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「お妃様!凛様!」

「はーい」


なーにー?

宰相補佐が呼ぶのに返事する。でも顔は下。だって煌に膝枕してるから。んでもって耳かきしてるから。目離すなんて危ない危ない。


「はい、逆向いて」

「ん」


ごろっと煌が畳の上で向きを変える。

耳にかかった黒髪をよけて、さてもう片方を掃除しよう。


「お、お妃様!ああ!陛下まで!」

「だからなーにーってば」

「ねむい」

「こら、動かないで」




「果たし状が送られてきました!」




ぴたっと動きを止める。

煌も私の腰を抱いた手から一瞬力が抜けた


「え?私宛て?」

「陛下宛です!」

「え?じゃあ何で私呼んだの」

「お妃様をめぐっての決闘申込みです!うわっちゃ!!」


ぼっと果たし状が燃えた。

持ってた宰相補佐が可哀想でしょうが。ぺしっと煌の額を叩く。


「誰から何て書いてあったの?」


視線は宰相補佐の足元。赤い目の白い髪を肩につかない程度に伸ばして城に大きな赤いリボンをつけた幼女。

幼女、氷魚(ひお)は無表情で果たし状、と口を開いた。


「拝啓、魔王煌様。先日は大変結構なご挨拶をいただき、誠にありがとうございます。つきましてはお礼参りとさせていただきたく、お手紙差し上げました」

「誰か分かった。分かったけど何だそれ」

「とにかくですね。お礼参りと、陛下に勝てばお妃様を返せというのがその果たし状の内容です」

「……ええ?何考えてんのさ、竜也」


竜也だ。確実に竜也だ。

煌が私の膝の上で寝返りを打ってうつぶせになる。そして膝に顔をうずめた状態で、いなくなって初めて知った大切な人、だろう、とか言い出した。


「へ?」

「ずっと一緒にいたんだろう?」

「うん」

「だからそれが当然で気づかなかったんだろう」

「何に?」

「お前が好きだって感情に」

「はい!?」


何だそれ!

本気で驚いた。

宰相補佐が、ああ、と頷いた。


「人のものになって初めて知るんですよね。そいつは俺のだったのに!とか言い出す奴っていますよ」

うんうん。

…誰それ。私知ってる人?

知らない人です。

ああ、そうなんだ。

「じゃあ、何。竜也は私のこと好きなの?恋愛感情で?」

「だろうな、とは思っていた」

「そなの?」

「お前と抱き合ったり愛してるとか言い合ったりダーリンハニーとか言い合ったりするから、思いっきり敵意ぶつけてきたんだぞ?勇者」

「何怒ってんのわけ分かんないとか思ってた」

びっくりした。

びっくりした。

すっごいびっくりした。


「ダーリンハニーとか言ったんですか」

どこまでバカップル。

「ダーリンハニー」

つんつん、と宰相補佐の服の裾を引いて、無表情の氷魚が笑った。




「ダーリン」




宰相補佐が息を止めた。

そしてがっばあっと氷魚を抱きしめると、




「愛してるハニー!!」




叫んだ。


うん。ここ実は年の差ないから。

氷魚は肉体年齢自在に操れて、その中で幼い姿が一番好きだってだけだから。宰相補佐はロリコンじゃない。どんな君でも愛せる!!そんな人だから。一応婚約者ね。


「でも決闘ねえ」

「魔王退治の件は納得したんだろう」

「アリアさん、大変だったろうなあ」

「今度何か贈るか」

「うん」


何が好きかなあ。

好きなもの聞いてから贈った方がいいかなあ。


アリアさんといえば、あの後ちょっと世間話ついでに聞いてみたら、私に優しかったのは亡くした妹が生きてたらこれくらいかなあって思ったらああなったんだって言ってた。態度変えたつもりもないって。

うん。私の被害妄想だった。


「あ、決闘って日付指定あるの?」


抱き合って好きだの愛してるだのダーリンハニー言い合ってるバカップルに声をかけると、まずはお返事待ってますってありましたと返る。

変に律儀なんだよね、竜也。


「どうする?煌」

「受けてもいいんだが」

「なに?」

「万が一負けたら攫って逃げるぞ」


膝から顔を上げて言った煌の顔は真剣だ。

外から見たらどんな格好でそんな発言してんのかっこ悪いよ、かもしれないけど、私には関係ない。かっこいい。素敵。




「愛してる!ダーリン!」

「俺も愛してる、ハニー」




がばっと抱き合う。

まあ、煌は体制が辛かったみたいで、すぐにごろっと私を畳に転がした。そこで抱き合ってダーリンだのハニーだの好きだ愛してると繰り返した。


入り口では抱き合って同じようなことを口にしあってるバカップルもいて。

たまたま通りがかった人達が、うざ!何このバカップル達!甘ったるくてうざ!二組もいらねえ!うざ!と叫ぶまで続いた。

……てか、何回うざいって言うんだ。そんなにうざかったのか。

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