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閃光転移のグレイルガスト  作者: 山田二郎
1章 
12/41

12 食堂

食堂


(私の見間違いなのか・・・・・・でも明らかにカングリアとは違う機体だった。それだけでも問題じゃないのか・・・・・・なのに地球側はまったく問題視していない・・・・・・まさか地球側が極秘に開発した機体なのか。それならばあのパイロットが言っていた特機という言葉にも納得がいく・・・・・・)


「フユカ・・・・・・フユカ・・・・・・?」


パールが呼んでもフユカはスプーンでオムライスをすくったまま、反応がなかった。それをみてパールは何やら思いついたのかにやりと笑う。


 「フユカ=イーゲルン三星!」


パールは声色を野太しフユカを呼んだ。


「は、はい!」


フユカは思わず座っていた席から跳ね上がるように立ち上がり持っていたスプーンをテーブルの上に落とした。


「・・・・・・」


フユカのよく通る返事が食堂に響き、まわりの者達沈黙して、一斉にフユカの姿に視線をおくる。


「え、あ・・・・うぅぅぅぅ」


顔を真っ赤にして頭を抱え席に座るフユカ。


「ぶっぶははははは」


パールの笑い声が沈黙していた食堂に響く。そこでまわりの者達はいつものことかとそれぞれ今までしていた会話に戻っていった。


「ぐぅ・・・・・・こういうことはややめろと毎回言っているだろう」


自分の置かれた状況に気づいたフユカは、顔を手で隠しながらパールの肩を叩く。


「い、いや本当に最高、ぶっ・・・・・・ははは、フユカは訓練中ビシッとしてるのに、普通の時は抜けてるよな・・・・・・あははははは」


ツボに入ったのだろう、呼吸困難になるのではないかという勢いで、パールは笑い続けた。


「そ、そんなことはない、ゲート何とか言ってくれ」


フユカはゲートに助けを求めたが、すでにゲートは二人から二席離れたところで他人の振りを決め込んで今日のランチを口に運んでいた。


「ゲ、ゲート!」


ゲートへの助けが空振りと終わったフユカを見てパールの笑いはさらに大きくなった。


「ぶははは、ま、まずい、死ぬ、笑い死ぬ、ひひひぃひひひ、あは、ははは」

フユカは頬を膨らませながら、テーブルの上に落ちていたスプーンを手にとりオムライスを食べ始めた。


「そういや午後からは、星無し達の搭乗訓練だったな」


ゲートが二席離れたところから午後の予定を聞いた。だがフユカは自分とゲートの間に空いた席を眺めた後、ゲートの顔をみてプイとそっぽを向いた。


「あー、悪かったフユカ・・・・・・それでめぼしい新人はいたのか?」


ゲートはフユカが座る席の隣の席に移動しながらそう言った。フユカは納得していないという顔をしたがスプーンを皿の上に置いて口を開いた。


「めぼしいも何も私達だって実戦は皆無なのに使える新人を見極めるなんて事、できるわけないだろ」


「それもそうだな」


ゲートはランチを食べ終え、お茶をすすった。


「いやいや、俺は見つけたぜ、一人」


フユカとゲートはパールの顔をマジマジと見た。


「誰だ」「誰」

 

二人の声が重なりあう。


「知りたいか・・・・・・」


パールはニタニタした顔で二人を見る。


「もったいぶってないで早く言え」


ゲートがそう言うとパールは食堂の入り口を少し眺めた後、今日のランチが書かれた張り紙を見ている男を指差した。


「あいつ」


パールの指の先にはタチバナアキトが立っていた。食堂のメニューとにらめっこをしているようで眉間に皺をよせていた。


「タチバナか?」


パールは首をかしげた。


「理由は?」


フユカは、携帯端末を取り出し、タチバナアキトのデータを立ち上げた。


「ただのカン」


ガクリと肩を落とす二人。


「でもなんかあいつ変なんだよ・・・・・・たまに一人でブツブツ喋っているし、座学の教官に聞いたら、成績いいほうなのに、歴史のある部分で答えが違うんだと」


「ある部分?」


「どうも地球側政府の歴史学で論文を書いたらしいんだが、教科書とは違うことを書いているらしくて、教官が何度教えても答えが変わらないらしい」


「そりゃお前、ただの馬鹿じゃないのか?」


ゲートは両手をお手上げというように胸の前で上げた。


「いやいや、それがその論文っていうのが、よくできているんだ、辻褄なんかも教科書の内容よりしっかりしていて・・・・・・こんなこと、ただの馬鹿じゃできないだろ?」


パール以外の二人は眉間に皺を寄せて唸った。そんな二人をみて、パールはニヤリと何か企んだ顔をしてから大きく息を吸い込んだ。

 

 二人はパールとの付き合い上していた。パールがニタニタする時はいつも

何かを企み、それが突拍子もないことを。


「タチバナ君、こっちで俺達とランチでもどうだい!」


パールは大声で数メートル先にいるアキトに声をかけた。


「よせ馬鹿」


フユカはパールを止めようと口を塞ごうとしたが、パールはそれを左手で受け流す。ゲートはまた他人のフリをしだした。周りの者達は一瞬何事かとフユカ達のほうを向いたが、またかと各自談笑を再開した。


「お、俺・・・・・・?」


アキトは急に呼び止められ少し動揺していた。オムライスを食堂の機械から受け取るとアキトはフユカ達のいるテーブルへ向かった。


「タチバナ=アキト、星無しです、よろしくお願いします」


アキトは敬礼をし、失礼しますと言って席に座った。


「何々、フユカと同じでオムライスか」


パールはアキトの昼食を覗きながらニヤニヤと笑いを浮かべた。フユカとゲートはまたかとパールの顔を見てため息をついた。



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