15 二足歩行搭乗型第二格納庫 モニタールーム
二足歩行搭乗型第二格納庫 モニタールーム。
「失礼します」
空気が抜ける音とともにスライド式のドアが開くと、外からフユカ、ゲート、パールの三人が部屋へ入ってきた。
「お前達か、新兵の様子でも見に来たか?」
「はい、そんなところです、それで新兵達の様子は?」
フユカ達は教官が眺めているモニターを覗いた。
「優秀な奴らだよ、負荷をかけても数十分でぎこちなくではあるがあそこまで動けるようになったんだからな、実際教官と呼ばれているが、俺はあそこまで動かすことはできん、わかるのはシステムだけだ」
教官は、新兵に向ける時の顔とは違いとてもやわらかい表情をしていた。
「俺があいつらに厳しくできるのも、お前達が立派にカングリアを操縦してくれるおかげだからな」
「私達の時は教官と手探りでカングリアの動きを訓練していきましたからね」
フユカは胸に手を当て、目を閉じ思い出に浸るかのようにそう言った。
「ああ、そうだ、くれぐれもあいつらに俺が褒めていたことを言うなよ」
「わかってますよ」
三人はやわらかく頷いた。
「ところで、タチバナアキトをみせてもらっていいですか?」
パールは教官が座っている椅子の隣の椅子に座った。
「タチバナか・・・・・・タチバナ、タチバナああこれだな」
教官はアキトが乗るカングリアを映しているモニターを拡大させた。
「それでタチバナがどうかしたのか?」
「教官はどう思いますか?」
ゲートとフユカは教官とパールが座っている場所から少し離れたソファーに座った。
「うーん、普通だな、特に周りのやつらと変わらないが・・・・・・何かあったのか?」
「まあ、ちょっと気になるんですよ」
パールはそう言いながらモニターを見つめていた。フユカとゲートは立ち上がりパールが見つめるモニターのそばに向かい、アキトが操るカングリアを見つめた。
「・・・・・・妙だな」
モニターを見つめながらフユカがそう呟いた。
「何がだ?」
教官はモニターを見つめたが、別におかしなことはなかった。
「タチバナの操るカングリアの動作・・・・・・ほかの機体よりもぎこちなさがある」
「それは当たり前だろう、まだ乗って数十分しかたっていないのだから」
教官は笑いながらフユカの言葉を否定した。
「そうじゃないんです、何と言うか・・・・・・そう他の機体に比べテンポが遅い、まるで周りを見ながらやっているような・・・・・・」
フユカはそういった瞬間何かに気づいた。
「そうか・・・・・・みんなタチバナの機体の横にいる機体が動作をとった後すぐにタチバナの機体を見るんだ」
教官を含めた三人はじっとモニターを見つめた。するとアキトの乗るカングリアの横にいた機体がぎこちなく動くとワンテンポ遅れて寸分の狂いもなくアキトのカングリアは同じ動作をとった。
「おいおい、これって」
「ああ、もしかするとタチバナはわざとやっているのかもしれない」
フユカ、パール、ゲートは見合って何か通じたように頷いた。
「教官、タチバナと模擬戦をさせてくれませんか?」
フユカのとんでもない発言に教官は驚いたが、少し悩んでから頷いた。
「わかった、手はずは整える、それで誰がタチバナの相手をするんだ?」
「私が」
「待て」
フユカが言いかけたのをゲートが止める。
「フユカは部隊の指揮官だ、この模擬戦で二人に変なぎこちなさが残ってもまずい、ならばあまり接触していない俺が行くのが得策だろう」
ゲートはごつい顔にはあまり似合わない笑顔でそう言った。
「確かにそうだな、お前の顔は憎まれ顔には最適だし」
パールはけらけらと笑いながらゲートの肩を叩いた。
少し考えたのちフユカはゲートに言った
「・・・・・・すまない、頼む」
「それでは、俺は格納庫へ向かう」
そういうとゲートは、モニタールームを出て行った。
「うーん、やはりゲートのほうが指揮官機に乗るべきではないか?」
フユカは眉間に皺を寄せながら食堂での話をぶり返しパールにそう呟く。
「そうかフユカ、お前が指揮官機に乗るのか?」
教官は納得したように頷いた。
「お前が指揮官機に乗ることは俺も賛成だ」
「ほら教官からのお墨付きをもらえたんだ、自信持てよ」
パールはフユカの肩を優しく叩いた。
「・・・・・・ああ」
だがやはりまだ何か腑に落ちないフユカは腕組みをし、眉間に皺をよせた。