13
「それで・・・・・・自分に何か用でしょうか?」
フユカ以外名前が分からないアキトは、顔が強張った。それに素早く気づいたパール。
「あ、悪い自己紹介してなかったな、俺はパール=ビィレジだ星は三星だ、よろしく、そんでこっちの真面目そうな顔のごつい奴が・・・・・・」
「ゲート=セルゲイだ、このニタニタした奴と同じ三星だ。ここに居る三人は君が配属される部隊の仲間だ、よろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
ゆっくりとアキトはオムライスにスプーンをつけようとするが三人の視線が強く手が止まる。
「あ、あのそれで御用はなんですか?」
「ああ悪い、食べづらいよな、アキト君に少し質問があってね」
「は、はいなんでしょう?」
慣れなれしいなと思いながらスプーンですくったオムライスを口に運ぶアキト。
「あ、今慣れなれしいなとか思った?」
ドキっとするアキト。だが表情には出さず首を横に振った。
(鋭いな・・・・・・あまり接触しないほうがいいかも・・・・・・)
「歴史のレポートでなぜ史実とは違うことを書いたのだ?」
質問したのは、パールではなくフユカであった。
「・・・・・・あ、・・・・・・その件ですか・・・・・・」
みるからに表情が鋭くなるアキト。
「あれは・・・・・・まちがっ・・・・・・」
アキトの胸元から震動音がなりだした。
「あ、すいません」
そういうとアキトは胸元から携帯端末をとりだす。
「・・・・・・」
形携帯端末には文字が表示されており、それをみたアキトは一呼吸して携帯端末を胸元にしまった。
「あっ何々女の子から? 彼女から?」
「あ、いえ別にそんなんじゃないです・・・・・・すいませんでした、それで何の話でしたっけ?」
「ああ、だから歴史のレポートの話、何で史実とは違うこと書いたのかって話?」
パールはフユカの質問を繰り返した。
「ああ、それは・・・・・・物覚えが悪くて」
アキトは頭をかきながらへらへらと笑った。
「だが内容の出来が・・・・・・」
「それぐらいにしておこう、パール」
答えに納得していなかったパールを止めるゲート。ゲートの顔を見て少し考えてからパールは頷いた。
「・・・・・・はいはい、わかりましたよ」
アキトは流し込むようにオムライスを口の中に入れていく。
「お、おいどうした急に」
アキトの食べ方に驚くゲート。
「あ、搭乗訓練の準備を忘れていたこと思い出して、そ、それじゃ失礼します」
アキトはそう言うとその場から逃げるように去っていった。三人はアキトが急ぎ食堂から出て行く後ろ姿を眺めてからお互いの顔を見合わせた。
「・・・・・・逃げたな」
「うん」「ああ」
パールの言葉に頷く二人。
「明らかにタチバナは何かを隠している・・・・・・」
フユカは右手を口に添えるように置きながら考えこむ。
「まあ、今は考えても仕方ない、少し様子を見よう」
ゲートは食器を片付けようと席から立ち上がった。
「ああ、そういえば俺達のタイプ別換装パーツの件、二人はどうするんだ?」
パールが思い出したかのように自分達の機体換装の話を持ち出した。
「お前食堂でする話じゃないだろう、もしエキドナに話しを聞かれたらうるさいぞ、まあ俺は性格的に格闘タイプの換装を志願しようと思うが、お前は・・・・・・やっぱり長距離か?」
「ああ、大丈夫あの高飛車少女ならまだ訓練中だから。そう俺昔から射撃得意だからね、射撃一本かな」
パールはにんまりしながらゲートに向かってピースをした。
「高飛車少女って絶対あいつの前で言うなよ・・・・・・。となるとフユカだが、どうなんだ、お前は?」
二人の視線がフユカに向かう。
「私は・・・・・・スピードタイプの換装にしようと思っている」
フユカの脳裏にあの謎の機体グレイルガストが浮かんだ。
「むふふ、そうきたか」
フユカの考えが分かったのかパールはいっそうにやけた。ニタニタしたパールの顔に何か嫌な予感がするフユカ。
「見事にタイプが分かれたな、ならフユカ、お前が戦闘では指揮をとれ、俺はそれで問題ない」
パールの思惑が自分と同じだった事に少し嬉しさがこみ上げるゲート。
「わ、私が?」
ゲートが言った言葉に驚いた顔をするフユカ。二人は頷いた。
「私よりゲートのほうが冷静で的確な指示ができるだろう」
パールが子供のように手をハイハイと上げた。
「謎の機影の件でお前は俺達にいい指示を出していたよ、俺はゲートの意見に賛成!」
「ついでに言うと、ブースター増加型のスピードタイプはほかの機体の状況が確認しやすい、整備班にレーダー類も強化してもらえ」
「それじゃそう言うことで整備班には伝えとくわ」
「えっあ・・・・・・」
パールはフユカが何か言う前に携帯端末を取り出しすぐさま今の話をデータとして入力し整備班へ送った。
言いくるめられるようにフユカは隊長機仕様の機体タイプへの変更を余儀なくされ心の中で頭を抱えた。
「・・・・・・本当に私でいいのだろうか?」
二人は親指を上に立てニコリと笑った。
「はぁ・・・・・・」
フユカのため息は色々な情報が騒がしく飛び交う食堂でかき消された。