書いたのは、ハートのエース。それから、ダイヤのエース、インクを黒に切り替えて三つ葉?とスペードを描く。アラビア数字ではなくこちらの世界の数字を紙の両端に記入すると、「一ですの?」とリリアーノさんが尋ねるので、「はい」と返事をする。とりあえずハートのカードを一から十まで順々に記号の数を増やしていき、他のカードも  この配置で同じように数を増やしていくのだと告げる。ただ問題なのは、J、Q、Kの装飾なのだ。まぁ、二人で遊ぶ分には問題ないか。

「こちらは、できましたわ」

 どうやらメイドらも手伝って、ずいぶんと早く終わったようだ。全部のカードが全部あるか確認していく。

「それじゃあ、まずは七並べ、はじめる?」

「まぁ、いろいろな遊び方があるのですか。ふふたのしみですわ」

 ルールを教えて、七並びを三回終えた後、次にババ抜きをしようかと思って、大変な失態に気が付き思わず頭を抱えて日本語で叫んでしまった。

「ジョーカー、ないじゃん!!」





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