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剣と魔法と怪物の物語  作者: 沼津幸茸
仮借なき探究
17/17

第七章(後)

 行軍を続けてミドルトン伯領に入った作戦演習兵団は、布告しておいた通り、大きく南回りでノルザベルギエ市を目指して街道上を進んだ。帝国軍、それも近衛を含んだ部隊が諸侯の領地を通過するなどそうあることではないため、街道沿いには現地住民に加えてあちらこちらの週刊新聞の記者の姿があった。おそらくこれまでと同様、号外か来週発行の新聞で作戦演習兵団の行動が大々的に扱われることになる。

 二日ほど行軍を続けたところで、縦隊は街道上のとある分岐点に差し掛かった。直進すればノルザベルギエ方面に向かって伸びるしっかりと石畳で舗装された広い街道のままで、分岐路に入ればエートン方面に向かう半ば放置された狭い荒れ道である。兵団長フェル・シュインハル近衛大佐はそこで大休止を命じた。

 大休止中、近衛大佐は行軍を遠巻きに眺めていた記者達を隊列に招き入れて特別に取材を認め、いくつかの大衆好みの質問に気前良く答えてやった後、今後の構想を語った。大部隊による悪路踏破要領を試験するため、エートン付近を通る経路でノルザベルギエに向かうことを構想している、と彼は聴衆に述べた。彼がいかにも特別措置であるかのような態度で卓上に広げた地図上では、森の前面を横切ってエートン村近郊をかすめる貧弱な街道が赤鉛筆で強調されていた。

 記者達は曖昧な反応を示した。気難しい近衛大佐が地図まで用意する手の込んだ冗談を言うとは思えなかったが、本当にそのようなことをするとも思えなかったのだ。長年放置された小さな街道というものは、全く通行に堪える代物ではないのだ。一部隊ならばまだしも、万に届きそうな軍勢全てをそこに進ませるなど、普通のことではない。

 しかし行軍再開後、半信半疑で見守る見物人達の前で、兵団は実際に進路を転じた。

 そして、内外の人々の予想に違わず、悪路に踏み込んだ部隊の行軍速度は目に見えて落ちた。とにかく足場の悪さが障碍となった。

 人も馬も放置されて久しい石畳の凹凸やひび割れに足を取られて速度を鈍らせ、疲労を倍加させた。不平不満を洩らさないのはただ聖職者と誇り高い近衛兵だけであり、州兵も冒険者も悪路と指揮官への呪詛に満ちた喘ぎを暗い活力に換えて歩を進めていた。

 しかし、人馬の苦労も車輛が見舞われた苦難に比べればかわいいものであった。宮廷魔術師や従軍記者を載せた比較的乗り心地の良い馬車も、軍需物資を満載した輜重隊の荷馬車も、異端審問官一行が乗り込んだ教会の馬車も、荒れ果てた路面に車輪を取られて大きく揺れ、積載物を痛めつけた。南部州軍の老朽化した荷車に至っては、何輛も脱輪を起こして使い物にならなくなり、甚だしい場合には転倒して物資を大地にばら撒いて駄目にしてしまった。

 万事がこのような調子であったため、作戦演習兵団は部隊の無意味な損耗を防ぐべく行軍速度を子供の遠足並みに落とさざるを得なかった。疲れた足と脆い車輪を庇うように、彼らは慎重に進んだ。

 部隊が旅人の基準で一日行程にも満たない距離の大部分を踏破し、エートン村近郊の森を二時間行程(リーグ)先に見据える地点にまで進出できたのは、分岐に入った翌日の夕方のこととなった。


 地平線の向こうで森が待つ地点で停止した南部州軍諸隊の野営地には、曖昧模糊とした不気味な緊張感が漂っていた。将校や先任下士官達の顔つきには真剣さが滲み出し、それを窺う一般の下士官兵達も困惑混じりの緊張に襲われていた。

 夕食が済んでからしばらく経った頃、兵団の各野営地を伝令騎兵が慌ただしく駆け回った。彼らは、フェル・シュインハル兵団長が体調不良――食中毒とも過労とも言われた――で倒れたため、行軍再開は明後日とすると触れて回った。

 つらい行軍にうんざりしていた兵士達はその話を先任下士官から伝えられると、指揮官の体調不良を慮る神妙な顔の下で、降って湧いた休息に小躍りせんばかりの喜びを叫んでいた。

 だが、無邪気に体を休めていられたのは初めの内であった。幸運を喜ぶ段階からその使い道を考える段階に入り、幾許かの冷静さを彼らが取り戻した時、彼らは不穏な気配を嗅ぎ取った。彼らの支配者である将校や先任下士官達の顔には不安や緊張の色があったが、それが演習予定の遅延や近衛から来た兵団長の病状を慮るものではなさそうであることに、気づかずにいられなかったのである。

 得体の知れない上官達の態度がもたらす疑念や不安は、兵士達に、行軍中にいつの間にか流れていたある噂の存在を思い出させた。軍隊のあらゆる事柄を知っている先任下士官達がそれとなく臭わせた噂、今回の演習が実は演習ではなく、行軍の本当の目的地がエートン村であるらしいという噂だ。兵士達は将校や先任下士官達の目の届かない――と彼らが勝手に思っている――場所で、この真偽を巡って囁き声を交わし合うようになった。

 クランゼ・メルマンツィム伯爵大佐率いる南部歩兵第七十八連隊の第三大隊第二中隊第一小隊第二分隊長を務めるゼーブ・パーペル伍長もまた、二個分隊が宿営するテントで部下達と噂話に花を咲かせていた。

 第二分隊二番目の権力者である兵長がゼーブに囁く。

「伍長殿、エートンで何かあるらしいってのはどうも本当みたいですが、何やらされるんですかね」

「俺に訊くんじゃねえよ。ただ、これだけの人数動かして遠足ってのはねえだろうな」

 ゼーブはうんざり顔で答えた。近衛だか何だか知らないが、今回の突発的な演習とやらは、彼のような兵士からすればまったくいい迷惑だった。地方の兵隊を巻き込んだりせず、近衛だけで勝手に済ませてほしいものだった。

 彼はこのところ、駐屯地近くの酒場娘にご執心だった。何日も通い詰め、少しずつ距離を埋めた甲斐あって、そろそろ逢引に誘えそうな雰囲気になりつつあった。その矢先にこの「演習」だ。積み上げてきたものが台無しになってしまった。そればかりか、既に半月が過ぎようとしているから、ひょっとするともう男が出来てしまったかもしれない。狙っていたのは彼だけでなく、酒場女に一途さなど期待するだけ無駄なのだ。

「失礼します。ボルク伍長殿とパーペル伍長殿はおられますか」

 小隊長付の上等兵がテントに顔を突っ込み、第一、第二分隊の長を呼んだ。

 ゼーブは片手を上げて答えた。

「おう、どっちもいるぞ。どうした」

「小隊長殿がお呼びであります。小隊長殿のテントまで出頭願います」

「わかったすぐに行く」

 上等兵がすぐ隣の他分隊のテントに駆け足で向かうのをゼーブが眺めていると、第一分隊長がその肩を叩いた。

「さっさと行こうや。遅れると軍曹殿にどやされるぜ」

「そいつは困るな」

 ゼーブは笑い、第一分隊長と一緒に小隊長と軍曹が寝起きするテントに走った。

 五人前後を余裕を持って収容可能な広さがある将校用小テントでは、ランプの灯りが投げかける光と影の中、ゼーブと同年代でまだ二十歳をようやく過ぎたばかりの無爵貴族の小隊長と、三十路の迫った恐ろしい軍曹が待っていた。二人が入って敬礼すると、答礼した小隊長が残りの分隊長が集まるまで待つよう命じた。

 分隊長が全員揃うと、小隊長は訓示を垂れる時のように一同を並ばせた。居丈高に言う。

「部隊内で広まっているおかしな噂のことは知っているな」それはただの念押しだったらしく、彼が伍長達の返事を待つことはなかった。「我々の目的は単なる演習でなく、目的地も平和街道ではない、という噂だ。概ね事実だ。中隊本部から下達された命令で、お前達に心の準備をさせておくため、先任下士官達を通じてそれとなく噂を流しておいたのだ」

 ゼーブら伍長連は互いの顔を見合わせたが、厳しい練兵係下士官の手で軍人として仕込まれた教育が、上官――特に恐ろしい小隊軍曹――の前で私語をしようとする口をぎりぎりのところで押さえつけた。

 小隊長が緊張の浮かぶ顔で説明を続ける。

「我が作戦演習兵団の目的は演習ではない。冒険者組合の通報によってその存在が発覚した、屍霊魔術を使う妖術師の捕縛だ」

 居並ぶ伍長達の間に動揺が走った。

 田舎育ちの若者の表皮に貼りついていた軍人精神の薄皮が吹き飛び、ゼーブは思わず声を上げた。

「妖術師だって? 小隊長殿、そいつはどういうことでありますか!」

「黙って聞け。伍長にまでなっといて、今更兵隊共の前で腕立て伏せをやりたいか」

 軍曹がすかさず怒鳴った。野営地全体に響き渡るかのような雷喝に一同――小隊長までもが――びくりとし、背筋を伸ばす。

 軍曹が一歩下がって小隊長に詫びる。

「失礼しました、小隊長殿。馬鹿共は黙らせましたんで、説明の続きをどうぞ」

「あ、ああ。いい、気にするな」動揺した様子で答えて咳払いをし、小隊長は再び伍長達を見た。「演習というのは妖術師を欺くための欺瞞情報であり、真の作戦目的は妖術師の捕縛である。我々の目標はエートン村南西の森に潜む妖術師とエートン村だ。妖術師に味方している疑いのあるエートン村の制圧と村民の拘束、森周辺の包囲及び内部の制圧を分担して行なう。我が中隊は森内部の制圧を担任し、我々は前衛として隊の先頭に立つ」

「小隊長殿、と言うことは、自分達は妖術師と戦うのでありますか」分隊長の一人が、質問の許しを得ることも忘れた様子で、半ば悲鳴のように声を張り上げて小隊長に問いかけた。「無理であります! 自分の隊は、足をやられて三人も落伍してるんです」

 軍曹が間髪入れずに怒号を浴びせようと息を吸い込んだ。それを咄嗟に制すことに成功した小隊長が首肯する。

「その可能性は否定できない。我々は近衛や冒険者達が形成した突破口の拡大と維持が任務だが、妖術師が突破を図ることは十分に考えられる」厳しい面持ちで陰鬱に答える。「……だが私からは、今日明日中に遺書をしたため、覚悟を決めておくように、としか言えない」独り言を呟くように続ける。「私も出動前に書いて、顧問法務士と連隊法務官に一通ずつ預けておいた。お前達も、もし必要ならば明日中に私に預けろ。連隊本部に届けておく」

 ゼーブは小隊長の言葉の後半を聞いていなかった。気づけば彼は、上官達の前であることも忘れ、その場にくずおれていた。薄汚い敷き布に手をつき、脱力した体をなんとか支える。本来許されない反応を示したのは彼だけではなかった。他の分隊長達も程度の差はあれ打ちひしがれたような態度を見せていた。

 妖術師と戦うようなことがあっては命がいくつあっても足りない。直接目にしたことはないが、魔法使いの恐ろしさは彼も知っている。十年近く前に起こった魔術学院の大逆事件では一個連隊で師団を撃破できるとさえ言われる近衛兵が何人も邪悪な魔法で命を奪われたというし、今回同行している怪物じみた風貌の宮廷魔術師は魔法一つで蛮族と亜人の軍勢を焼き尽くしたと伝えられている。彼らが味方であればこれほど頼もしいこともないが、その力が自分達に向けられるとなれば話は逆だ。想像するだけで震えが走った。知る限りの神の名が脳裡に浮かんだ。

「神様、お助けください」と彼は呟いた。

 軍曹が怒鳴る。

「お前達、何を呆けてる。小隊長殿のお話はまだ終わっちゃいないぞ。立て。立ち上がれ、愚図共! 生きて帰りたかったら立ち上がって戦わんか!」

 伍長達は再び竦み上がった。

 小隊長が落ち着きなく視線を迷わせ、また話を続ける。

「これからその際に我々が取るべき行動を説明するので、よく聞いて理解するように」

 軍曹が言葉を継ぐ。

「分隊に戻ったら、次はお前達が兵隊共に説明するんだから、小隊長殿のご説明を一言一句聞き逃すんじゃないぞ」


 決戦を明日に控えた日の朝、野営地は困惑と緊張に覆われていた。昨夜、初めて真相を知らされた南部州の兵士達の動揺が野営地の区分を越えて他へと伝わっているのである。もっとも、流石にこの期に及んで決心を鈍らせる者は、近衛兵には勿論、聖職者にも、ミドルトン兵にも、そして冒険者にもいなかった。

 朝食が済んだ後、降って湧いた休養を持て余し気味の冒険者達がどうにかして暇を潰そうと娯楽を探し求める横で、スナーは明日のための準備に取りかかっていた。傍らにはフィオナとドルグフの姿がある。アルンヘイルとラシュタルは破目を外しすぎる愚か者が出ないよう野営地内を巡回して釘を刺してから、テントで横になって体を休めている。従軍経験豊富な二人は、休める時に体を休めておくことの大切さを一際よく理解していた。

 スナーは杖の先で地面に描いた円を眺めて頷いた。

「まあいいだろう」

 周囲には遠巻きに見物する冒険者達の姿があった。そういう連中の耳にも届くようにやや声を高め、当事者であるフィオナと見学者であるドルグフに告げる。

「今からやるから、邪魔をしないようにしてくれ。失敗すると恐ろしいことになるぞ。率直に言って、何が起こるか俺にもわからない」

 脅しつけるような言葉に二人が一歩下がり、観衆が身構えるのを横目に確かめ、スナーは静かに瞑目した。求めるものを強く思い浮かべて精神を集中し、意識を物質界から離していく。周囲の音や臭いが感覚の中から薄れ、そうして生まれた感覚の空白を星幽界の潮流が満たす。

 ほどなくしてスナー・リッヒディートの精神は物質界の事象から離れ、星幽界の事象への認識を深めるに至った。世界を眺める視点の角度が、常人であれば狂気を招きかねないほど劇的な変化を遂げた。

 明滅して奔流を成す無限の色彩と光で織り成された高次星幽界はやや荒れ模様で、星幽光が空間全体を覆って見る者を眩惑する乱流となっていた。だが、熟練の魔術師を怯ませるほどのものではない。スナーのよく訓練された感覚はその中でも正確に機能した。フィオナの具足一式に星幽的に刻んでおいた印を乱れる星幽の海原の中に求めていくと、無秩序に乱れ舞う光の中で一際明確な意味を主張して輝く点が目に留まった。紛れもない、彼の星幽的署名だった。

 本来、星幽界を見るために調整された感覚では、刻まれた星幽的印を捉えることはできても、物質を捉えることはできない。物質とはつまり、凝固してその存在を物質界に移した星幽光のことであり、当然、融解状態のそれとは在り方が異なる。事実、スナーの星幽的視覚が、革紐で各部分が繋がって一纏まりとなった真銀鋼の軽装鎧の姿を捉えることはない。

 だが、それでも、具足一式の存在をスナーは感じ取ることができた。グロームヴァル一の具足師ガムドが魂を削るようにして製作した鎧には、誇り高き練達の具足師の情念が焼きついているからだ。激烈かつ高貴な意志の輝きは、星幽界の住人の目をも惹きつけるのである。

 スナーは視覚の焦点を調整し、物質界へと視点をずらした。めまぐるしい色彩の爆発が薄れ、確固たる物質が視界を満たしていく。

 投射視覚に薄暗い室内が映った。「広く深い迷宮」に確保した拠点の一角、フィオナの私室だ。部屋にはあまり物がなく、生活の場と言うよりは物置と言うべき様相を呈している。実際、活動的なフィオナが一人で部屋に籠もることは滅多にない。

 機能を十全に活用されているとは言いがたい部屋の一隅に、鈍い輝きを放つものがあった。木と布で出来た人型に装着された具足一式だ。表面には細かな傷が無数につき、それが決して室内の装飾品などではないことを雄弁に主張している。

 スナーは移送の魔術の行使を始めた。超絶の技巧で加工された真銀鋼の塊に意識を集中し、星幽的に融解させるべく働きかける。

 星幽光の中でも取り分け精妙なもののみが凝固したとされる真銀にほんの少しの鉄を加えた合金と、そこに込められた具足師の意志は、魔術師の意志に頑強な抵抗を示して物質界にその姿を留めようとした。しかし、歯を食い縛って影響力を及ぼそうと挑む練達の魔術師の意志は、やがてそれを打ち破った。それだけで一財産となる真銀鋼の塊は、中間質料である常人にも可視の精気光へと転じた直後、不可視の眩い光へと融解し、星幽界へと存在を移した。

 融解した真銀鋼の塊は、再びあるべき姿に戻るべく凝固しようとする一方で、星幽界の潮流の作用を受けて更なる融解を遂げようともしていた。真銀鋼の性質上、凝固する力が融解する力を上回っているため、放置しておけば具足一式は自然と物質界に戻る。だがその際には、融解作用の影響を受けて、多かれ少なかれ変質や変形を遂げることとなる。

 スナーの作業は難所に差し掛かっていた。移送の魔術で最も重要かつ困難な作業は、溶け消えようとする働きと冷え固まろうとする働き、この相矛盾する二つの働きを同時に抑えて状態を常に固定しておくことである。これに比べれば、対象を融解させるのも凝固させるのも、そして彼方此方に運ぶことも、戦棋の駒を動かすようなものでしかない。魔術師がこの魔術をしくじるとしたら、大抵の場合、この作業の不手際が原因である。

 溶けようとする動きを固める力で押さえ込み、固まろうとする動きを溶かす力で押さえ込む。二種類の相反する力をそれぞれ過不足のない形で加えて均衡状態を作り出し、それを保つ。この均衡が少しでも崩れればフィオナの鎧は、或いは不可逆的に変形した状態で届き、或いはスナーの手元に届く前に物質界のどこかに放り出されることとなる。

 神経を研ぎ澄まして魔術に臨むスナーは、融解と凝固の均衡状態を維持したまま、意志の引力を発生させた。徒に星幽界を掻き乱すまいとする配慮の下、星幽界の無限遠にして無限近の距離を極大とも極小ともつかない時間を経て、限りなく速く、また限りなく遅く、フィオナの具足一式が引き寄せられる。

 星幽界上におけるスナーの眼前に高貴な光の塊が現れた。すかさず凝固作用を抑制する力を取り払い、真銀鋼が元の姿を取り戻すことを後押しする。真銀鋼の鎧は精気光を経て瞬く間に固まり、物質界へと再びその存在領域を移した。

 主観的には何時間とも何日とも感じられ、客観的には数分にも満たない一連の作業は終わった。スナーは集中を解いた。意識が星幽界から物質界へと引き戻されると、周囲のざわめきや大気の揺らぎが五官を刺激してきた。

 意識と思考の鈍磨で重くなった瞼を開ければ、地面に描いた円の内側に、見事な鎧一式が鎮座していた。星幽的にざっと観察したところ、これといった変質は見て取れない。魔術は無事成功を見た。スナーは大きく息を吐き、傍らで見守るフィオナとドルグフに頷いてみせた。

「終わったぞ。もう触っていい」

「お疲れ様でした、スナー」

 労いの言葉をかけ、フィオナは自身の身を守る鎧に駆け寄った。

 世にも珍しい真銀鋼の鎧をもっとよく見ようと近づく冒険者達をスナーは制止した。

「見世物じゃないぞ、鬱陶しいからいつまでも眺めるのはやめてくれ。見物は後でもできるぞ」

 冒険者達が不平不満を鳴らして解散する傍ら、ドルグフも少し遅れて鎧に近寄っていた。鎧を抱え上げた所有者の手元を覗き込み、意外そうな顔をする。

「わざわざ魔法で運んでくるくらいだから、もっと汚れておると思ったが……随分と綺麗なものではないか」

 フィオナは苦笑した。

「スナーのおかげです」

 ドルグフが問いかけるような目配せをした。

「移送の魔術で運ぶのは、あくまでも対象物だけだ。そこに付着した汚れは、こっちが敢えて望まない限り、その場に取り残される」

「とどのつまりは横着者の磨き方か。便利ではあるが、戦士としてはなっとらん」

「そう言われては泣くか笑うかしかないな」

 静かな呼吸で心身を休ませる合間にスナーは苦笑した。

 フィオナが弁解の言葉を口にする。

「手元にある時はできる限り手入れをするようにしています。ただ、これだけの品を身につけたまま旅をするのは、何かと大変なのです、ドルグフ。決して、あなた達が示してくれた友情を無下にしているわけではありません」

「わかっておる」ドルグフは寛大な理解の色を顔に浮かべて頷いた。「人間には人間の、俺達には俺達の、友情の扱い方というものがある。お主らが俺達との友情を大事にしてくれるのであれば、一々その在り方に注文をつけたりはせん。ガムド様も腹を立てたりはなさらぬだろうさ」楽しそうに笑う。「それよりも、早く着てみせてくれ。あの日から、こいつとお主がどれほど馴染んだのかを見てみたい」

「少し待っていてください」

 フィオナも笑顔を返し、慣れた手つきで具足を身につけ始めた。実用性を重視された一式は、紐やベルトの位置や各部品との接続が工夫されており、一人で装着するのが全く苦にならないようになっている。鎧を着込み、兜を被り、脛当てやら籠手やらを装着し、左腕に丸盾を身につけていく。銀灰色の鈍い輝きを纏った伝説の騎士のような姿が現れるのに、然程時間はかからなかった。

「どうでしょう」

 フィオナが表情を窺うように問いかけた。顔が露出する型の兜からは、不安と期待の表情が覗いている。

「おお、鎧に着られておったようなあの頃とは違うな。きちんと鎧を着ておる」

 凛々しい女剣士の姿を眺め、ドワーフ戦士は感嘆の声を上げた。スナーに追い払われた後も遠巻きに見物を続けていた連中も、称讃するような囁きを交わしている。スナー自身も、戦神の愛娘が顕現したかのようなその姿に、しばし見惚れた。

「これには命を何度も救われました。この剣と同じく、もう私の半身のようなものです」

「その言葉を聞けば、グランフ様もガムド様も大層お喜びになるだろう。勿論俺からもお伝えするが、いずれ我がグロームヴァルを訪ねた折には、是非お主の口からお伝えして差し上げてほしい」

「はい、いずれ訪ねるつもりでいますから、その時に必ず」

「その折にはゲムリ家の戸も叩くのだぞ。盛大に歓迎してやるからな。魔法使い、お主も期待しておけ。そのひ弱な体が少しでも丈夫になるように、たらふく飲み食いさせてやる」

 話を振られ、スナーは顎を撫でた。

「俺は量よりも質を重んじるたちでね」

「くだらん心配をするな。ゲムリ家は友を迎えるのに物も手間も惜しまん。手に入る最も良いものを腹に入るだけ揃えて迎えてやる」心外そうな顔をして噛みつくように返した後、フィオナに水を向ける。「時に、鎧を身につけるのは久方ぶりなのだろう」

「そうです。このところ、大きな戦いもなかったものですから。それが何か」

「では体に馴染ませねばなるまい。どうだ、俺と少し手合わせをせんか」

 ドルグフの全身を覆う甲冑が好戦的に煌めいた。

「よいでしょう。お相手します。ですが、少し待ってください。まずは鎧を着た状態での動き方を思い出さないことには、手合わせどころか、素振り一つできません」

「少し慎重の度が過ぎるような気もするが……臆病とは言わんぞ。度の過ぎた自信に比べれば、慎重すぎる方が余程ましというものよ」

 もっともらしく頷くドルグフに相槌を返し、フィオナは具足姿のまま体操を始めた。最初は防具に邪魔されて動きがぎこちなかったが、才能と鍛錬の賜物か、すぐに鎧兜を意識した滑らかな動きを見せるようになった。

 真銀鉄で身を固めたドワーフ戦士も、無聊を持て余してか、軽い体操を始めていた。こちらは身に纏っているものの重さや可動限界を感じさせない、裸でいるかのように滑らかな、甲冑を着慣れた者の動きを見物人に披露していた。とはいえ、元々さしたる必要を感じていなかったらしく、甲冑姿の無骨な舞踊はすぐに幕引きとなった。

 十分に肢体を動かすと、今度は剣を抜き放ち、王国軍人の間で最も親しまれている流派の型の反復に移った。スナーの目に映るその動作には実にしっくりとくるものがあり、彼女の習得した剣術が決闘ではなく戦争のためのものであることを物語っていた。その動きは、しっかりとした甲冑で身を固めた時に、最大の効果を発揮するように考え抜かれている。

 一通りの演武を終え、フィオナが陽光を照り返す剣身を眼前に掲げて騎士の礼を取った。

 腕組みをしていたドルグフが待ちかねたように声をかける。

「もう体も温まっただろう」

「はい、お待たせしました。もう十分です」

「では剣を抜け、勇者よ。後の戦に響かん程度に技比べといこうではないか。どこなりと、先に急所に一撃を入れた側の勝ちだ。魔法使い、合図は任せたぞ」

 距離を取ったドワーフ戦士は諸刃の戦斧を両手で構えた。真銀鋼を纏った女剣士もそれに向き合い、グロームヴァル随一の剣匠グランフが鍛えた「立ち向かうもの」を抜き放ち、目の前に掲げた。

 余興の気配を嗅ぎつけ、一度は散った冒険者達がまた集まってきた。ドワーフ戦士と女剣士を囲み、好き勝手なことを言い合い始める。中には仲間に賭けを持ちかける者もいた。アルンヘイルがこの場にいたならば、きっと賭けを取り仕切っての一儲けを企んだことだろう。

 両者が視線でスナーを促す。

 勝手に立会人にされてしまった魔術師は呆れの溜息の後、手を掲げた。戦士二人の注目が肌で感じられ、その気迫に戦士ならざる魔術師は一瞬たじろいだ。軽く目を瞬かせて気を取り直し、手を勢い良く振り下ろす。

「……始め!」

 その瞬間、オーガのような雄叫びが野営地中に轟き渡り、震えた空気がスナーの肌を打ち据えた。金属の塊のようなドワーフは、鈍重そうな外見とは裏腹の瞬発力を発揮し、合図と同時に突進を始めていた。緩やかな突起を備えた肩鎧を突き出すようにして、重たい矮躯が猛牛のようにフィオナに迫る。観衆から驚きの声や案ずるような声が上がった。

 石壁を粉砕する突進で相手を弾き飛ばし、体勢を崩したところにとどめを刺す。ドワーフ戦士の常套戦術の一つである。まともにぶつかり得る者は甲冑を纏ったドワーフ戦士のみであるとまで言われており、それはおそらく事実であった。ドワーフを除く人類中最も膂力と装甲に恵まれた王国重装歩兵ですら、ドワーフの戦列歩兵が雄叫びを上げて突撃した際にはその場に踏み止まるのが精一杯で、戦列を押し返すことなど叶わなかった、と戦史には記されている。聖堂騎士団は真正面から突撃して玉砕し、わざと突破させた上で包囲を試みた帝国歩兵のみが戦場で彼らを破ったとの記述もある。

 フィオナの剣術は甲冑の守備力を頼りに戦場に踏み止まり、敵と真正面から打ち合うためのものだ。しかし彼女は、教科書通りに踏み止まる愚を犯さず、激突の寸前でさっと身を翻した。一瞬前までフィオナの体があった場所を雄叫びを上げて金属塊が駆け抜ける。

 舞うように体を回転させたフィオナが、その勢いを乗せて剣を振り下ろす。曇りのない刃が向かう先には、分厚く守られた広い背中がある。

 だが、無防備な背中が晒されていたのは一瞬のことだった。突進が空振りに終わった瞬間には足を停めており、大地を抉るように踏み込まれた足を軸にして素早く反転した。斧から左手を離すと、左腕の丸盾で剣を打ち払う。重く澄んだ打撃音が響き、煌びやかな火花が散った。剣が大きく弾かれ、フィオナの体がぐらついた。

 機敏なドワーフはそこで停まらず、右手だけで保持した斧をフィオナへと振り下ろす。岩をも砕く硬く重い一撃は、しかし、倒れまいと地面にしっかりと踏ん張ったフィオナの丸盾に受け止められ、微妙につけられた角度の上を滑って脇に流れた。常に全力を籠めるドワーフ伝統の戦法が災いし、ドルグフの体が大きく傾いた。斧がつるはしのように深々と地面に食い込み、土を撥ね上げた。

 フィオナはその隙を見逃さなかった。打ち払われた剣を引き戻す軌道をそのまま延長し、細長い片手半剣の鋭い刃でドワーフの兜の側面に斬りつけた。重厚な金属音が鳴り響き、ドワーフの小さな巨躯が揺れた。

 ドルグフは斧を地面に突き立てたまま動きを止めた。

 ほんの十秒足らずの出来事だった。スナーは炎のように激しく有り様を変える戦いを瞠目して眺めていたが、数秒遅れて我に返った。手を振り上げ、大きな声で宣言する。

「勝負あり! 勝者はフィオナだ!」

 歓声と落胆の声が一斉に上がった。取り囲む観客の間では、賭けの清算が早くも始まっていた。

 ドルグフが斧を地面から引き抜いて立ち上がり、フィオナが兜を脱いで小脇に抱えた。

 スナーは仲間達の許に向かった。フィオナとドルグフは汗を拭うこともせず歓談していた。

 斧の刃から土を払い落としながら、ドルグフが鷹揚に論評する。

「まあ、こんなものだろう。お主らの武術というのは軟弱だが、攻撃を当てたり避けたりするのだけは抜群に上手いからな。納得の決着だ。だがな、戦場ではこうはいかんぞ」

 普通であれば負け惜しみに聞こえる言葉も、このドワーフの口から出ると、ただの事実の指摘としか感じられなかった。それほどまでにドルグフの態度からは余裕と余力が窺えたし、勝者であるフィオナの呼吸は乱れていた。この時点から二人を眺める者がもしいれば、勝敗を誤解してもおかしくはない。

「わかっています」荒い息を吐きながら、フィオナが悔しげに頷いた。「私があなたに優っているのは技倆のみです。確かに先に剣を当てたのは私ですが、実際の戦いであれに意味があったとも思えません」

「おうともよ」ドワーフは髭を震わせて笑った。「少し頭がふらつきはしたが、戦であったならば、あのまま斧を持ち上げて、お返しにお主の頭を砕いてやっただろうよ」

 ドワーフの放言に、フィオナも負けじと言い返す。

「ですが、それも無意味な『もしも』です。実戦であれば、そもそも私はああいったことなどしませんから」

「そうだろうな。お主も一廉の戦士だ。愚かな攻め方などするまい。だが、それでも負けはせんさ。戦いというものは、つまるところ、どれだけ斬られ殴られようとも最後まで立っていた者の勝ちだ。そして、立ち続け、踏み止まることに関して、俺達の右に出る者はおらん」自信に満ちた笑顔で断言し、斧を肩に担ぎ直した。「さて、体を動かしてさっぱりしたことだし、俺も一眠りしてくるとしよう。お主らも精々体を休めておけよ」

 言うだけ言って、ドルグフは大股でテントに戻っていった。頭部を打撃された痛手などまるで残っていないかのようにしっかりとした足取りだった。

 フィオナは勝者に似つかわしくない表情で小さな背中を見送っている。

 スナーは興味本位で問いかけた。

「で、結局のところ、戦場であいつに勝てそうか」

 男に比べれば小柄な女剣士は鋭く険しい眼差しを返した。

「勝ちます。勝ってみせます」

 スナーの意地の悪い理解力はフィオナの認識を察した。

「なるほど。わかった。もし戦いの場であいつに出くわすようなことがあったら、魔術で援護してやろう」

 せせら笑う声はすぐに悲鳴に変わった。「余計なお世話です」との一言と共に、籠手に包まれたフィオナの指先がスナーの脇腹を襲ったからだ。指先が鍛冶屋のヤットコのように肉を抓り上げる。

「よ、よせ、俺が悪かった!」

 喚くような謝罪の言葉が響く。激痛で明滅する視界の中で、スナーは他の冒険者達が指をさして笑っているのをはっきりと見た。

 だが、今はそれどころではなかった。

「馬鹿野郎、早く離せ!」ひび割れた声音と荒い口調からは余裕が失われていた。「籠手を着けているのを忘れているだろう! 肉が、肉が千切れる……!」

「あっ」とフィオナが間の抜けた声を出し、慌てて手を離した。「だ、大丈夫ですか!」

「……大丈夫に見えるか」

 鼓動に合わせて鈍痛が生じる脇腹――痣になっていることは確かめるまでもない――を撫でつつ、スナーは半眼で睨んだ。フィオナはあっさり視線の圧力に屈した。頭を下げる。

「……私が軽率でした。申し訳ありません。このところ鎧を身につけていなかったので――それだけでなく、まるで本当の手のように馴染んでもいたので――失念していました」

 スナーは鼻を鳴らした。フィオナの肩が親の怒声を予期した子供のそれのように震えた。

 だが、素直な反省を前にしたスナーに――無論苛立ちが消えたわけではなかったが――それ以上責め立てる気はなかった。

「取り敢えず、テントに戻るぞ。馬鹿共の視線が鬱陶しい」

 フィオナの手を引いてテントまで戻る。冒険者達も、流石にスナーが場所を替えた意味を無視するほど下世話ではないようで、何やら笑い合いながら――それがスナーにとって不愉快なものであることは明らかだった――仲間ごとに解散した。舌打ちする傍ら、鬱陶しいフォールモンの姿が観衆の輪になかったことに初めて気づき、幸運に感謝した。今頃は生と死の女神の尼僧と楽しんでいるであろう彼があの場にいたならば、きっと盛大にスナー達を笑い者にしたことだろう。

「……殴りかかってこなかったことは評価する。暴力の意味を理解しているということだからな」

「はい……」

 フィオナはあからさまに気落ちした様子で頷いた。スナーは小さく溜息をついて手袋を外し、犬にするようにして、くすんだ金髪を撫でてやった。何日も洗っていない髪は脂と汗でべたついていたが、不快感はなかった。

「要するに、油樽に座って火遊びをした俺が悪いんだ。君の過失は籠手の存在を忘れていたこと、ただそれだけだ。あとは基本的に俺が悪い」手を離し、顔を顰めて素っ気無く続ける。「謝るから機嫌を直せ。申し訳なく思うのなら機嫌を直せ。とにかく機嫌を直せ。そう辛気臭い顔をされるとこっちまで気が滅入る。どうしたらその不愉快な顔をやめてくれるんだ」

 俯き気味だった顔が上を向いた。蒼瞳が石炭のような瞳をじっと見つめる。

「……何だ」

 フィオナは答えず、周りの様子を窺った。それから静かに視線をスナーに戻した。おずおずと口に出す。

「……私は今、元気がありません」

「だから、何だ」

 星幽体の状態とフィオナと育んできた関係から、スナーは彼女の望みを大まかに察していた。しかしそれは、できれば冗談で済ませてほしい要望だった。それ自体は吝かではないのだが、場所がまずいのだ。

「いえ……」

 言外の拒絶にフィオナは力なく微笑んだ。スナーは形容しがたい苛立ちを覚えて呻いた。不快な気分から逃れるために場を星幽的に隔離し、違和感解消の魔術を発動した。

「……これでいいんだろう」

 年長の夫は嘆息し、短めの金髪をわしわしと掻き混ぜてやった。年少の妻は嬉しそうに頬を染めた。

 べとついた髪を撫でてやりながら、魔術師は忸怩たる思いに囚われていた。自分の甘さがつくづく腹立たしかった。己の支配者であるべき魔術師が己以外に左右されるなど、本来あってはならないことだ。それなのに、彼はそのことに満更でもない気分になっている。それが何よりも苛立たしかった。


 決戦を明日に控えた野営地の夜は緊張感に満ちていた。今朝は恐怖と不安の気配が強かった軍の野営地からも、今は決意と戦意の匂いが漂ってきていた。戦いに怯えていた兵士達も、事ここに至り、ようやく心を決めたのであった。

 よい雰囲気だ。テントの前で見張りに立って白み始めた夜空を眺めながら、ラシュタルは微かに口元を緩めた。これは彼にとって満面の笑顔に等しい。戦いを目前に控えた戦士達の緊張が溶け込んだ空気が彼の気分を昂揚させていた。思わず深く息を吸い込む。

 不意にラシュタルは剣の柄に手をかけた。

「何の用だ」

 彼の視線の先には精霊を信仰する森エルフのヘイレルンが立っていた。今の今まで無関心と不干渉を貫いてきたエルフ祭司に疑念の視線を向ける。

「争いに来たわけではない」ヘイレルンはエルフの言語であるアルヴェ語ではなく大陸共通語で静かに答えた。荒野エルフ系のアルヴェ語に通じていないのだろう。「ちとそなたと話をしたいのだ」

「話したいことなどない」

 ラシュタルよりも百年も二百年も年長であろうエルフは子供を見るように微笑んだ。

「私にはあるのだ、荒野の勇者よ」

「ならばさっさと用件を言え、森の祭司。私は弁舌を弄する輩を好かぬ」

「そなたがなぜそなたの仲間達と行動を共にするのか、私は気になるのだ」

「その程度のことならば、もっと早くに訊ねにくればよかったのだ」

「そなたの傍らには、常にあの魔術師や混血の子がいた」

 ラシュタルは目を剥き、詰め寄った。

「友と女を侮辱することは許さぬ」

 彼はヘイレルンの短い言葉で全てを察した。祭司達は魔術師を嫌う。魔術師が祭司達の崇めるものを幻想だと笑うからだ。エルフの大半が混血児を憐れむ。エルフの多くにとって異種族は所詮異種族であり、共に歩む友とは見做せても、血を混ぜ合わせる伴侶とはなり得ないからだ。そうした伝統的価値観を持つエルフの目には、混血児は人と獣の交わりが生んだ悲しい子供の如くに映る。

 ラシュタルにもそうした気持ちがないわけではない。魔術師という連中の傲慢と偏屈には腹が立つし、エルフ以外の種族と子を成す行為に及ぶことなど想像自体を頭が拒む。だが、魔術師であろうとなかろうと、フィオナと同様、スナーと彼とは一個の魂同士が友情で結ばれていると信じている。アルンヘイルだけでなく、まだ見ぬ半エルフをも同朋であると思っている。

 その両方の想いを踏み躙られたように感じ、ラシュタルは深い憤りに駆られた。これ以上、ヘイレルンが友と恋人を貶めるならば、最低でも半殺しにしてやる決意が固まった。大魔法使いをして畏れせしめる信仰篤き祭司を向こうに回すことに、緊張はあっても恐怖はなかった。

「そのようなつもりはない。そう聞こえたのならば詫びよう。この通りだ」ヘイレルンが頭を下げる。不可思議な様相を呈した頭髪が揺れた。「ただ、私が個人的に彼らを好めないだけなのだ」

「……ならばよい」

 ラシュタルは矛を収めた。好きになるように強いるのでは、今度は彼が理不尽の側に回ってしまう。

「おお、赦してくれるか。ありがたい」

「私がなぜ奴らと行動を共にするか、だったか」

「教えてくれると嬉しい。私は彼らのような者を好まないが、彼らのような者と共に在ることを望んだ同朋を理解したいとも思っている」

 ラシュタルは思いや考えを言葉にすることの難しさに眉を顰めた。語るのは荒野エルフの流儀ではない。言葉はスナーのような学者達のものだ。頭を捻った挙句、ようやく言葉を絞り出す。

「……これといった理由はない。出会い、共に在ったから、としか答えられぬ」

 ヘイレルンは目を丸くしたが、やがておかしそうに笑い出した。ラシュタルは更に一歩詰め寄った。

「何がおかしい」

「そなたを笑ったのではない。そのようなことにも気づかなかった私を笑ったのだ。私は愚かだ」ヘイレルンは万感の籠もった声で言った。「私もそうだったのだ。私が今の友と共に在るのも、本を糺せばそういうことだった。一体、何故気づかなかったのか」晴れやかに笑う。「礼を言うぞ、荒野の勇者。そなたのおかげで真理の欠片を得られた」

「用事が済んだのならば仲間のところに戻るがよい、森の祭司」

「そうしよう。そなたとそなたの友人達の武運を祈る」

 森エルフの精霊祭司は荒野エルフの勇者の前を静かに去った。


 朝陽が地平線から顔を覗かせ始めた時刻、起床時刻にはまだ間があったが、野営地の一部は既に活動を再開していた。近衛兵達の野営地では、近衛兵を始めとして、聖堂騎士、戦神の戦士団、ミドルトン兵は既に起き出して決戦の準備に入っている。一方、生と死の女神の戦士団と南部州軍諸隊は起床時刻までしっかりと眠るつもりらしく、動きはない。

 冒険者の野営地はそのどちらでもなかった。起き出す者は起き出し、寝入る者は寝入る。それぞれの流儀で動いていた。

 スナーは前者だった。目を開け、身を起こし、伸びをする。決戦前ということなので、最後の準備の時間を得るため、日の出と共に目覚めるように仕掛けを施しておいたのだ。

 仲間達も似たようなもので、既にテントの中に彼らの姿はなかった。彼らはテントを出てすぐのところで体操をしていた。

「遅い」

 足首の腱を伸ばしながらラシュタルが言った。

「おはよう、スナー」

「おはようございます」

 アルンヘイルとフィオナが微笑んだ。

「おはよう、諸君」

 手を上げて小さく頷くスナーをフィオナが誘う。

「あなたも一緒にどうですか」

 顎に手を当てて考え、スナーは頷いた。

「混ぜてもらおう」

 フィオナの補助を受け、スナーは全身の筋肉をすっかりとほぐした。珍しく爽やかな朝だった。

 起床ラッパの金切り声が各野営地から連鎖的に聞こえ始めた頃にはもう体操は終わっていた。一行はそれぞれ戦支度を整えた後、柔らかな草の上に車座になり、森に突入した後の流れを打ち合わせていた。

 近衛の野営地から派遣された伝令騎兵が起床と朝食の準備開始を知らせて回り出した頃、スナー達の許に近づく人影があった。羽根付帽子を被った伊達男はエスノール・フォールモンだった。

 アルンヘイルが舌打ちし、フィオナが眉を顰める。ドルグフも表情を険しくし、胡散臭そうに見ている。

 ラシュタルが一瞥すらせず言い放つ。

「向こうに行け」

「まあ、そう言わないでくれよ。ちょっとリッヒディートの旦那に相談があってきたんだ」

 フォールモンは何らの抵抗感も呵責もないごく自然な――だからこそ余計に厚かましく感じられる――態度で一行の座に加わった。

「俺に?」スナーは訝しむように首を傾げた。「取り敢えず、聞くだけは聞いてやろう」

「助かる。恩に着るよ」

 フォールモンが表情を緩めたが、その笑みにはどこか詐欺師を思わせる胡散臭さがあった。

「いいから用事を言え。相談というのは何だ」

 詐欺師のような青年が静かに用件を告げる。

「俺達は森に入るだろ。で、相手は妖術師だ。まともに相手してたら命がいくつあっても足りない。だから、ちょっと、森に入る前に魔法をかけてほしいんだよ。あるだろ、力を強くする魔法とか、魔力から守ってくれる魔法とか」

「自分から魔術師に魔術をかけるよう頼むとはいい度胸をしている。その点だけは褒めてもいいかもしれないな」

 皮肉っぽく返して時間を稼ぐ傍ら、スナーはどうしたものかと思案した。確かに精神力を温存しておく必要はある。しかし、フォールモンはこれでなかなか侮れない戦士だ。変な恨みを買ったまま野に放つのは恐ろしい。かと言って殺すに足るだけの大義名分はなく、必要自体もない。最低限度のことはしてやって、少なくとも恨まれるのは避けた方が得策というものだろう。

「あんたの腕前を信じてるんだよ」フォールモンは愛想の良い表情を作った。「勿論、おかしなことをするような奴じゃないとも思ってるさ」

「懇意にしている尼僧にでも頼めばいいだろう」

「何だ、やっぱり知ってたか。でも、そんなことができるようなら、端からこっちにゃ来ない。そうだろ」

 何らかの理由で断られたのであろうことはスナーも察していた。だが、万が一の可能性に賭けてみて損はないと思ったのだ。

「どうして断られたんだ」

「俺の生き方は神様が望む生き方じゃないから、神様の御加護とやらが届きにくいんだとさ。他の教団から言われた時は納得できたが、まさか生と死の女神からも見放されてるとは思わなかったぜ」

 フォールモンの答えは納得のいくものだった。改めて観察してみるとその星幽体は、いかにも主要な神々に嫌われそうな色合いを纏っている。治療や保護のような奇蹟に与ったところで、確かにろくな効果は見込めそうもない。彼を手放しに祝福する神がいるとすれば、それは魔王の類であろうと思われた。

「そういうことなら、こっちに話を持ってくるのも納得できるな。なるべく魔術は温存したいが……」取ってつけたような見え透いたおべんちゃらには構わず、慎重な魔術師は勿体ぶった態度で答える。「戦力は多いに越したことはない。交渉に応じてもいいんじゃないかと俺は思う。お頭殿はどう思うかな」

「命が懸かっているのです。助け合いは大事だと思います。フォールモンが相手というのはあまり愉快ではありませんが」

「許可が出た。交渉しよう」

「そうこなくちゃな。恩に着るぜ、旦那、フィオナ」

 スナーは薄っぺらな礼の言葉を無視した。

「君は何を支払う」

「金で済むなら金で済ませたい。どうだい」

「生憎、金に不自由したことはない。他のものがいい」

「と言われてもな」フォールモンは首を捻った。「あんたに譲れるもので珍しいものなんか特に持ってないんだよ」

 教養人の嗜みとして芸術にも通じる魔術師は、わざとらしく視線を没落貴族の子孫の腰に下ろした。

「そういえば、いい騎兵刀を下げていると思っていたんだ。短銃もだ。装飾が実に精緻だ。銃の方は、もしかするとドワーフ細工じゃないか? 俺は剣も銃もからきしだが、美術品として壁に飾るのも面白そうだ」

 フォールモンは玩具を取り上げられまいとする子供のように短銃と騎兵刀を押さえた。

「おっと、こいつらは駄目だぜ。剣は家宝で、銃は仲間の形見なんだから」

「それなら……」スナーは考え、ふとした思いつきを口にする。「労働で支払うのはどうだ」

「何させる気だ」

 窺うフォールモンの目は疑わしげだった。

「大したことじゃない。今回の作戦が終わるまで、俺達の盾になってくれればいい」

 フォールモンは用心深い態度で一同を順繰りに眺めた。

「……あんたらと一緒に動けってことかい」

「そういうことになる。待遇は仲間じゃなくて肉の盾だが」

「まさか、目の前で殺されるのを黙って見てるような真似はしないよな」

「俺はそうしたいんだが、そういうのを嫌がる奴――情け深いことに君のような奴にも慈しみの心を持っている――がいるんでね、遺憾ながらそうはならない」

 スナーは視線の動きでフィオナを示した。潔癖な女剣士は大きく頷いた。彼女は同じ陣営に在る者を理不尽に扱うことを許さない。そこに個人的な好き嫌いはほとんど持ち込まない。

「お互いに誠意を以て臨もうじゃないか」

「あんたに誠意なんて言葉は似合わんぜ」軽薄に整った顔に納得の笑みが浮かんだ。「だけど、そうか、フィオナがしっかり締めてくれるんなら安心だな」

「契約成立ということでいいかね」

「ああ。どんな魔法をかけてくれるんだ」

「あらゆる害毒から身を保護する害毒除けの魔術をかけてやろう。ゼノー・オルギアス戦術の多くはそれと身のこなしで対処できるはずだ」

「そいつはありがたいが、もう一声、俺を強くするような奴もかけちゃくれないか。そういう魔法があるのくらい、俺だって知ってるんだぜ。ケチケチするなよ」

 スナーは鬱陶しそうに眉を顰めた。

「欲張りな奴だな。それなら、身体的と精神的とを問わず、あらゆる能力を向上させる超人化の魔術なんかどうだ。荒野エルフよりも強い肉体に、森エルフよりも鋭い精神、さながら古エルフの如くなれる」

 フォールモンは大袈裟な身振りと共に目を丸くした。

「お、凄いね、そりゃ。是非やってもらいたいもんだ」

「あまりお勧めはしないが」

「自分で言っといて何だよ、そりゃ。そういう勿体ぶった言い方はよして、はっきり言ってくれよ」

「簡潔に言えば、超人化の魔術を使うと後遺症が出る。強化された状態に感覚が馴染んでしまって、魔術が解けてもその感覚がなかなか抜けないんだ。そうだな、何年も修行を怠けていたような剣士がふと剣を取り、真面目だった頃の感覚で剣を振ろうとするようなもの、と言えば君にもわかるんじゃないか」

「なるほどな。そりゃ確かに困る。ただ、感覚が戻るのにかかる時間によっちゃ、ちょっと考えてみてもいい気がするな」

「個人差はあるが……」魔術学院での実験記録を思い出しながら答える。「概ね数日から数週間だが、本当に恐ろしいのはこの感覚の違和じゃない。超人となった時の甘美な体験の記憶そのものだ。それには精神依存性がある。きちんと自制できれば問題ないが、もし駄目だったら……借り物の力に酔っ払ってしまった奴は、大抵、それを際限なく求めた結果心身が星幽光に耐えられなくなって破滅するか、手に入らない苦しみから発狂するかのどちらかの末路を辿る。付け加えれば、附与が長時間になると、強化技法に付き物の心身機能の恒常的低下も起こる。また、術者の手を離れてある程度の時間――それでも俺なら二、三日は保証できるが――が経つと、魔術の崩壊や変質の危険が生じる。強める力が弱める力に変わったり、筋力や視力など、一部の要素だけに強化が偏ったりするようなことを想像すればいい」冷徹な眼差しを優男の顔に向ける。「それでいいなら、敢えて止めはしない。所詮、君は赤の他人だからな。後になって、なぜ言わなかったのだと言いがかりをつけられたくないから説明したまでだ」

 フォールモンは微かな唸り声を漏らし、何かを考え込み始めた。難しげな顔でしばらく過ごす内、急に何かを思いついたような顔になった。

「なあ、旦那」

「どうした」

「そういうことなら、ほんのちょびっとだけ強くするのは大丈夫なんじゃないか」

「個人差はあるがな」スナーは頷いた。「だが、安全を期すとなると、気休めにもならない微々たるものだぞ」

「一歩余計に踏み込めるようにする程度の魔法だったらどうだい」

「その程度なら、まあ、何日も附与し続けるんじゃなければ問題は起こらないだろうな」

「ならそれくらいで一つ頼むよ、旦那」

「一歩でいいのか。もう少しくらいなら積めると思うが」

 フォールモンはおどけた笑みで応じた。

「一歩余計に前に出りゃ英雄になれる。世の中ってのはそういうもんさ。あんまり大それたことをする必要はないんだ」

「君の人生哲学はわかった。北西まで移動したところで一旦もたつくことになっているから、そこで魔術をかける。その時になっても気が変わらないようならついてこい」

「わかった。よろしく頼むぜ」

 話が纏まり、フォールモンが、手入れが行き届いていることを示すように鈍く輝く革手袋を脱ぎ、右手を差し出した。

 スナーはその手を冷たく一瞥したが、自分の方からは手を差し出さなかった。

 フォールモンは握るでも開くでもなく中途半端に手を動かし、助けを求めるように他の者達を見た。フィオナ達はそれぞれの流儀でフォールモンが差し出した手を黙殺した。

 すっかりお馴染みとなった朝食開始のラッパがあちらこちらで響き始めた。

「さて、と」アルンヘイルが立ち上がった。「お仕事しますかね、と」

 軍隊の合図に不慣れと見做された冒険者達や生と死の女神教団の許には近衛から伝令騎兵が派遣されることになっていたが、アルンヘイルはそれを待つことなく、食糧配給統制のため、輜重隊の許に向かった。

 ラシュタルも無言で立ち上がり、恋人の隣に並んだ。

「行くとするか」

「はい」

 リッヒディート夫妻も仲間の背中を追いかけた。エスノール・フォールモンだけが取り残された。


 全体の食事が済み、野営地の撤収が終わると、行軍再開準備のラッパが鳴り響く。イルアニンを発ってから何度も繰り返されたことであった。慌ただしく兵員が動いて配置に就き、行軍開始のラッパの音と共に、長大な縦隊が重々しい足音を響かせて前進を開始する。

 しかし、決戦を目前としたこの行軍が単なる退屈な繰り返しに終わることはない。作戦演習兵団長フェル・シュインハル近衛大佐はごく堅実で簡単な計画を立てており、行軍縦隊の部署もそれに沿ったものに編組されていた。

 兵団は大小三つに分割されることを前提とした行軍序列を取って進発し、森の横に伸びる街道を移動する。そして、森が見えてきた段階で先遣隊が動き出し、森東面に差し掛かって何食わぬ顔で半ば通り過ぎた時点で本隊以下が展開を始める。

 先遣隊はケンマーゼン大佐の戦団から抽出して先頭に配置した軽騎兵及び猟兵各一個小隊である。彼らは行軍の先触れに偽装して尖兵として先行し、村制圧と村民逮捕を遂行する。

 続く位置に着いた部隊は本隊となり、主力として動く。本隊が所定の地点に到達した段階で、各連隊ごとに順次展開して森の包囲を行ない、宮廷魔術師団と生と死の女神の戦士団は結界を構築する。近衛戦隊と各協力者達はそれらの完成未完成に関わらず突入を始めて突破口を形成する。包囲完成後はそのまま殲滅戦に移行して輪を狭めていき、日没前の決着を目指す。

 最後の部隊の中心となるのは輜重隊とそれを警備する歩兵一個大隊である。兵団司令部は、ケンマーゼン戦団から兵団直轄として抽出してあった護送大隊に猟兵や軽騎兵を配属して戦隊を編組する。この後方戦隊は輜重隊を護衛しつつ尖兵隊を追及してエートン村を完全制圧した後、兵站拠点を構築して本隊との兵站線の確立維持に努めると共に、全体の予備兵力として待機する。なお、企図の秘匿は最早必要なくなったため、作戦終了後の処理作業を見据え、ミドルトン軍はノルザベルギエ市に集積しておいた物資のエートン村への輸送を開始する。

 フェル・シュインハルからすればいろいろと不満の残る作戦ではある。無駄が多く、危険も大きい。部下は頼りなく、協力者は信用ならない。政治的事情が軍事的合理性を甚だしく損なっている。しかし、様々な制約に縛られる中で手を尽くしたと、できる限りのことをしたと、そう皇帝に対して胸を張って報告できる作戦でもあった。また、希望が全く存在しないわけでもない。統制上の問題こそあれ、協力者個々の戦闘力は高水準にある。近衛戦隊の実力が十分であることは勿論のこと、南部州軍部隊も決して弱兵ではない。十日間近く行動を共にしたことでそれがわかった。将兵は戦闘に堪え得る最低限の能力を持ち、部隊長も決して無能ではない。年老いたケンマーゼンは積極性こそないが堅実であり、若いクランゼ・メルマンツィムも逆境に弱いだけで互角以上の情勢であれば大過なく軍勢を指揮できる。とどのつまり、全ては上官であるフェル・シュインハルが彼らを使いこなせるかどうかに懸かっているのである。

 馬上で遠く前方を見据えながらフェル・シュインハル近衛大佐は、作戦演習兵団が敗軍とならず、己が敗将とならず、一人でも多くの者が勝利の栄光を分かち合い、それぞれの日常に帰ることができるよう、勇気を持って戦う者を愛する戦神テュウォルスに加護を願った。

次回、多少間が開くかもしれません。

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