5 数週間後 教育室
数週間後 教育室
「チェスの暴走により、地球側政府は反撃しながらも力及ばず我々がいる月へと撤退してきたのである。これがチェスと我々の歴史だ、頭に入れとけ」
「嘘つけ・・・・・・」
「タチバナ、何か言ったか?」
「いいえ、何も」
教室でタチバナ=アキト達新米パイロットは地球側とチェスの歴史講習を受けていた。
「質問のあるものはいるか?」
ごつい体格をした教官の言葉に、誰一人手をあげるものはいなかった。
「それではこれで今日の座学は終了する、一時間休憩のあと二足歩行搭乗型兵器、搭乗訓練に入る」
そういうと見た目座学担当には見えない教官は教室を出て行った。
「質問ね…大有りだよ…あの歴史、地球側のいいように改ざんされているじゃないかよ」
アキトは肘を机に立て顔を支えながらぶつくさ文句をたれる。
『アキト、そういうことはぼやかないほうがいい』
アキトが着ている軍服の胸元についたポケットから声がアキトにだけ聞こえる。
(ああ分かっている、だがあまりにも酷い。人類の人口が激減し人類は月へと撤退、本当の所は政府の人間とごくわずかな民間人を連れて月へ逃げてきたんだ。自分達の命と立場を守るために)
「お前も、人が多いところでは話すなよ、見つかったら消されるぞ」
小さい声でアキトは胸元に語りかける。
月へと逃げた地球側の政府は、月の政府と表向きは協力体制をとっていた。だが実際は、もともと月への移住計画をたてたのは地球側の旧国家の計画で、たとえ場所が月に移ろうともこの計画の最高責任者は地球側の人間にあると月側の政府に言い放ち、無理矢理実権を奪い取ったのが本当の所だ。奪い取って早々に地球側の政府は一つの条例を作り上げた。