18 医務室
医務室
警報が鳴り響き、緊急事態を告げるアナウンスが、医務室にも届いていた。
「謎の物体って隕石か何かか?」
『違うな・・・・・・』
ポンの無機質で抑揚のない声がアキトの心を不安にさせる。
「おいおいどういうことだ」
『現在の人類のレーダー能力では探知出来ないが、九割の確率で謎の物体はチェスの機体に違いない』
ポンの言葉に呆然とするアキト。
「なんだと・・・・・・奴らの宇宙進出は・・・・・・」
アキトは信じられないというような顔をしながらベッドに敷かれた布団を強く握った。
『可能性の話でしかないが、要因は我々にあるのだろう。我々という異質な存在が、この世界を歪ませた、状況を進めた』
「くそ・・・・・・奴らが今進撃してきたら地球奪還作戦どころじゃないぞ」
アキトはベッドから飛び起きると医務室を飛び出した。
『一体何をする気だアキト』
医務室を飛び出し基地の廊下を走るアキト。
「ポン、火入れておけ」
『まさか・・・・・・アキトそれではなおさら世界が歪むぞ』
「四の五の言っている場合じゃねぇ、このまま何もしなかったらそれこそ終わりだろうが!」
アキトの声は廊下に響き渡るが、警報とアナウンスでそれに耳を傾ける者達はいない。
『・・・・・・わかった、準備を始める。だがアキト、お前はどうする?』
アキトの足は第二格納庫を通りすぎ第一格納庫へ向かっていた。
「俺はあの格納庫のカングリアで出る」
そう言うと機体の発進準備で騒がしくなっている第一格納庫へアキトは飛び込んで行った。